魔族少女の人生譚

幻鏡月破

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第一章 四天王になるまで

第十話 神霊樹のお話

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 私は今、変な状況にある。
 1人でお弁当を食べようと思って廃校舎に来たまではいい。
 だけど今、私は変な状況にある。
 それは、

『私は神霊樹。君を助けに来た』

 ホントに意味わかんない……。
 何ということでしょう。廃校舎の中心にそびえ立つ大きな樹が、急に私に話しかけてきたのだ。しかも助けに来たと言っている。全く理解できない。さっぱりだ。

「あの、えーと、どゆことですか?」

『だから神霊樹って言ってるでしょ! まずは話を聞きなさい、フィー」

「っ!?」

 私は驚きを隠せなかった。神霊樹が私の名前を言ったのだ。何故知っている?

『私は君の名前を知っている。私は君のことが分かる。だから信用して』

「いやだけど、なんか信用できないなぁ。」

『あそう。じゃあ君の秘密をここで言ってみよう』

「秘密? そんなの分かるわけーー」

『君の剣術は『王賜剣術コールブランド』でしょう?』

「ーーっえ!? 何でわかるの?」

 王賜剣術。それは魔族の敵、勇者の中でも最強だった初代勇者の剣術。初代勇者が何故最強と言われていたか。それはこの剣術のおかげと言っても過言ではない。 王賜剣術は彼が初めて使ったものであり、彼しか使えないものであった。それは何故か。理由は簡単、単純で、しかし難しいからだ。
 この剣術は剣を2本使用する。そしてそれらを自分は持たずに浮かせ、剣だけを動かす。側から見れば、彼は一切動いていないのに剣が勝手に宙を舞い、敵を斬り刻み、そして刺している様にしか見えない。一種の念力の様なもので、一切魔法及び魔力は使わないらしい。
 人々はそれに憧れ、沢山の剣豪達が真似をしようとしたが、しかし全く出来なかった。
  
 まぁ私は出来たんだけどね。
 と、そんなことよりも大事なことが。
 
「もっとあなたに訊きたいことがあるんだけど、とにかくさぁ。私はあなたを信用してもいいのかなーと?」

『もちろん! じゃんじゃん信用しちゃって!』

「じゃあさ、助けに来たって言ってたけど具体的になぁに?」

『よくぞきいてくれました! 内容は2つ。
 1つ目、次の模擬戦でカルラに勝つ方法。
 2つ目、私の内包する剣をあげるよ』

「えっ?」

 おっと。これは予想外の言葉が出た。

「カルラに勝つ方法……。
 何であなたがわかるの?」

『そうだな……。私の能力はただ未来を見る能力……って言えばわかるかな?』

 木の葉がざわめく。
 葉が掠れ合う音の中私は思った。
 ただ未来を見る能力……。もしそれが本当ならば信用できる度がグーンと上がる。
 世の中のものはとある一定のラインを越えると能力の開花や自我の芽生えることがある。それは植物や動物、人間、魔族、さらには魔物にもあることだ。
 開花する能力はそれぞれで違い、この神霊樹のような未来を見る能力や空を飛ぶ能力など様々だ。
 何故それが信用度に関わるのかというと、能力の効果は絶対だからだ。能力通りのことが必ず起こる。もし言った能力の効果が出なかった場合それは嘘となる。
 だから神霊樹に未来のことを言わせてそれが当たれば本当かどうか確かめることができるのだ。

「ねぇねぇ神霊樹さん。じゃあこの後何が起こるの?」

『ええっとねぇ、うーんと、君が来たあたりのところに小さな動物がいるのわかる?』

「うんうん」

『この後上から鳥が来て食べられちゃうよ』

「えほんと?」

 と言って上を見ると、突然高い声が聞こえてきた。
 なんだと見ると影が小動物を攫って行った。

「オオカナドリ……ほんとに食べてっちゃった……」

 すごい! あなたは未来が見えるフレンズなんだね! とか心で言いながら本当に信用できそうだと思った。
 1つ目のカルラに勝つ方法は教えてもらえそうだ。

『どう? 見直しちゃった?』

「うんすごいと思う。でさでさ、ほんとに剣、くれるの?」

『うんあげる。あっちも私のほどじゃないけどそれなりのものは持ってくるよ。
 君の剣じゃちょっと心許ないからね』

「でも神霊樹の内包する剣って……」

 神霊樹は神格武装の剣を内包している。世界にあるこの樹と世界樹を除く6つの神霊樹の剣は〈神聖剣〉呼ばれている。
 神格武装は普通の武装とは違い何か特殊能力を1つ持っている武装のことだ。例えば攻撃する際に非実体化する剣や、対象に必ず当たる弓などがある。
 神格武装を持っている人は人間魔族含めて数えるほどしかない。
 ……そしたらわたしが有名になっちゃうじゃん!
 という心の声が聞こえたのか、神霊樹は、

『大丈夫だよ。神格武装だって言わなければいいんだからね』

 と言った。

 ……これでカルラに勝てるならいいよね。人に頼って手に入れたものだけど、絶対使いこなして私の力にするんだ。
 
『じゃあまずは勝ち方かな……』

 えーっとね、っという声から神霊樹は話し始めた。
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