赤い目の猫 情けは人の為ならず

ティムん

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第四話 お婆さん

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 ぶらぶらーっと歩くことしばらく。俺は商店街にやってきた。近頃、シャッター商店街なんてぇのをよく聞くが、ここも御多分にもれず、営業している店は半分ほどしかねぇ。太陽の光があまり入って来ず、どことなく暗い雰囲気が漂ってやがる。

 特に、もうヨボヨボの婆さんがやってる雑貨屋なんかは閑古鳥がぴーよろろろと盛大に鳴いてやがる。いや、閑古鳥がぴーよろろろと鳴くかは知らねぇけどな。

 通る人も、婆さんの客引きなんて無視して過ぎ去っちまう。やれやれ、冷てぇことだな。商店街の温かみってのはどこに行っちまったのやら。
 仕方ねぇ、ここは俺が一肌脱いでやりますか。

「にゃおーん」

 俺は婆さんの前に座り、ここに居るぞと主張する。何故かって? そりゃ、婆さんが寝てたからさ。俺が店の前まで行くわずかな時間に、あっという間に夢の世界。

「まぁ、クロ助かい。気が付かなくてごめんねぇ。あんまりにもお客さんが来ないもんだから、ついうたた寝しちゃってたんだよ」

 ん? さっきはクロにゃんだったのに何で今度はクロ助なのかって? そりゃ、俺が野良だからさ。みんな好き勝手に自分で決めた名前で俺を呼ぶのさ。ま、俺は名前なんかに縛られないってぇことさ。

 婆さんは俺の頭を節くれだった手で優しく撫でる。くぅ、やっぱり婆さんの撫では技が違うぜ! こいつも年の功ってやつなのかねぇ。気を抜いたら昼寝しちまいそうなくらい、気持ちがいい。

「はぁ、どうしたらお客さんが来るのかねぇ……」

 婆さんは浮かない顔でため息をひとつ。おぉ、そうだった。俺はそれを何とかするために来たってぇのに、忘れるところだったぜ。
 さっき女子高生から猫缶を貰った恩を返してねぇからな。きちんと恩を返さねぇと。

 ん? 恩を返すならさっきの女子高生にじゃ無いのかって? あぁ、そりゃあ、一年前に聞いた、ある恩人の考えが原因なのさ。
 情けは人の為ならずってことわざがあるだろ? あれの意味は、誰かを助けたら、その誰かがまた別の人を助けて、そうすると今度はまたそいつが──ってな感じで、最終的には最初のヤツに返ってくるってことだとあの人は解釈してるんだ。恩を別の人に返していくんだ。
 んで、恩の輪っかがぐるぐるぐーるぐーるぐるってな。

 どうだい、悪くねぇだろ? だから俺は、受けた恩は別のヤツに返すって決めてるのさ。

 さてと、じゃあサクッと恩返し、始めますか。
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