10 / 37
川西美和子の場合
川西美和子、アキラと商店街へ行きます
しおりを挟む
ショッピングモールに戻るのは気が進まなくて、結局少し歩いて商店街を見て回る事にした。
この商店街は、美味しい食べ物屋さんが多いことで有名だったので、お昼ご飯を兼ねてぶらつく。
昔ながらのアーケードを潜ると左右に所狭しと商店が並んでいるが、その様子にアキラは面白そうだ。
「へー! いろんな店がいっぱいあるんだな。それにしても結構しっかりした建物が多いな。うちの国は簡単な屋台の商店街なんか金属パイプつなげて、布かぶせただけだぞ」
「そうなんだね。お祭りの屋台とかはそんな感じだけど、常に出店してるお店は建物が多いかな」
アキラの国は雨が少ないからそういったパイプ作りのお店は多いようだ、特殊な加工がしてあって、簡素なつくりでも頑丈らしい。
左右からおいしそうな匂いがして、食欲を刺激してくる。
いろんな誘惑を見ながら、食べたいものを吟味していると、アキラがくんくん臭いをかぎはじめた。
「ん?」
「どうしたの?」
「なんか、あっちからいいにおいがする」
アキラが指さす方向には一軒のお好み焼き屋さんがある。
「入ってみようか、お昼まだだし! お好み焼き、美味しいよ」
私たちは、お好み焼き屋さんの暖簾をくぐる。
「いらっしゃい! 空いてる席どうぞ!」
店は昼時を過ぎたにもかかわらず、八割ほどの席が埋まっていた。
適当に空いているテーブル席へ移動する。
どうやらこの店はテーブルに埋め込まれた鉄板で焼いてくれるスタイルようだ。
目の前で焼いてくれるところを見るのは、アキラも楽しいんじゃないだろうか。
「ん? このテーブル変じゃないか?」
メニューを見ているとアキラが鉄板に気付いたようだ。
「ああ、このテーブルはこの金属の部分でお好み焼きを焼くことができるんだよ。お皿に移さず、鉄板の上で焼いたまま食べるの」
「へぇ! 目の前で焼くってことか!? すげぇ!」
アキラの目がキラキラしている。
思わず私の顔もほころぶ。
メニューは豚玉と海鮮ミックスを頼む。
アキラはテーブルの上のソースや鰹節が気になるようで、「あれは何?」、「これは何?」と質問攻めだった。
暫くして店員さんが1人前ずつの具材をボウルに入れて持ってきた。
店員さんが鉄板の上で空気を入れるように生地をかき混ぜ、サッと鉄板に流す。
適度に焼けた頃に、華麗にひっくり返した。
お好み焼きが焼ける一部始終を見たアキラは、大興奮で、店員さんが戻った後もずっと「すごい!!」と言っていた。
ほほえましく思いつつもアキラに声をかける。
「さ、早く食べないと冷めちゃうよ」
このお店は、お箸とミニコテが選べるようなので、箸の使えないアキラにも食べられるように、ミニコテで一緒に頂く。
ソースを塗って豚玉と海鮮ミックスをコテでざっくり切り分けた。
「アキラ、こっちが豚っていう動物の肉が入ってるもので、あっちがこの間のお寿司に乗ってたイカとか海老とかが入ってるやつだよ。半分こしようか」
アキラはまず海鮮ミックスから食べるようだ。
コテの使い方とミニコテで食べることを教える。
アキラは緊張の面持ちで、熱々のお好み焼きを小さくして口に運んだ。
「なんだこれ! うまっ!!」
アキラはお好み焼きの美味しさに驚いた様子で、私の顔とお好み焼きを交互に見ながら美味しさについて説明してくれる。
「この前の『スシ』も美味しかったけど、これもすっごく美味い! ソースが好きだ!」
口に合ってよかった。
そして、物凄く微笑ましい。
私達は冷めないうちにと、暫くお好み焼きに舌鼓を打った。
途中で「折角箸を買ったから練習したい」とアキラが言い出したので、途中で割りばしを使ったお箸の持ち方講座も実施した。
「ここ持って、こことこっちにこの指置いて、こう!」
「――ここ、で、こう! あってるか?」
若干ぎこちないが、アキラは何とかお箸が持てた。
「うん、上手! で、こっちの指を動かして、箸先をぱくぱく出来たら、ちゃんと挟めるよ」
「おー! すげ、挟めた!」
「アキラ、おめでとう!!」
そうして店を出るころには、アキラは箸の使い方をマスターしていた。
この後は、おやつにふまんじゅうやお団子を食べたり、雑貨屋や骨とう品屋、ペットショップを見て回った。
元カレの話やフードコードを離れてからの話は一切せず、終始和やかな雰囲気で解散した。
この商店街は、美味しい食べ物屋さんが多いことで有名だったので、お昼ご飯を兼ねてぶらつく。
昔ながらのアーケードを潜ると左右に所狭しと商店が並んでいるが、その様子にアキラは面白そうだ。
「へー! いろんな店がいっぱいあるんだな。それにしても結構しっかりした建物が多いな。うちの国は簡単な屋台の商店街なんか金属パイプつなげて、布かぶせただけだぞ」
「そうなんだね。お祭りの屋台とかはそんな感じだけど、常に出店してるお店は建物が多いかな」
アキラの国は雨が少ないからそういったパイプ作りのお店は多いようだ、特殊な加工がしてあって、簡素なつくりでも頑丈らしい。
左右からおいしそうな匂いがして、食欲を刺激してくる。
いろんな誘惑を見ながら、食べたいものを吟味していると、アキラがくんくん臭いをかぎはじめた。
「ん?」
「どうしたの?」
「なんか、あっちからいいにおいがする」
アキラが指さす方向には一軒のお好み焼き屋さんがある。
「入ってみようか、お昼まだだし! お好み焼き、美味しいよ」
私たちは、お好み焼き屋さんの暖簾をくぐる。
「いらっしゃい! 空いてる席どうぞ!」
店は昼時を過ぎたにもかかわらず、八割ほどの席が埋まっていた。
適当に空いているテーブル席へ移動する。
どうやらこの店はテーブルに埋め込まれた鉄板で焼いてくれるスタイルようだ。
目の前で焼いてくれるところを見るのは、アキラも楽しいんじゃないだろうか。
「ん? このテーブル変じゃないか?」
メニューを見ているとアキラが鉄板に気付いたようだ。
「ああ、このテーブルはこの金属の部分でお好み焼きを焼くことができるんだよ。お皿に移さず、鉄板の上で焼いたまま食べるの」
「へぇ! 目の前で焼くってことか!? すげぇ!」
アキラの目がキラキラしている。
思わず私の顔もほころぶ。
メニューは豚玉と海鮮ミックスを頼む。
アキラはテーブルの上のソースや鰹節が気になるようで、「あれは何?」、「これは何?」と質問攻めだった。
暫くして店員さんが1人前ずつの具材をボウルに入れて持ってきた。
店員さんが鉄板の上で空気を入れるように生地をかき混ぜ、サッと鉄板に流す。
適度に焼けた頃に、華麗にひっくり返した。
お好み焼きが焼ける一部始終を見たアキラは、大興奮で、店員さんが戻った後もずっと「すごい!!」と言っていた。
ほほえましく思いつつもアキラに声をかける。
「さ、早く食べないと冷めちゃうよ」
このお店は、お箸とミニコテが選べるようなので、箸の使えないアキラにも食べられるように、ミニコテで一緒に頂く。
ソースを塗って豚玉と海鮮ミックスをコテでざっくり切り分けた。
「アキラ、こっちが豚っていう動物の肉が入ってるもので、あっちがこの間のお寿司に乗ってたイカとか海老とかが入ってるやつだよ。半分こしようか」
アキラはまず海鮮ミックスから食べるようだ。
コテの使い方とミニコテで食べることを教える。
アキラは緊張の面持ちで、熱々のお好み焼きを小さくして口に運んだ。
「なんだこれ! うまっ!!」
アキラはお好み焼きの美味しさに驚いた様子で、私の顔とお好み焼きを交互に見ながら美味しさについて説明してくれる。
「この前の『スシ』も美味しかったけど、これもすっごく美味い! ソースが好きだ!」
口に合ってよかった。
そして、物凄く微笑ましい。
私達は冷めないうちにと、暫くお好み焼きに舌鼓を打った。
途中で「折角箸を買ったから練習したい」とアキラが言い出したので、途中で割りばしを使ったお箸の持ち方講座も実施した。
「ここ持って、こことこっちにこの指置いて、こう!」
「――ここ、で、こう! あってるか?」
若干ぎこちないが、アキラは何とかお箸が持てた。
「うん、上手! で、こっちの指を動かして、箸先をぱくぱく出来たら、ちゃんと挟めるよ」
「おー! すげ、挟めた!」
「アキラ、おめでとう!!」
そうして店を出るころには、アキラは箸の使い方をマスターしていた。
この後は、おやつにふまんじゅうやお団子を食べたり、雑貨屋や骨とう品屋、ペットショップを見て回った。
元カレの話やフードコードを離れてからの話は一切せず、終始和やかな雰囲気で解散した。
0
あなたにおすすめの小説
猫なので、もう働きません。
具なっしー
恋愛
不老不死が実現した日本。600歳まで社畜として働き続けた私、佐々木ひまり。
やっと安楽死できると思ったら――普通に苦しいし、目が覚めたら猫になっていた!?
しかもここは女性が極端に少ない世界。
イケオジ貴族に拾われ、猫幼女として溺愛される日々が始まる。
「もう頑張らない」って決めたのに、また頑張っちゃう私……。
これは、社畜上がりの猫幼女が“だらだらしながら溺愛される”物語。
※表紙はAI画像です
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
婚約破棄したら食べられました(物理)
かぜかおる
恋愛
人族のリサは竜種のアレンに出会った時からいい匂いがするから食べたいと言われ続けている。
婚約者もいるから無理と言い続けるも、アレンもしつこく食べたいと言ってくる。
そんな日々が日常と化していたある日
リサは婚約者から婚約破棄を突きつけられる
グロは無し
黒騎士団の娼婦
イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる