赤い目の猫 情けは人の為ならず

ティムん

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第五話 お披露目

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 客を呼ぶにゃあ、まず人目を惹かなきゃ始まらねぇ。見てもくれなきゃ店になんて来てくれるわきゃないんだからな。で、人目を惹くためにゃ何をすればいいか。これが人間なら相当難しぃ問題だが、幸いというかなんというか、俺は猫だ。

 人間なんてのは、小さい動物、とりわけ猫や犬なんかが大好きだからな。足元を猫が歩いているだけで目が追いかけちまう、そんな生き物なのさ。

 そんないるだけで人目を惹いちまうこの猫様が、ちょっとした芸でも披露してみろ。瞬く間に人混みが出来ちまうってぇ寸法だ。

 ──こんなふうにな。

 俺は店の前に出来た人の塊を見て、うんうんと頷いた。ま、俺の手にかかりゃあざっとこんなもんよ。ひぃ、ふぅ、みぃ……三十人ほどは集まったか。殆どの人がスマホで俺を狙ってやがる。気分は大量のスナイパーに狙われた政治家だ。パシャパシャという薄気味わりぃ音を聞きながら、俺は独りごちる。

 ──そりゃ、猫がリズムよくタンバリンなんてぇもんを叩いてりゃ、このくらいは集まるか。

「クロ助、あんたそんな特技があったんだねぇ。すごいねぇ」

 雑貨屋の婆さんの優しい声を聞き、俺は婆さんお手製ミニタンバリンを横にそっと置く。さ、第一段階は上手くいった。次は集まった人に商品を買わせねぇとな。
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