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昔々あるところに、人間と吸血鬼が共存していた世界がありました。
共存と言っても決して仲は良くなく、いつも争いが絶えませんでした。
いつしか力を持つ人間達が集いその吸血鬼とやらを「裏世界」……通称「魔界」へと閉じ込めてしまったのです。
「……?……ああ、もうこんな時間か。」
どうやら今は亡き父に読んでもらった本の読み聞かせの夢を見ていたらしく、気がついたらあたりは真っ暗になっておりゆっくりと棺の扉を開ける。
人間……物語はどうやら少し改変されたものがあるものの、どうやら実話らしい。更にはもう何百年という時を生きている自分さえその存在は幻のように感じるくらいには随分と昔の話だ。何千年生きていた父がギリギリ知らないくらいではある。
ごく稀にあちらの世界から人間が何かの歪みでこちらにやってくるらしいが、我ら魔族の格好の獲物になって殺されてしまうからこんな伝説の生き物のような扱いになっているのだろう。
「さて、今夜も行くとしよう。」
人間がいなくなった世界で魔族には序列が出来た。僕の一族は名を知らないものはいないほどの上の存在。
だからと言って下剋上が出来てしまう無秩序の世界で命知らずは多数現れる。今から向かうのはその駆除と言ったところか。
しかし僕はあまり面倒なことをしたくはないし、むしろ本を読んだりするのが好きだ。先祖は野蛮らしいが、正直僕にそんな意欲はない。平和に生涯を終えればいいかなと思っている。
「っ!」
その時だった。突然何か生き物でない自然の気配を感じ、慌てて立派な羽を広げ部屋から飛び出す。
今まで雑魚ばかりが集まっていたので、久しぶりの強い力に起きたての自分の目が覚めた。
敷地内の発生源であろう所にたどり着くと、もう変な気配は感じず、ただ一つ弱々しい生き物が僕を見て恐怖に怯えるように縮こまっていた。
「………人間?」
しっかり二足歩行で魔物のようでもなく、だからと言って魔族特有のとんがった耳もなく、歯も鋭くなく、魔力すら持っていない。特徴は完全に一致していた。
幻と思っていたあの人間と会える…そんなことがあるのだろうか。滅多に夢をみない僕が父の読み聞かせの夢を見たのは、この時のためだったのではないかと期待で歪に口角があがる。
「ひっ、あの、」
「……どこから来た?」
「ッお、俺にもわかんなくて……」
「そうか。…とりあえずここは危ないからついてくるといい。」
「えっ」
「安心しろ。僕に人間の血を吸う趣味はない。」
「血を吸う………?」
僕は好奇心旺盛な方らしい。何百年生きていても所詮は人間でいう青年くらいだ。昔から人間という生き物がどんなものかを見てみたかったという気まぐれである。
共存と言っても決して仲は良くなく、いつも争いが絶えませんでした。
いつしか力を持つ人間達が集いその吸血鬼とやらを「裏世界」……通称「魔界」へと閉じ込めてしまったのです。
「……?……ああ、もうこんな時間か。」
どうやら今は亡き父に読んでもらった本の読み聞かせの夢を見ていたらしく、気がついたらあたりは真っ暗になっておりゆっくりと棺の扉を開ける。
人間……物語はどうやら少し改変されたものがあるものの、どうやら実話らしい。更にはもう何百年という時を生きている自分さえその存在は幻のように感じるくらいには随分と昔の話だ。何千年生きていた父がギリギリ知らないくらいではある。
ごく稀にあちらの世界から人間が何かの歪みでこちらにやってくるらしいが、我ら魔族の格好の獲物になって殺されてしまうからこんな伝説の生き物のような扱いになっているのだろう。
「さて、今夜も行くとしよう。」
人間がいなくなった世界で魔族には序列が出来た。僕の一族は名を知らないものはいないほどの上の存在。
だからと言って下剋上が出来てしまう無秩序の世界で命知らずは多数現れる。今から向かうのはその駆除と言ったところか。
しかし僕はあまり面倒なことをしたくはないし、むしろ本を読んだりするのが好きだ。先祖は野蛮らしいが、正直僕にそんな意欲はない。平和に生涯を終えればいいかなと思っている。
「っ!」
その時だった。突然何か生き物でない自然の気配を感じ、慌てて立派な羽を広げ部屋から飛び出す。
今まで雑魚ばかりが集まっていたので、久しぶりの強い力に起きたての自分の目が覚めた。
敷地内の発生源であろう所にたどり着くと、もう変な気配は感じず、ただ一つ弱々しい生き物が僕を見て恐怖に怯えるように縮こまっていた。
「………人間?」
しっかり二足歩行で魔物のようでもなく、だからと言って魔族特有のとんがった耳もなく、歯も鋭くなく、魔力すら持っていない。特徴は完全に一致していた。
幻と思っていたあの人間と会える…そんなことがあるのだろうか。滅多に夢をみない僕が父の読み聞かせの夢を見たのは、この時のためだったのではないかと期待で歪に口角があがる。
「ひっ、あの、」
「……どこから来た?」
「ッお、俺にもわかんなくて……」
「そうか。…とりあえずここは危ないからついてくるといい。」
「えっ」
「安心しろ。僕に人間の血を吸う趣味はない。」
「血を吸う………?」
僕は好奇心旺盛な方らしい。何百年生きていても所詮は人間でいう青年くらいだ。昔から人間という生き物がどんなものかを見てみたかったという気まぐれである。
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