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10 甘夏に集うアゲハ蝶
やらかした。
何がいけなかったのか、どうすればよかったのか、そんなことは分からない。
ただ、他人が触れてはいけないところを灯真が不用意に踏み抜いてしまったことだけは、確かだった。
即座にいとまを告げた唯人に引きずられるように五十嵐家を後にした灯真は、助手席でシートベルトを握りこんだ。
驚きと、動揺と、それから嫌悪感や不信感が混ざり合った——五十嵐夫婦の、あの視線には覚えがある。
兄が帰ってくる、と伝えた時の灯真の両親も、同じ目で灯真を見ていたから。
まだ灯真が小学生の頃だった。年の離れた兄はもう一人暮らしをしていたのだが、ある晩灯真の部屋に来て「明日帰る」と教えてくれたのだ。
まだその頃はそれが「おかしいこと」だなんて思っていなかった。だから翌朝それを母に伝えて——その直後に、兄の訃報を告げる電話が入ったのだ。バイク事故だったらしい。
その時の母が、同じ表情をしていた。
灯真のことを「気持ち悪い」「無理」と言い始めたのは、おそらくあれが決定打だっただろう。
もちろん、それだけが理由なわけではないことも知ってはいるけれども。
「……ごめん、なさい」
ようやく絞り出した灯真の言葉は、車のエンジン音にかき消されてしまいそうなほどに小さかった。
無能と言われるのは仕方ない。
邪険に扱われるのにも慣れている。
でも、他人のデリケートな部分を踏みにじる人間だとは、思われたくなかった。
唯人と五十嵐の関係性も、壊してしまったに違いない。
「み、みまっ、見間違え、ちゃって……」
何をどう見間違えたというのだろう。どっちにしろどうにかしているのは変わらない。
何回も続くカーブに揺さぶられ、頭が重くなってくる。シャツの襟元を広げ、灯真は浅い息を繰り返した。口の中に溜まってくる唾を飲み込む。
ばこん、と車のボンネットから音がした。
「お、落ち着け灯真」
「うう……」
「待て、今車停めるから」
少し走ると、不意に山道の中に駐車場が現れた。がらんとした中、隅に車を停めた唯人は窓だけ開けてエンジンを切った。
静かになった車内に、葉擦れと蝉の声が響く。日陰を通る、湿っぽく冷えた風は喉の辺りでわだかまってしまい、胸の奥まで入ってこない。
「ちょっと待ってろ」
そう言い残し、唯人が車を降りていった。
置いて行かれたのではないだろうか。自分に遂に愛想を尽かしたのではないだろうか。
反射的に不安に駆られた灯真が動けずにいると、助手席の扉が開いた。戻ってきた唯人が、ペットボトルの水を差しだしている。
「ほら、これでも飲め」
「……あ」
蓋を開けたペットボトルを、震える手に握らされた。口をつけると、体の中に冷たい水が染みわたっていくようだった。
大きく息を吸うと、今度は胸の奥まで空気が入っていく。
「……すいません、オーナー」
「謝らなくていい、俺が……もうちょっと、考えてればよかったんだ」
助手席の扉を開けたまま、唯人は車止めのブロックに腰を下ろした。緑茶のペットボトルに口をつける。
「圭なら灯真ともうまくやれるかと思ったんだけど……五年前、子供亡くしてたの……忘れてたんだ」
いや、別に忘れてたわけじゃねえんだけど、と訂正し、唯人は歯切れ悪く頭を掻いた。
「お前がそういうの見え……とにかくいいから。圭には俺から言っとくし、気にすんな」
「でも……」
「わざとじゃねえんだろ。大丈夫だって」
唯人の言葉に、うろたえていた心が静まっていく。理由も根拠もないが、唯人がそう言うなら大丈夫な気がする。
もう一口水を飲むと、灯真にも辺りを見回す余裕が出てきた。
なぜ山の中に突然駐車場が出現したのかと思ったら、どうやら展望台になっているようだ。駐車場の脇から、展望デッキへと続く木製の階段が伸びている。
「灯真、何見て……あ、展望台? 行ってみるか? 歩ける?」
「う、うん……」
唯人の言葉に頷き、灯真はシートベルトを外した。どこかふわふわしていた両足が、スニーカー越しにアスファルトを踏みしめる。
時折振り返る唯人の後を追い、ゆっくりと階段を上る。不意に木がなくなり、目の前に青空と海が広がった。
「わあ……!」
「ちょっ、おい!」
思わず柵に駆け寄る。手すりから身を乗り出した灯真のシャツの裾を、唯人が掴んだ。
「もうっ、子供じゃないんだから落ちたりしませんって」
「あ、まあ……うん」
隣の唯人に小さく文句を言い、灯真は改めて眼下に広がる景色を眺めた。
山の斜面には艶やかな葉の甘夏畑が広がり、わずかばかりの民家が並ぶ。その向こうに緑がかった宝石のような海と、入道雲の湧き上がる空が広がっている。
目を細め、道を辿る。「さんふるうつ」の赤茶色の屋根と店前の木が見えて、「あ!」と灯真は思わず指を差した。振り向くと、眩しそうに手をかざした唯人が灯真を見下ろしている。
「あそこ! オーナー、店が見えますよ!」
「ん? ああ……そうだな」
「それにしても、こう見ると……本当に甘夏ばっかりですね」
夏の日差しをさんさんと浴びる甘夏畑を見て、灯真は目を細めた。まだ緑の木には、どこに実がなっているのか灯真には分からない。甘夏というくらいだから夏の果物かと思いきや、収穫は冬から春にかけてだと知ったのはここに来てからだ。
「だな」
小さく答えた唯人の手が伸びてきた、と思ったら、軽く握った拳で頬をつつかれる。
胸の中で爆発したようなむず痒さと驚きと、少しだけざらりとした関節の感触。情報を処理しきれなくなった灯真が半分口を開けたままでいると、ふっと唯人の目元が柔らかくなった——気がした。
「……だから、お前の『甘夏使えば?』っての、いい案だと思うぞ、俺は」
「へ?」
何のことを言われたか分からず、灯真は間抜けな声を上げた。先ほど引き受けたドリンクづくりの話だと思い出して、慌てて首振り人形のように頭を動かす。
「分からないこととか、迷った時とかは聞いてくれていいから。とりあえずやってみろよ」
「っ、は……はい!」
本当に、やってみていいんだ。僕が。
メニュー開発なんて経験もないし、どうやって考えればいいのか皆目見当もつかなかったけれど——
でも「どうしよう」より、「どうやろう」の方が強い。
そわそわするような、全身がくすぐったくて跳ねまわりたくなるような変な感覚に、思わず口元がにやけてしまう。それでも真顔を作ろうとして、変な風に顔が歪む。
やがて耐え切れなくなって、ふへ、と灯真の唇から笑いが漏れた。口元を隠しながら、また展望台の向こうを眺める。
濃い緑の木の葉の間を、二匹のアゲハ蝶が絡み合うように飛んでいた。
何がいけなかったのか、どうすればよかったのか、そんなことは分からない。
ただ、他人が触れてはいけないところを灯真が不用意に踏み抜いてしまったことだけは、確かだった。
即座にいとまを告げた唯人に引きずられるように五十嵐家を後にした灯真は、助手席でシートベルトを握りこんだ。
驚きと、動揺と、それから嫌悪感や不信感が混ざり合った——五十嵐夫婦の、あの視線には覚えがある。
兄が帰ってくる、と伝えた時の灯真の両親も、同じ目で灯真を見ていたから。
まだ灯真が小学生の頃だった。年の離れた兄はもう一人暮らしをしていたのだが、ある晩灯真の部屋に来て「明日帰る」と教えてくれたのだ。
まだその頃はそれが「おかしいこと」だなんて思っていなかった。だから翌朝それを母に伝えて——その直後に、兄の訃報を告げる電話が入ったのだ。バイク事故だったらしい。
その時の母が、同じ表情をしていた。
灯真のことを「気持ち悪い」「無理」と言い始めたのは、おそらくあれが決定打だっただろう。
もちろん、それだけが理由なわけではないことも知ってはいるけれども。
「……ごめん、なさい」
ようやく絞り出した灯真の言葉は、車のエンジン音にかき消されてしまいそうなほどに小さかった。
無能と言われるのは仕方ない。
邪険に扱われるのにも慣れている。
でも、他人のデリケートな部分を踏みにじる人間だとは、思われたくなかった。
唯人と五十嵐の関係性も、壊してしまったに違いない。
「み、みまっ、見間違え、ちゃって……」
何をどう見間違えたというのだろう。どっちにしろどうにかしているのは変わらない。
何回も続くカーブに揺さぶられ、頭が重くなってくる。シャツの襟元を広げ、灯真は浅い息を繰り返した。口の中に溜まってくる唾を飲み込む。
ばこん、と車のボンネットから音がした。
「お、落ち着け灯真」
「うう……」
「待て、今車停めるから」
少し走ると、不意に山道の中に駐車場が現れた。がらんとした中、隅に車を停めた唯人は窓だけ開けてエンジンを切った。
静かになった車内に、葉擦れと蝉の声が響く。日陰を通る、湿っぽく冷えた風は喉の辺りでわだかまってしまい、胸の奥まで入ってこない。
