35 / 52
第十一話 【凶報】どうか神様。
35
しおりを挟むあれは、そう。
高校の入学式だった。
抜けるような、青空の下。
ハラハラと、薄桃色の花弁が雪のように降りしきる満開の桜並木の中で、私は、ポツリと佇む一人の女生徒を見かけた。
一目見たら、たぶん絶対忘れないだろう、これ以上ないってくらいの印象深い、そんな『美少女』。
まだ、幼さを残している小柄で華奢な体。
セーラー服から見え隠れする素肌は、どこもかしこも抜けるように白くて滑らかで。
春の優しい風に吹かれてサラサラと舞っている、色素の薄いストレートの 長い髪も。
長いマツゲに縁取られた、ライト・ブラウンの大きな瞳も。
丸みを帯びた頬のラインも。
可憐な、ピンクの唇も、何もかも。
本当に綺麗で、まるで『天使みたい』だって、そう思った――。
「ねえ、どうしたの?」
少しためらった後、私は、その子に声をかけてみた。なんだか、困っているように見えたから。
「え? あ、あの……」
そう言って、彼女は恥ずかしそうに、白い頬をポッと上気させた。
うわっ。
色が白いと、ほっぺってピンク色に染まるんだ。
可愛いーっ!
それに、澄んだハイトーンの声も、まるでアニメの主人公みたいに可愛いすぎっ!
本当に、こんな子って居るんだなぁ。
高校入学時には、身長168センチ。
ひょろひょろと、背ばかり伸びるのがコンプレックスだった私は、小柄な子を見ると何だか嫌~な気分になるんだけど、ここまで可愛らしいと、いっそコンプレックスなんて感じない。
しっかし、ホント、お人形さんみたい。
思わず、彼女の美少女具合に感動していると、彼女がすっと右手を上げた。
「あの人の名前、分かりますか?」
「え? どの人?」
彼女の白い指先が指し示す方に視線を巡らせた私は、そこに良く知っている二人連れを見つけて、ちょっと驚いた。
そこに居たのは、三ヶ月年下の従弟の浩二とその親友、伊藤貴史くんだった。
そもそも、幼稚園からの腐れ縁だから浩二が従弟であることを差し引いても、二人のことは良く知っているんだけど。
いわゆる、『幼なじみ』ってやつ。ちなみに二人とも、三度の飯よりもサッカーが大好きな『サッカー・バカ』だ。
「えっと、どっちの人? にやけた顔をしている垂れ目のツンツン頭は、佐々木浩二って私の従弟なの。で、色黒の大きい方が、伊藤貴史くんだけど……」
「伊藤くん……、伊藤貴史くん」
彼女は、その名前を確かめるように呟いた。
ピンクの唇が、伊藤くんの名を呼ぶ。
私は、なぜかドキンと鼓動が大きく跳ねるのを感じた。
「おーい、亜弓、何してるんだぁ? もう、入学式始まるってよ!」
「今行くよー!」
浩二に大きく手を振り、私は彼女に向き直った。
「あ、私は、佐々木亜弓。よろしくね!」
右手を差し出すと、彼女は一瞬驚いたように目を見開き、再びその頬をピンクに染める。
そして、零れるような笑みを浮かべた。
「わたし、三池陽花です」
『ペコリん』
そんな表現が似合うような可愛いらしいお辞儀をして、彼女は小さな白い手を差し出し私の手に添えた。
ギュッと握ったその手は、とても小さくて、とても柔らかかった――。
0
あなたにおすすめの小説
結婚相手は、初恋相手~一途な恋の手ほどき~
馬村 はくあ
ライト文芸
「久しぶりだね、ちとせちゃん」
入社した会社の社長に
息子と結婚するように言われて
「ま、なぶくん……」
指示された家で出迎えてくれたのは
ずっとずっと好きだった初恋相手だった。
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
ちょっぴり照れ屋な新人保険師
鈴野 ちとせ -Chitose Suzuno-
×
俺様なイケメン副社長
遊佐 学 -Manabu Yusa-
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
「これからよろくね、ちとせ」
ずっと人生を諦めてたちとせにとって
これは好きな人と幸せになれる
大大大チャンス到来!
「結婚したい人ができたら、いつでも離婚してあげるから」
この先には幸せな未来しかないと思っていたのに。
「感謝してるよ、ちとせのおかげで俺の将来も安泰だ」
自分の立場しか考えてなくて
いつだってそこに愛はないんだと
覚悟して臨んだ結婚生活
「お前の頭にあいつがいるのが、ムカつく」
「あいつと仲良くするのはやめろ」
「違わねぇんだよ。俺のことだけ見てろよ」
好きじゃないって言うくせに
いつだって、強引で、惑わせてくる。
「かわいい、ちとせ」
溺れる日はすぐそこかもしれない
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
俺様なイケメン副社長と
そんな彼がずっとすきなウブな女の子
愛が本物になる日は……
冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない
彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。
酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。
「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」
そんなことを、言い出した。
嘘をつく唇に優しいキスを
松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。
桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。
だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。
麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。
そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
Bravissima!
葉月 まい
恋愛
トラウマに悩む天才ピアニストと
俺様キャラの御曹司 かつ若きコンサートマスター
過去を乗り越え 互いに寄り添い
いつしか最高のパートナーとなる
『Bravissima!俺の女神』
゚・*:.。♡。.:*・゜゚・*:.。♡。.:*・゜
過去のトラウマから舞台に立つのが怖い芽衣は如月フィルのコンマス、聖の伴奏ピアニストを務めることに。
互いの音に寄り添い、支え合い、いつしか芽衣は過去を乗り超えていく。
✧♫•・*¨*•.♡。.:登場人物:.。♡.•*¨*・•♫✧
木村 芽衣(22歳) …音大ピアノ科4年生
如月 聖(27歳) …ヴァイオリニスト・如月フィルコンサートマスター
高瀬 公平(27歳) …如月フィル事務局長
訳あり冷徹社長はただの優男でした
あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた
いや、待て
育児放棄にも程があるでしょう
音信不通の姉
泣き出す子供
父親は誰だよ
怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳)
これはもう、人生詰んだと思った
**********
この作品は他のサイトにも掲載しています
片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜
橘しづき
恋愛
姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。
私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。
だが当日、姉は結婚式に来なかった。 パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。
「私が……蒼一さんと結婚します」
姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。
☘ 注意する都度何もない考え過ぎだと言い張る夫、なのに結局薬局疚しさ満杯だったじゃんか~ Bakayarou-
設楽理沙
ライト文芸
☘ 2025.12.18 文字数 70,089 累計ポイント 677,945 pt
夫が同じ社内の女性と度々仕事絡みで一緒に外回りや
出張に行くようになって……あまりいい気はしないから
やめてほしいってお願いしたのに、何度も……。❀
気にし過ぎだと一笑に伏された。
それなのに蓋を開けてみれば、何のことはない
言わんこっちゃないという結果になっていて
私は逃走したよ……。
あぁ~あたし、どうなっちゃうのかしらン?
ぜんぜん明るい未来が見えないよ。。・゜・(ノε`)・゜・。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
初回公開日時 2019.01.25 22:29
初回完結日時 2019.08.16 21:21
再連載 2024.6.26~2024.7.31 完結
❦イラストは有償画像になります。
2024.7 加筆修正(eb)したものを再掲載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる