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龍の国と死者の番

龍王の語り

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「ときに、ラグーンよ」
「んむ、はい」
アイスを口に運んで食べながら話を聞く体勢に移ったところでルドレウスさんに声をかけられ返事をする。

「そなたはあのセンブレルでそれなりの時間を過ごしていたがあの国の成り立ちについてどれほど関心を持っている?」
「成り……立ち? 」
「ふむ、無いようだな」
聞かれた内容に首を傾げればルドレウスさんは頬を綻ばせる……苦笑だこれ。

「こちらが話すと言っておいてすまないとは思うが、どうか世間話だと思ってくれ、氷菓子は気に入ったか? 」
「とっても美味しいです」
「ならばよい、味わい楽しむと良い」
すっきりした甘さで良いけど、もう少しミルクの甘さが欲しい。

「ええと、質問の答えとしては、センブレルが出来たときの話ですよね」
「そうだな」
ゲームの設定集の記憶を思い出して、内容を切り取って、どれを言うかを考えて、えーっと。

「えーと確か、僕の別荘がある……あの森を作った昔の魔王を倒すために勇者がやってきて、魔王を倒して、お付きの戦士が魔物が出る森の抑止力になるために残ったのが始まりでしたっけ?」
「うむ、200点だ、素晴らしい」
「……何点満点ですそれ」
「100点満点の中でだな」
「……うぅん?」
良くわからず目が点になる僕だが、ルドレウスさんは照れたように頭をかき笑う。

「どうしても身内には甘くなってしまうのだ、我ながらこそばゆい」
「なるほど」
「ただの自己満足に過ぎぬ故気にしないでくれ」
「なるほど……?」
良くわかんかいけど流しとけばいいかな、うん。

「ちなみに甘さを抜くと何点位です?」
「47点だな」
「うわお」
普通に低かった、悲しい。

「前触れの無い問いに臣下でも無い其方の答えとしてはまずまずなものだ、気にする必要はない」
「さいですか」
少しテンションが下がるけど気にするなと言われれば仕方ない。

「脱線してしまったが本題に戻ろう、センブレルについてだが」
「ああ、はい」
「あれは人間の統治するには大きすぎる国だが、実によい采配とバランスの取れた良い国だ、人が治めているという点さえ見なければ最高なんだが、」
「へえ……」
「今でこそ、無視するには些か無理のある狂った大国だがな、前はそうでもなかったのだよ、ラグーン」
「……というと?」
少し頭で考えて特に思い浮かばずに聞き返すと、ルドレウスさんは眉間のシワを寄せて言った。

「我の見立てでは400年前にはあの国は他国に潰され滅んでいた」
「えっ」
アルさんや王様が日々朗らかに過ごしてた、あの国が?

「驚くだろう? 映えある勇者の供が築いたとはいえ国は国、その当時の者が平和を保ったとしても次の代、そのまた次の代と年を重ねれば国には膿が溜まり、朽ちて腐るものだ……はあ、面倒な事よ」
口角を上げ面倒そうに息を吐いたルドレウスさんは人よりも長い爪で頬をかき、またため息をついた。

「英雄とは果実のように新鮮な時期を越えれば香味が抜けて無味になるもの、それを知らぬものが周りに集まり、俗を呼び、争いを呼び、血を生み全てを巻き込み破滅する運命にある、加えて根底が戦いを目的に築いた国なのだ、どう転がしても勝手に滅んでゆくだろうさ」
「……えぇと」
「長く続ける事ができない儚き肥溜めのような国、だったのだがな、何故か事情が変わった」
「……事情」
「ああ、破滅とは終わるものと捉えていたのだがあの国を見て少し知見が広がった、……駄目だな、話が長くなるぞ」
「? 何がです?」
衝撃的な言葉の数々に聞き入っていた僕とは対照的に語ってくれていたルドレウスさんは眉間の皺を府やし、それを長い指で伸ばしている。

「片手間に終わる話と言ったのだが撤回しよう、少し長くなる」
「ああいえ、聞いてて楽しいので大丈夫です」
「すまんな、どうも今日は気分が高揚する、妻と息子以外では大変珍しいのだが如何せん不快感が皆無なのが質が悪い、以後は気を付けよう」
「ああいえ、そんな事なさらなくても全然」
見るからに楽しそうに話すルドレウスさん。
楽しそうにしてる人はそこにいるだけで勝手に僕も楽しくなるからそのままでいて欲しいと思う。

「そうか? ならば話の続きといこう、退屈と感じたら何時でも菓子でも口に入れ別の作業をすると良い、許す」
「あー、わかりました~……」
うーん作業、ね……とりあえず、パンを。












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