1 / 27
プロローグ
プロローグ
しおりを挟む人よ、戦え。生に縋りつき、他を制圧し蹂躙せよ。
他世界で人は戦争を好む存在だと認識した神々は、新たに創世した世界「トワイライト」において、戦うことを半強制的に運命づけることにした。
至るところに魔物が棲息するダンジョンを撒き、その最奥に魔物を生み出す闇水晶を砕かなければ、魔物は増え続けて町を襲う。
一度闇水晶を砕かれても、一年と経たずに闇水晶は顕れる――。
魔物と戦うことを義務付けられた人々は、そんな中でも戦う術を持たない人々を守る為に、そして自分の名誉の為に冒険者となるしかなかった。
しかし全ての者が冒険者としてすぐに旅立てる訳ではなく、先ずは冒険者となる為の学舎に通うとになっている。
冒険者育成学園は、この世界「トワイライト」にある十二の国に必ず一校は存在する機関だ。
町を囲う外壁を一歩外に出れば、そこは魔物が蔓延る絶望の地。戦う力のない者――戦闘力が著しく低い者や幼い子供、高齢者など――にとっては、死に直結するところであり、やむにやまれず町を出る際には、必ず冒険者を雇って護衛としなければならなかった。
魔物が蔓延るには理由がある。地下迷宮や塔、或いは城のような形を模して各地に出現しているダンジョンの、最奥にある闇水晶によって次々と生み出されていくからである。
その多くはダンジョンの中で過ごし、共食いによって成長していくが、人の味を覚えたものや他の魔物から逃げる為に外に出るものによって、埋め尽くされていくのだった。
ある程度数が減るのは、そこでまた共食いが行われるのと、魔物の肉が人々にとって大切な栄養源となることで、狩られていく為である。
どちらも一方的に蹂躙される側ではなく、人々と魔物はお互いに喰うものと喰われるものという形で成り立っていた。
冒険者と呼ばれるのは主にダンジョンを巡る者たちを示す。
外で魔物の肉を調達する者たちは狩人と呼ばれるが、それでも冒険者と同じだけの実力が必要とされる。
故に、この世界の子供たちは十歳から十二歳までの間に冒険者育成学園への入学が義務付けられ、それから五年間鍛えられた上での卒業試験を受け、合格した者のみが冒険者、或いは狩人として認められるのである。
不合格の者は留年して翌年に再試験が行われるが、これにも不合格の場合、狩人の荷物持ちや町の警備隊といった役職に就く。
その役職について差別意識はないが、当人たちが己の力不足を嘆き、卑屈になる者は少なくない。また、性質の悪い狩人の荷物持ちになった場合、最悪魔物から逃げる際の囮として使われるといったことがあった為、両者間の溝は深まるばかりだった。
「いいよ。分かっていたさ」
とぼとぼと肩を落として歩きながら、赤髪をサイドテールにした碧眼の少女が呟く。
只今は猫背になっているが、普段は惜し気もなくスラリとした美脚を晒し、颯爽と歩く様はその可愛らしい顔立ちを含めて人目を惹くものであった。
しかし現在は雨雲でも引き連れているかのような、どんよりとした雰囲気を纏っている。
この春にめでたく冒険者となった15歳(じきに16歳になる)の少女ルナは、またもや一ヶ月も経たずに、迎え入れられていたパーティーから外されてしまったのだった。
またもや。というのは、これが初めてではないことを示す。冒険者となってからはまだ三回目だが、こんなことは学園に通っていた時にも何度もあったことだった。楽しくパーティー仲間とダンジョンに潜れていたのは、三年生になるまでだった。
理由なら分かっている。しかしそれは自分ではどうにもならないことだった。
自分の中にある誰かの記憶。誰かの意思。
魔物と戦っているうちに、その誰かの意識に振り回され、暴走する自分。
はじめは頼もしいと言ってくれる仲間も、次第に自分たちが成長出来なくなることを理由に、もう一緒のパーティーではいられないからと、出ていくことを求められる。穏便に片付けようとするのは、それだけ暴走したルナが恐ろしかったからだろう。
「いいもん。一人で出来るもん」
そう呟きながらも、ルナの背中は更に丸くなっていくのだった。
0
あなたにおすすめの小説
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【コミカライズ決定】愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
【コミカライズ決定の情報が解禁されました】
※レーベル名、漫画家様はのちほどお知らせいたします。
※配信後は引き下げとなりますので、ご注意くださいませ。
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
転生後はゆっくりと
衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。
日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。
そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。
でも、リリは悲観しない。
前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。
目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。
全25話(予定)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる