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第二章 記 憶 《Memory-1》
21 パラレル・ワールド?
しおりを挟む「まさか……」
最悪の結果が脳裏をよぎり、その先を言葉にすることができない。
「おじさんとおばさんの安否は、わからないんだ」
「……え?」
安否がわからない?
「俺がお前に呼ばれて事故現場に行ったとき、居たのは優花、お前だけだった」
「え?」
私が、晃ちゃんを、呼んだ?
確かに、晃ちゃんのことをチラッと思い出したような気はするけど、呼んだっけ、私?
それに、SOSに飛んでくるスーパーマンじゃあるまいし、呼ばれたからって助けに来られるものなの?
そもそも『呼ばれてくる』って、意味が分からない。
「おじさんとおばさん、二人の行方が分からない、ってこの場合、たぶん行方不明なのはお前の方だけど」
「は?」
行方不明が、私?
私はここにおりますが?
もしかして自分は、頭を打ってどこか回線がうまく繋がっていないのかもしれないと優花は思った。だって、晃一郎の言ってることが、全然、全くもって理解不能だ。
酸欠の金魚宜しく、点目で口をぽかんとあけていたら、さらに理解不能な言葉が追い打ちをかけた。
「落ち着いて聞いてくれ」
「う、うん……?」
「たぶん、お前はパラレル・スリップをしたんだと思う……」
パラレル、スリップ?
何か、滑ったんだろうか?
聞きなれない単語に眉を寄せている優花に、やはり同じように眉を寄せながら晃一郎は言葉を続ける。
「ここではたまにそういうことがあって、迷い込んできた人間を『イレギュラー』と呼んでいる」
イレギュラー?
そういえば、意識がもうろうとしていた時に、晃一郎がそんな言葉を言ってた気がする。
確か、『イレギュラーでもなんでも、間違いなく優花なんです!』とかなんとか。
――ええっと、英語だよね。どんな意味だっけ?
レギュラーじゃない、って感じかな?
レギュラーって、正式とか正規とか言う意味だったから、イレギュラーは……。
などと呑気につらつらと考えていたら、晃一郎はこれでもかと、最終爆弾を投下した。
「ここは、お前が居た世界と似ているが、全く別の世界。つまり、パラレル・ワールドなんだ」
――は……? はいっっ!?
ちょっ、ちょっ、ちょいまちっ!
今なんて言った、このお人。
お前が居た世界に似ているが、全く別の世界?
パラレル・ワールド?
何、その超・SFかつファンタジーな展開はっ!?
いやいやいや、待てよ。
常識的に考えて、そんなことが起こるわけはない。
ってことは、これは冗談だ。
そう、質の悪い、冗談っ!
「いや、残念だけど冗談じゃないんだ……」
「え?」
――今、私、声に出して言ってないよ……ね?
疑惑の眼を向けていたら、晃一郎が少し『しまった』的な表情を浮かべて咳払いをした。
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