ひまわり~好きだと、言って。~【完結】

水樹ゆう

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第十一話 【凶報】どうか神様。

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 あれは、そう。
 高校の入学式だった。

 抜けるような、青空の下。
 ハラハラと、薄桃色の花弁が雪のように降りしきる満開の桜並木の中で、私は、ポツリと佇む一人の女生徒を見かけた。

 一目見たら、たぶん絶対忘れないだろう、これ以上ないってくらいの印象深い、そんな『美少女』。

 まだ、幼さを残している小柄で華奢な体。

 セーラー服から見え隠れする素肌は、どこもかしこも抜けるように白くて滑らかで。

 春の優しい風に吹かれてサラサラと舞っている、色素の薄いストレートの 長い髪も。

 長いマツゲに縁取られた、ライト・ブラウンの大きな瞳も。

 丸みを帯びた頬のラインも。

 可憐な、ピンクの唇も、何もかも。

 本当に綺麗で、まるで『天使みたい』だって、そう思った――。

「ねえ、どうしたの?」

 少しためらった後、私は、その子に声をかけてみた。なんだか、困っているように見えたから。

「え? あ、あの……」

 そう言って、彼女は恥ずかしそうに、白い頬をポッと上気させた。

 うわっ。
 色が白いと、ほっぺってピンク色に染まるんだ。

 可愛いーっ!

 それに、澄んだハイトーンの声も、まるでアニメの主人公みたいに可愛いすぎっ!

 本当に、こんな子って居るんだなぁ。

 高校入学時には、身長168センチ。

 ひょろひょろと、背ばかり伸びるのがコンプレックスだった私は、小柄な子を見ると何だか嫌~な気分になるんだけど、ここまで可愛らしいと、いっそコンプレックスなんて感じない。

 しっかし、ホント、お人形さんみたい。

 思わず、彼女の美少女具合に感動していると、彼女がすっと右手を上げた。

「あの人の名前、分かりますか?」
「え? どの人?」

 彼女の白い指先が指し示す方に視線を巡らせた私は、そこに良く知っている二人連れを見つけて、ちょっと驚いた。

 そこに居たのは、三ヶ月年下の従弟いとこ浩二こうじとその親友、伊藤貴史いとう たかしくんだった。

 そもそも、幼稚園からの腐れ縁だから浩二が従弟であることを差し引いても、二人のことは良く知っているんだけど。

 いわゆる、『幼なじみ』ってやつ。ちなみに二人とも、三度の飯よりもサッカーが大好きな『サッカー・バカ』だ。

「えっと、どっちの人? にやけた顔をしている垂れ目のツンツン頭は、佐々木浩二って私の従弟なの。で、色黒の大きい方が、伊藤貴史くんだけど……」

「伊藤くん……、伊藤貴史くん」

 彼女は、その名前を確かめるように呟いた。

 ピンクの唇が、伊藤くんの名を呼ぶ。

 私は、なぜかドキンと鼓動が大きく跳ねるのを感じた。

「おーい、亜弓、何してるんだぁ? もう、入学式始まるってよ!」
「今行くよー!」

 浩二に大きく手を振り、私は彼女に向き直った。

「あ、私は、佐々木亜弓。よろしくね!」

 右手を差し出すと、彼女は一瞬驚いたように目を見開き、再びその頬をピンクに染める。

 そして、零れるような笑みを浮かべた。

「わたし、三池陽花みいけ はるかです」

『ペコリん』

 そんな表現が似合うような可愛いらしいお辞儀をして、彼女は小さな白い手を差し出し私の手に添えた。

 ギュッと握ったその手は、とても小さくて、とても柔らかかった――。


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