「ちょっと待ってろ」
そう言い残し、唯人が車を降りていった。
置いて行かれたのではないだろうか。自分に遂に愛想を尽かしたのではないだろうか。
反射的に不安に駆られた灯真が動けずにいると、助手席の扉が開いた。戻ってきた唯人が、ペットボトルの水を差しだしている。
「ほら、これでも飲め」
「……あ」
蓋を開けたペットボトルを、震える手に握らされた。口をつけると、体の中に冷たい水が染みわたっていくようだった。
大きく息を吸うと、今度は胸の奥まで空気が入っていく。
「……すいません、オーナー」
「謝らなくていい、俺が……もうちょっと、考えてればよかったんだ」
助手席の扉を開けたまま、唯人は車止めのブロックに腰を下ろした。緑茶のペットボトルに口をつける。
「圭なら灯真ともうまくやれるかと思ったんだけど……五年前、子供亡くしてたの……忘れてたんだ」
いや、別に忘れてたわけじゃねえんだけど、と訂正し、唯人は歯切れ悪く頭を掻いた。
「お前がそういうの見え……とにかくいいから。圭には俺から言っとくし、気にすんな」
「でも……」
「わざとじゃねえんだろ。大丈夫だって」
唯人の言葉に、うろたえていた心が静まっていく。理由も根拠もないが、唯人がそう言うなら大丈夫な気がする。
もう一口水を飲むと、灯真にも辺りを見回す余裕が出てきた。
なぜ山の中に突然駐車場が出現したのかと思ったら、どうやら展望台になっているようだ。駐車場の脇から、展望デッキへと続く木製の階段が伸びている。
「灯真、何見て……あ、展望台? 行ってみるか? 歩ける?」
「う、うん……」
唯人の言葉に頷き、灯真はシートベルトを外した。どこかふわふわしていた両足が、スニーカー越しにアスファルトを踏みしめる。
時折振り返る唯人の後を追い、ゆっくりと階段を上る。不意に木がなくなり、目の前に青空と海が広がった。
「わあ……!」
「ちょっ、おい!」
思わず柵に駆け寄る。手すりから身を乗り出した灯真のシャツの裾を、唯人が掴んだ。
「もうっ、子供じゃないんだから落ちたりしませんって」
「あ、まあ……うん」
隣の唯人に小さく文句を言い、灯真は改めて眼下に広がる景色を眺めた。
山の斜面には艶やかな葉の甘夏畑が広がり、わずかばかりの民家が並ぶ。その向こうに緑がかった宝石のような海と、入道雲の湧き上がる空が広がっている。
目を細め、道を辿る。「さんふるうつ」の赤茶色の屋根と店前の木が見えて、「あ!」と灯真は思わず指を差した。振り向くと、眩しそうに手をかざした唯人が灯真を見下ろしている。
「あそこ! オーナー、店が見えますよ!」
「ん? ああ……そうだな」
「それにしても、こう見ると……本当に甘夏ばっかりですね」
夏の日差しをさんさんと浴びる甘夏畑を見て、灯真は目を細めた。まだ緑の木には、どこに実がなっているのか灯真には分からない。甘夏というくらいだから夏の果物かと思いきや、収穫は冬から春にかけてだと知ったのはここに来てからだ。
「だな」
小さく答えた唯人の手が伸びてきた、と思ったら、軽く握った拳で頬をつつかれる。
胸の中で爆発したようなむず痒さと驚きと、少しだけざらりとした関節の感触。情報を処理しきれなくなった灯真が半分口を開けたままでいると、ふっと唯人の目元が柔らかくなった——気がした。
「……だから、お前の『甘夏使えば?』っての、いい案だと思うぞ、俺は」
「へ?」
何のことを言われたか分からず、灯真は間抜けな声を上げた。先ほど引き受けたドリンクづくりの話だと思い出して、慌てて首振り人形のように頭を動かす。
「分からないこととか、迷った時とかは聞いてくれていいから。とりあえずやってみろよ」
「っ、は……はい!」
本当に、やってみていいんだ。僕が。
メニュー開発なんて経験もないし、どうやって考えればいいのか皆目見当もつかなかったけれど——
でも「どうしよう」より、「どうやろう」の方が強い。
そわそわするような、全身がくすぐったくて跳ねまわりたくなるような変な感覚に、思わず口元がにやけてしまう。それでも真顔を作ろうとして、変な風に顔が歪む。
やがて耐え切れなくなって、ふへ、と灯真の唇から笑いが漏れた。口元を隠しながら、また展望台の向こうを眺める。
濃い緑の木の葉の間を、二匹のアゲハ蝶が絡み合うように飛んでいた。
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