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感染者が少ない東北を目指して、宇都宮駐屯地へ

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AH-1Sベルヘリコプターの燃料タンクには燃料が4分の1位しか無く、桐山千賀子の話だと現在の燃料で航続距離が約120キロメートルだと教えてくれた。

前の副操縦席に、本来なら一人用なのだが、女性二人で大人しく座っていた。

佐々木ミカは先程の感染者からの襲撃シーンで心身が麻痺しまったのか?ぼぉっとした表情で真っ暗な埼玉県の街?多分!大宮の街上空から、街が停電した異様な風景を見ていた。

埼玉県の県民はあらかた非難?租界?出来るモノは他県に移動するように要請されていたが、一向に進んではいなく、一時的に無料になった交通機関!私鉄!JR!には大きな旅行バックを持った家族連れが連日並び、各高速道路には車が殺到し、渋滞になっていた。

逃げる場所?田舎や実家がある一都三県の生き残りたちはイイが、半分は地方に田舎や実家!親戚もいない家庭も大勢あったので、国が指定した避難区域!殆どが隣の県の学校や公共施設だったが、直ぐにパンパンになり、頑なに自宅から出ない!逃げない家族達も大勢いた。

ヘリから見える大宮の風景は街灯など見えない、まるで電気の無い江戸時代?にでもタイムスリップした感じで、真っ暗な闇が広がり、本当にたまに、車のヘットライトの明かりが見えるが、今頃、何処へ逃げるのか?
ただし、大宮市を抜けて次の市、鴻巣市?付近から、数は少ないが街灯が付いていて、そこは4号線の道路だった。

「100キロメートル圏内の自衛隊駐屯地だと、宇都宮駐屯地が4号線沿いを真っ直ぐ行くと、あるわ」

と、桐山千賀子は佐々木ミカとは違い、こんな有事の時も、若干!声のトーンは高いが、勤めて冷静な口調で、タブレットをいつもの人差し指でスクロール!操作しながら、また教えてくれた。

私は、今ではヘリの操縦をベテランのように扱い、無線にスイッチを入れて、コックピット足元のスピーカーの軽いノイズの音に聞き耳をたてていた。

ヘリの音がうるさいので、上に引っ掛かっていたインカム?を頭に付けて、左側の耳に意識を集中した。

そう言えば、朝霞駐屯地での緊急時に、SOS発信は当然!している筈なのに、他の駐屯地の自衛隊ヘリや、米軍の救助ヘリ?も一機も来なかった?と言うのは、どう言う事なのか?
今は、取り合えず無事な状態だが、だからこそ、突然!激しい怒りが湧いてきた。

私は防風ハッチに無数に付着している感染者の手形?の形で緑の蛍光色に光?
いや、私にしか見えないだろう!感染者の体液を見ながら、地上の4号線道路も同時に見て、次の目的地の宇都宮駐屯地に向かった。

AH-1Sベルヘリコプターのスピードメーターはレットゾーンが300キロまでメモリがあったが、私は200キロ前後のスピードで飛行した。

このままのスピードだと、目的地に30分後には到着する。

30分で約100キロ移動か!

私は、急にホッとしたのか?朝霞・和光特借宿舎での続き?今日までのCウイルス感染による日本や世界の状況を桐山千賀子に、暇潰しにアナウンスしてもらった。

彼女は、私が疑問に思い、頭に浮かんだ問いに、分かる範囲で説明してくれた。

さながら、私のウィキペディア状態?と言ったところか。

朝霞駐屯地も練馬駐屯地での無線連絡?や、携帯電話等の連絡が不能なのは、もはや日本列島の中心部!東京都が麻痺している状態なので、東京に殆どの本社機能がある通信企業が軒並みシャットダウン!

そして、感染者拡大に伴い!二次!三次!事故!人災を防ぐために、まずは東京都内のインフラを段階的にダウンしたことによる、通信の一時的な崩壊!

自衛隊側の致命的な判断ミス!

都内周辺の通信に精通した人材の殆どを東京都内の主要封鎖地帯に緊急配備!

朝霞駐屯地が通信の要だった現地情報隊、東部方面通信群をことごとく投入することにより、通信機器の訓練を受けた人材が一気に失う事になった。

日本国民が一斉に携帯スマホや電話、インターネットをフル稼働した事により、通信ケーブルが実質パンク状態。

また、このような有事での対応マニュアルも無いので、今は実質、各駐屯地の判断で組織が動いているのが現状!

自衛隊の隊員達にも家族、恋人、友達が当然いるから、現在は一時的に解散(最低限の人数は残った)している駐屯地も多数あり、

政府の規則正しい筈の燃料?食糧配給も基本的に滞り、地方都市部は経済・情勢・そして情報閉鎖による不安から、暴動が多発!警察機能も自衛隊と同じ理由で、実質、解散状態になっていたので、更なる治安の悪化。

と、暴力団!ヤクザが暴力を持って食糧支配している箇所もあり!
ここで、政府?警察!自衛隊が鎮圧に行った作戦が、感染者(感染者の死体)をヤクザの事務所や暴力団事務所に態と放置し、Cウイルスに感染させ、全員感染者(実際!健常者でも感染者とする)とみなし、全てを射殺した?陰謀的鎮圧も有り?とのことだった。

このCウイルス感染を逆手に取った、恐ろしい例も日本だけでは無く、世界各地で行われ始めた。

ここで、桐山千賀子から面白い話を聞いた。

今や自衛隊や警察には、徒歩でバリケード地帯に近付くモノがいたら、射殺しても構わないそうだ。

それが感染していない人間だとしても、仕方ない!らしい。

大丈夫なのは、車やオートバイ?等の運転?操作する乗り物で現れない限り、助ける事もせず、反対に感染者同様に殺されるって訳だ。

と言う事は、私達はヘリでの撤退だから、簡単に撃たれることは無いのは朗報か!
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