とある少女の異世界奮闘記+α

輝国 飛鷹

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ラサール魔法学校入学編

第8話《邂逅》

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      *


「るんるんるん、ウィンドーがとぶ♪」

  快活な口調と調子でその自然を歩くのは、マリナーラという少女である。彼女は【ラサール魔法学校】の高校一年生。明るい性格で、『なのです』の口癖が特徴だが、そんな彼女は足をふと止めた。

  少女は無垢な瞳をある一直方向に差し向けた。

「あれ? あれは……………」
  一人の少女が、一匹のモンスターと向き合っている。いや、少女の方は驚きのあまり、体が硬直しているようにも見えた。
  モンスターが盛大な威嚇を向けた。少女はそれでもボーッと動かない。腰に剣があるのに、何故か抜こうとしない。
「もしかして……………これはヤバいかもなのです!」
  マリナーラは愛読の魔法書を開いた。


      *


『ガァァァァァァァ……………!』

「おっと……………まずいなぁ…………」

  なんだこのバケモノ!? なんでこんな近代都市に、ありがちなモンスターがいるわけ!? まさか…………父さんたちが言っていたのはこれのことだったのか…………!?
  俺はすぐさま逃亡を試みた。だが、足が固まって動かない。いや、動けよ! このままだとイヤな結末しか見えないよ!?
  だが俺は、足がすくむとはまさにこの事を指すんだなぁと場違いにも納得してしまうのだった。前に、人は恐怖を目の前にすると、意思とは関係なしの行動を起こすものだと、どこかの番組が言っていたのを思い出した。俺はその時意味が分からんと切り捨てた。だが今なら分かる。

  護身用の刀をもらったのにも関わらず、のだ。

  獣はキバをちらつかせ、鋭い爪をとがらせた。
  やはりこいつは肉食で、俺を襲ってこのナイスバディを喰うつもりらしい。
  モンスターの瞳が、…………変わった。
  体を浮かせ、こちらに飛び込んでくる。ギラリとしたキバと爪とをこちらに向けて。

  情けない話だが…………そこで俺の金縛りはようやく解けた。

「……………!」
  俺は刀をようやくスパッとさやから抜き取った。青い色素に塗られた珍しい模造刀だった。俺はそれを構える。剣術はそれほど経験がない。というか、模造刀こんなので勝てるのか? このモンスターに…………!?
  飛び込んできた敵に向けて、俺はなまくら刀を振るった。
  しかし、
  ガキンっとモンスターは爪でそれを防いだ。
「なっ…………!?」
  こいつ知性があるのか…………!? と、そこへモンスターの開いた口が、容赦なく俺をパクリと頂こうとする。
  それを間一髪で避け、俺は一旦距離をとった。
「はぁ……………はぁ……………あっぶねー…………!」
『ガルルル…………………』
  だが災難を振り払えた訳じゃない。やつの眼中にはまだ俺がいる。その瞳を潰さない限り、永遠と俺を追いかけまわすだろう。
  奴には知性がある。
  非常に厄介なモンスターがいたものだ。
『ガルル………ガァァァァァァァ!』
「くっ……………!」
  第2撃だ。再びその巨体を宙に浮かせ、こちらに飛び込んでくる。
  さっきよりも高く、高くとんだ。
「オイオイ…………これじゃあ防げねぇだろ…………!?」
  やつは高く飛ぶことで、刀慣れのしていない俺をいっきに踏み潰す作戦に出たようだ。これじゃあ防いだところでその巨体に潰される…………!

  ――――しかし、そんな窮地のなか、俺は見知らぬ女の子の声を小耳に挟んだのだ。

「『579、スリーピング!』」

  するとどうだろうか。このナイスバディを狙う野獣は、急に可愛らしく寝ぼけた顔になるではないか。
『キュ…………キュゥゥゥ……………』
  しかも威嚇までなんか可愛くなったぞ。見かけとのギャップをまじまじと見せつけられたが、これは絶好のチャンスだ…………!
「これなら…………いける!」
  ザシュ。
  爽快な切り落としだった。模造刀はつっかえることなくモンスターの肉を切り裂き、その肉体を分断した。
  質量の半減した二つの巨体が、俺の横にドシン、ドシンと落ちた。 
  俺はなんとか生き残った。
「は……………はぁ…………な、なんとか勝てた……………」
  急に足から力が抜け、その場でひょろひょろと尻餅をついた。
「はぁ…………まさか転校初日からこんな災難に見舞われるなんて…………」
  異世界に胸を馳せた俺だったが、平穏なもとの世界が無性に恋しくなった。俺はふらついた意識のなか、草原に映った自分の…………福本アヤノンの影をしばらく石のように無情で見つめていた。すると、前方から足音が小さく、小さく…………やってくる。近くなればなるほどその音は遠退いていく。
  俺の他に、、影が映りこんだ。
「あの…………大丈夫なのですか?」
  少女の声。かわいらしい声だ。もしかするとさっきの…………?
  顔をあげてその顔を是非とも見てみたいが、その前に視界が段々とぼやけてきて、

  俺は気を失った。

  


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