黄昏の恋人~この手のぬくもりを忘れない~【完結】

水樹ゆう

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第八章 覚 醒 《Awakening》

124 恋しいモフモフ

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「みんな元気にしてる?」

「ああ、みんな相変わらずだ。ポチのやつはお前が帰った後しばらくは雲隠れしていたが、今は元気に、リュウの所でペット生活しているよ」

 リュウの家は、西洋の古城を移築した文字通りの『お城』で、周囲はちょっとした森林になっている。ポチにとっては、最高の住環境だろう。

 リュウの妹アリスとポチは、そえらく波長が合うのだと、晃一郎は優しい眼差しで語った。

 三年前、この世界に戻るときに、『別れたくない』と涙を流しながらも、その力を貸してくれた心優しい守護獣、ケルベロス。

 無性に、あのもふもふした感触が恋しくなってしまった。

「ああ、ポチに会いたいなぁ」

 思わず、ぼやくように声を上げると、晃一郎がニヤリと口の端を上げた。

「ああ、あいつも会いたがってたよ。ってか、実は、すぐそこまで来てたんだ」

「え?」

――うそっ!?

「ほら、三時間目の準備に教室に戻ったろう?」
「あ! もしかして、あの時見ていた窓の外に――」
「いたいた。お前の気配を感じて、喜び勇んで飛び出してきそうだったから、丁重に追い返した」
「あ、あははは……」

――そ、それは、さすがにマズイです。

 あの巨大サイズの羽根付きワンコが、空中を飛び回った日には、自衛隊が出動しちゃいます。

「なに? 私の顔に、何かついてるの?」

 力で制御しているから、考えを読まれている訳はないが、優花の顔を見つめてニャッと笑うその表情が、まるでなんでもお見通しだと言ってるみたいで、なんとなく面白くない。

「ああ、落っこちそうな目ん玉二つに、美味しそうな肉マンほっぺがついてるな」
「にくっ!?」

――肉マン言うのか、この状況でっ!?

 少し膨れていると、晃一郎はクスクスと楽しげに笑いながら左手を伸ばし、優花の頭をグリグリとかき回した。

「ちょ、ちょっとやめてよっ」
「相変わらず、ポチ並にかき回しやすい頭だなー」

 ポチは優しくて大好きだったけど、それとこれとは、話が別だ。

「どうせ、ポチ並ですよっ」

 扱いが犬並なことに、更に頬を膨らます。

 やっぱり、あの告白は聞き間違いだ。そうに違いない。俺が本気で惚れた女、じゃなくて、俺が本気で惚れた女とそっくりな女、っていう線も捨てきれない。

 ああ、なんだか、かんだか……。

 なんて、緊張感の欠片もなく、落ち込んではいられない。

 一つ大きく深呼吸をして顔を引き締め、休む時間をくれた晃一郎を真っ直ぐ見上げ頷く。

「もう大丈夫」
「そんじゃ、そろそろ空間閉鎖を解くからな。おそらく、すぐに敵さんがやってくるが、行けるか?」

――そう、敵の狙いは私。

 力が覚醒した今の私の存在そのものが、敵であるグリードを引き寄せる。

 うん、と大きく頷くいた次の瞬間、パチン、と空気がはぜるような音が響き渡り、優花たちがいた広場を守るように張り巡らされていた障壁が消え、空間閉鎖が解けかれた。



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