異世界対応型婚活システムーあえ~るー 川西美和子の場合

七戸 光

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川西美和子の場合

川西美和子、気になることを相談します

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 次に2人と会うのは、来週の予定だ。
 仕事の関係で土曜日にアキラ、日曜日にケイと会うことになっている。
 今回はアキラとは食べ歩きと買い物デート、ケイとは動物園で最近生まれたパンダの赤ちゃんを見に行くデートだ。
 どちらも楽しみだ。

 今日の私はやたちゃん先輩に近況を報告するため、渡瀬神社へ足を運んでいた。
 和室を借りて縁側に座り、私はお茶、やたちゃん先輩は皿に水を入れて準備万端だ。
 やたちゃん先輩はとても聞き上手で、いくらでも話してしまう。

「今度のデートは何を着ていこうとか考えちゃうんですよね。ワクワクするというか。彼氏と別れてから、紬さんたちを信じて、自分が幸せになれるようにと行動してきたつもりですけど、仕事のこともあって、気分の落ち込みも激しかったんです。けど今は、2人に会うことが刺激になってて、モチベーションが上がってるので、毎日頑張れてます」

「そっかそっか! 良かったなぁ。お嬢ちゃんが楽しそうでおじさんは嬉しいぞ~。その2人はどんな人間なんだ?」

「そうですねぇ、アキラの方は、活発な少年って感じの印象ですね。メッセージ中と性格の裏表がなくて、話しやすくて、明るくて、太陽みたいな人ですね。ケイは正反対の月みたいな人です。物静かであまり表情が変わりません。でも話してみると優しくて。だけど、2人とも気になることがあるんです……」

 実際に会うことで、メッセージだけのやり取りとは違う一面が見えたのが、今回の大きな収穫だろう。
 特にケイは今回会って、笑った顔が可愛い良い人だと分かったので、好感度が爆上がりである。
 問題はここからだ。

「ほー? 気になる事ねぇ。どうしたんだ?」

「アキラは元カノの存在というか、彼女が行方不明っていうのが気になってます。別れ話をしたわけでもなく、彼女が金属アーティストになるために旅に出て行方不明って……。帰ってきたら、どうなるのかなって思って。それ以外はあんまり問題ないと思いました。印象も雰囲気も好ましいと思います」

「あー前の恋人か。それは気になるよな。というか、金属アーティストってなんだ?」

「それは、私も分かりません!」

 何となく芸術家的な職業なんだと思っているが、本当のところはわからない。
 異世界には良く分からないことがいっぱいあるということだろう。
 うんうん頷きながら、やたちゃん先輩がお皿の水を啄んで、喉を潤してから口を開いた。

「で、もう1人はどうした?」

「ケイについては、最初から不思議に思っていることなんですけど、メッセージに時々変なところがあるんですよね。まず最初のメッセージの印象がおかしいことです。実際に会って、やっぱりあのメッセージを送ってくる人には見えなかったんですよね」

「へー。どんなメッセージなんだ?」

 私は鞄から『キューピッドくん3号』を取り出し、『あえ~る』を開いた。
 ケイと初めてやり取りしたメッセージを表示する。

「これです。私に写真と釣書だけで一目惚れしましたって……。本当にこんな口調でそんなこと言う人じゃないんですよ! 月みたいな柔らかい感じの人なんです」

「確かにこれは……言いそうにないことナンバーワンに輝くレベルだな。本人に聞いてみたらいいんじゃないのか?」

「それは……そうなんですけどね? なんか聞きにくいじゃないですか? 大体なんて聞きます? 【最初に送ってきたメッセージ、似合わないね! ケイが書いたの?】って聞くんですか? そんなやつ、サイコパスですよね! 本人が真剣な想いで送ってきてたら、そんなこと言われたらショック受けますよ」

「で、聞けないのか」

「そういうことです。ケイは繊細そうだし、聞けないですよ」

「でも、そんな極端な聞き方しないだろ。まあ聞きにくいのは分かったけどな?」

「ケイは他にも疑問点があるんです。ケイって自分のこと、隠している気がするんですよね。ぼかされてるというか、掴めないんですよ。仕事のことも電気系の自営業としか知らないし、日頃あった出来事を話してはくれますけど……」

 言葉を切ってちゃぶ台に視線を落とす。
 お茶にはへの字に曲がった眉、不安そうな顔の私が映っていた。

「この前も初めて会ったときに付き人連れてて、付き人がいることも知らなかったし、狙われやすい人ってことも知らなかったんです。付き人さんは私とケイを2人にしたくなかったみたいだし、疑われてるんですかね? 渉さんが研究してるから狙われてるとかって言ってたけど、自営業で研究してるってどんな金持ちなんでしょうか? ということで、私の中では、自分で研究して国で有名になるぐらいの金持ちって認識することにしました」

 一緒に食事をした時にも思ったが、ケイは優しくて暖かい。
 彼のふわりとした笑みや私の国を受け入れようとしてくれる優しさは、自惚れかもしれないが大切にされているように感じる。
 だが今は気になることが多すぎる。

「――直接聞けばいいんじゃな」

「だからぁ、聞けたらそうしてます!」

「……じゃあ仕方ないな」

 やたちゃん先輩は溜息を吐いてから、ツンととんがった嘴で、毛繕いというか羽根繕いを始めた。
 羽根をバサバサするから、大事な羽根が抜けてますよ?

「まぁ、なんだ。おじさんに言わせりゃ、疑問が見つかるってことは、お嬢ちゃんがそれだけそいつに関心があるってこった。知りたいから、疑問に思うんだぞ。まだ時間はあるんだ。納得できる結果になるように、会って、話して、自分の目でちゃんと相手を見極めればいい。それで、もし駄目だったら、おじさんが慰めてやるよ」

「やたちゃん先輩イケメン……惚れそう…………」

「お! そうか? お嬢ちゃんなら、いつでも嫁にもらってやるぞ。可愛い七つの子の母になってやってくれ。山にいるんだ」

「あ、それはいやです」

「何だと!?」

 一昔前の金ダライが落ちてくる芸人さんみたいなショック顔のやたちゃん先輩が面白い。
 そこからは仕事の話やテレビの話をして、来る時よりもすっきりした気持ちで私は神社を後にした。
 2人ともいい人だと思うのだが気になるところも多い。
 そんなところも含めて私は、真摯に2人を知っていきたいと決意した。
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