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11 ガイダンス
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ガイダンスを終えて大講堂を出た柊斗の目に入ってきたのは、あと数日で満月になろうかという月だった。一見満月のように見えるものの、よく見ると若干歪で足りない。
(俺も他人から見るとこんな感じなのかな)
「今年こそしっかりする」そう決心したつもりだったのに、何になりたいか、どんな職業につきたいかすら柊斗は何も考えていなかった。それに対し、気になる企業のインターンシップに参加しようだの心構えだの講師はを話していて、また自分一人が取り残されてしまった気がした。
「柊斗」
口にするのも恥ずかしいような感傷に浸っていると、前を歩いていたアルハヴトンが振り向いた。もちろんその横にはマナギナがいる。
「あ、ごめん」
いつの間にか開いていた距離を詰めるように小走りになりながら、柊斗は笑った。笑えている、と思う。
アルハヴトンとは、相変わらず学校でほぼ毎日顔を合わせていた。気を抜くと涙が出てきそうになることもあるが、ちょうど迫っていた試験や期末課題が気を紛らわせてくれた。
(これから夏休みだし、その間にこの感情も落ち着いてくるかな)
何気なく考え、そうか、これからしばらくアルハヴトンに会えないのか、と柊斗はハッとした。
「ねえ、アルハヴトン、マナギナさん、試験も終わったことだし、これから一緒に夕飯食べにいかない?」
もう少し一緒にいたい。そう考えた時には口から言葉が飛び出していた。
「ん」と隣に立ったアルハヴトンが軽く目を見開く。
「私は構わんが……しかし……」
どうしよう、という風にマナギナとアルハヴトンは目配せを交わした。
「……とりあえず、行ってみましょうか」
「やった! こっちにおすすめの店があるんだ! あ、そういえば食べられないものとかあったりする?」
「いや、特にないが……」
何となく歯切れの悪いアルハヴトンの答えに違和感を覚えるものの、柊斗はあえてそこに目を向けないようにした。下手につついて、「やっぱり食事はやめよう」と言われてしまうのが怖かったからだ。足早に歩き、安くておいしいと学生間で人気のイタリアンの店に向かう。
ドアを開けると、ひやりとした空気と香ばしい匂いが広がった。いらっしゃいませ、そちらで少々お待ちくださいと笑顔を柊斗たちに向けたウェイターが厨房へと入っていく。メニュー表でも取りに行ったのかな、と思いきや、なかなか帰ってこない。
「……?」
何かあったのだろうか。不思議に思った柊斗が厨房を覗き込もうとすると、緊張した顔つきのウェイターが戻ってきた。ぺこりと頭を下げられる。
「あ、三人なんですけど……」
「申し訳ないのですが、獣人の方は当店の利用をご遠慮いただいてもよろしいでしょうか」
「え?」
予想外の言葉に柊斗が固まると、「アレルギーや動物嫌いの方がいらっしゃるかもしれませんし、衛生面でもちょっと……他のお客様へご配慮いただければと思います」と一気に早口で続けられる。
「……いや、ちょっと、何それ!」
三秒ほど考え、ようやく入店拒否をされているのだということに柊斗は気づいた。ざあっと全身に冷や水を浴びせられたような気がした。何を言っているんだ。獣人はペットではなくれっきとしたヒトだ。
「は? 差別じゃん、そんなの!」
柊斗が叫ぶと、下を向いたままのウェイターの肩がびくりと跳ねた。
「意味分かんない。どういうことだよ!」
「柊斗」
ぽん、とアルハヴトンの手が柊斗の肩を叩いた。いつの間にか店内中の顔がこちらを向いていることに気づき、柊斗は愕然とした。
「いいから、もう出よう」
「でもっ、アル!」
「……このままこの店で食事をしても、いい気分にはならないだろう?」
(俺も他人から見るとこんな感じなのかな)
「今年こそしっかりする」そう決心したつもりだったのに、何になりたいか、どんな職業につきたいかすら柊斗は何も考えていなかった。それに対し、気になる企業のインターンシップに参加しようだの心構えだの講師はを話していて、また自分一人が取り残されてしまった気がした。
「柊斗」
口にするのも恥ずかしいような感傷に浸っていると、前を歩いていたアルハヴトンが振り向いた。もちろんその横にはマナギナがいる。
「あ、ごめん」
いつの間にか開いていた距離を詰めるように小走りになりながら、柊斗は笑った。笑えている、と思う。
アルハヴトンとは、相変わらず学校でほぼ毎日顔を合わせていた。気を抜くと涙が出てきそうになることもあるが、ちょうど迫っていた試験や期末課題が気を紛らわせてくれた。
(これから夏休みだし、その間にこの感情も落ち着いてくるかな)
何気なく考え、そうか、これからしばらくアルハヴトンに会えないのか、と柊斗はハッとした。
「ねえ、アルハヴトン、マナギナさん、試験も終わったことだし、これから一緒に夕飯食べにいかない?」
もう少し一緒にいたい。そう考えた時には口から言葉が飛び出していた。
「ん」と隣に立ったアルハヴトンが軽く目を見開く。
「私は構わんが……しかし……」
どうしよう、という風にマナギナとアルハヴトンは目配せを交わした。
「……とりあえず、行ってみましょうか」
「やった! こっちにおすすめの店があるんだ! あ、そういえば食べられないものとかあったりする?」
「いや、特にないが……」
何となく歯切れの悪いアルハヴトンの答えに違和感を覚えるものの、柊斗はあえてそこに目を向けないようにした。下手につついて、「やっぱり食事はやめよう」と言われてしまうのが怖かったからだ。足早に歩き、安くておいしいと学生間で人気のイタリアンの店に向かう。
ドアを開けると、ひやりとした空気と香ばしい匂いが広がった。いらっしゃいませ、そちらで少々お待ちくださいと笑顔を柊斗たちに向けたウェイターが厨房へと入っていく。メニュー表でも取りに行ったのかな、と思いきや、なかなか帰ってこない。
「……?」
何かあったのだろうか。不思議に思った柊斗が厨房を覗き込もうとすると、緊張した顔つきのウェイターが戻ってきた。ぺこりと頭を下げられる。
「あ、三人なんですけど……」
「申し訳ないのですが、獣人の方は当店の利用をご遠慮いただいてもよろしいでしょうか」
「え?」
予想外の言葉に柊斗が固まると、「アレルギーや動物嫌いの方がいらっしゃるかもしれませんし、衛生面でもちょっと……他のお客様へご配慮いただければと思います」と一気に早口で続けられる。
「……いや、ちょっと、何それ!」
三秒ほど考え、ようやく入店拒否をされているのだということに柊斗は気づいた。ざあっと全身に冷や水を浴びせられたような気がした。何を言っているんだ。獣人はペットではなくれっきとしたヒトだ。
「は? 差別じゃん、そんなの!」
柊斗が叫ぶと、下を向いたままのウェイターの肩がびくりと跳ねた。
「意味分かんない。どういうことだよ!」
「柊斗」
ぽん、とアルハヴトンの手が柊斗の肩を叩いた。いつの間にか店内中の顔がこちらを向いていることに気づき、柊斗は愕然とした。
「いいから、もう出よう」
「でもっ、アル!」
「……このままこの店で食事をしても、いい気分にはならないだろう?」
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