上 下
1 / 45

アイソレーション・タンク(感覚遮断タンク)からの目覚め

しおりを挟む
最初に目覚めたのは?冷たかったからだ。

体温が急激に奪われて、その冷たさで、目覚めてしまったのだ!
と思う。

次に、私が思ったのは、真っ暗!と、言うことだった。

真っ暗!全く光が無い!全く見えない!のだ。

目が見えなくなったのか?

そして、何よりも、恐ろしかったのは、無音?

全然!音が聞こえなかったのだ。

真っ暗闇!

で!

見えない?

または失明した?

瞬きはしている?

瞼は開閉している?

音が全くしない?

それよりも、私は、今!何処に居るのか?

分からない状態に陥っていた。

自分が、今、何処に居るのか?

いや、何処に居る?のでは、無い!

今、私はどんな状況?

ベッド?

なのか?

ただの木製の床の上に、寝転んでいるのか?

冷たくて、堅い、ざらざらしたコンクリートの上に寝ているのか?

だが、そんな感覚が一切無いのだ。

無い?と言うより、感じない?

自分の身体が支えられていない?

まるで、重力が無い?

まさに、無重力の中にいるような、

宙に浮いているような感覚で、そう、

漂っていた。

軽いパニックになり、

私は、手足をバタバタと動かしてみた。

動かすと、最初に感じた感覚?

急激に冷たくなる感覚が、どうも身体の横半分下?から伝わっている事が分かった。

そして、手足をバタバタと動かしている時に私は水の存在を捉えた。

水?

水中?

では無い!

水面に浮いている?

それは充分に有り得る!

いや、その可能性が十分に高い!

私は、目も見えない!真っ暗な世界の中で、無音?全く何も聞こえない!音の無い世界で、人生?で、最大級の恐怖を味わい!

絶叫した!

微かに、くぐもって、私の悲鳴のような!

音?声が、聞こえた。

しかし、その音は、直接の自分の耳から聞こえた音では無く、振動?

骨振動?な、感じで!

まるで、自分の耳に、機密性の高いヘッドホンをセットしている感じと限りなく似ていて、私は自分の手で、自分の耳の辺りを触った。

両耳の中には、耳栓?の、ようなモノが入っていて、直ぐに、その耳栓?の、ようなモノを抜き取った。

両耳から指でほじくり取った耳栓?を捨てた時と同時に、私の身近から、水の音?水滴の音?私が手や足、身体を激しく動かす度に、水飛沫の音!がハッキリと聞こえた。

私は、どうやら、水の上?に仰向けで寝ているような感じらしい?

らしい?とは、私の身体半分?身体が寝ていると仮定しての、下の部分が冷たく、背中が冷たくて、お腹が冷たく無い!

顔は冷たく無く、後頭部は冷たかったからだ。

「助けてくれ~」

私の大きな声は、ちゃんと自分の両の耳に聞こえて、自分の聴力は大丈夫であることが確認出来!歓喜の涙を流していた。

しかし、以前!無音であり、

漆黒の闇!真っ暗闇であることは変わらなかった。

私は、水?水面の上に身体半分を浮かべて、漂っている事実を、まずは受け入れ、そして、不安定ながら、手足を使って、身体の周りの環境?を調べ始めた。

まずは腕を十字の形に開こうとして、直ぐに横の壁に手がぶつかり、寝ている身体の左右に壁か?何か?

プラスチックみたいな素材で覆われたモノがある事が分かった。

次に、そのプラスチックの素材部分を手探りで触り続けると、仰向けの身体の真上?

約50センチの所にも遮蔽物?が、あり、

色々な処を両手で触り始めると、フタ?

溝?みたいな、感覚が上部に感じられ、真っ暗闇の中で、頭にはイメージとして、自分の身体をすっぽり覆う感じの、楕円形のような、卵の形のような、存在を描いた。

そして、まずは、仰向けに寝ている真上部分の天井部分の蓋?を押してみた。

ビクともしない。

もう少し、強く押してみた。

自分の身体が、水?の、ような液体に沈んでいき、慌てて止めた。

ちなみに、私は片手を使って、背中の下?

の、液体の下の部分?を手探りで沈めると

水面から40センチ位の所に床?

底があり、私は脚を下に沈め始めた。

踵の部分がぶつかり、恐る恐る、その空間の中で体制を変えながら、底の部分に脚を降ろし、なんとか両足で立つ事に成功した。

しかし、身体が妙に不安定?と言うか、身体がふらふらして、立ち眩み?の、ような感覚に襲われ、しばし、液体の中でうずくまり、息を整えた。

多分、だが、私はここに、この得体の知れない、光も全く無く!

音も全くしない?外の音が全くしないここで、

長い間!横になって眠っていたらしいのだ。

そして、兎に角!私は覚醒してしまったのだ。

なんとか、眩暈のような?

立ち眩みのような感覚が収まり、

私は、両足を液体の下の床にしっかりと降ろし、上体を持ち上げる感じで立ち上がり、天井部分に両手を這わせながら、兎に角!手がかりを探し始めた。

時間が経てば経つほど、軽いパニックが襲ってきたが、それでも、なんとか心を落ち着かせながら、天井部の、ドーム型の蓋の部分?溝の部分に指を入れて、細い溝にそって指先をなぞっていった。

そして、丁度、楕円形の横と横の部分!半分の処の溝に金属のフックのような、鍵のような部分を探り当て、色々な部分を指先で弄り回していると、L字の、例えるなら、自動車のボンネットを開ける時の部分とそっくりな仕組みが指先に感じられ、L字部分を軽く指先で押すと、カチャッと音がして、その次には空気の音?

なにか、空気圧?油圧の音がしたと同時に、天井が蓋のように開き、それと同時に、眩いばかりの光の洪水が両目に一斉に突き刺さり、

思わず強く瞼を閉じ、両手で顔を覆い隠した。

両目からは、今の強い光に刺激され、涙が止め処なく流れ!それと同時に、今度は、くぐもってはいるが、それでもハッキリとヘリコプターのけたたましい音が耳に飛び込んできた。

まるで、イキなり戦場に放り出された感覚だ。

私は液体の中でしゃがみながら、少しずつ、目を、外の光に馴らし始めた。

今まで漆黒の闇?光の全く届かなく、そして全ての音までも届かない世界に長く?いたのだから、外の光?陽光に慣れるまで2、30分はかかったと思う。

徐々に私は薄眼を開け、周りの風景?場所を見渡し始めた。
しおりを挟む

処理中です...