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くもり
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しおりを挟む「おかしいな…」
廊下から教室に消えていく青木智の背中を見つめながら綾野統万は小さく呟いた。
数日前に、青木が統万の事を好きなのだと確信してすぐ、積極的に話しかけたり、一人でいる所に近づいたりしていた統万だったが、青木は顔を赤らめながらも統万の事を避けたがっているのを感じていた。
先程も青木が1人でトイレに行ったのを後ろから着いていき、『青木お疲れー!』と声を掛けたが、『えっ…あ、うん』とだけ返事をすると、それ以上の会話を避けるようにサッと用を済ませ教室に戻ってしまった。
そのうえ最近目が合わない。
話しかけても目を合わせないように別の空間を見ているようだ。
流石の統万も、青木が統万に惚れてると言うのは勘違いだったかと思い始めていた。
(でももう俺の方が智くん好きだもん…!俺イケメンだし、落とせないかなーーー?!)
1人で悶々と考えを巡らせていると、ふと姉の顔が浮かんだ。
統万の2つ上の姉はミスキャンパスに選ばれる程の美貌だ。面倒くさがりの統万とは違ってモデル事務所にも所属しており、そこそこ活躍しているようで、街を歩けば若い男女から頻繁に声をかけられている。
一見してキラキラ一軍女子の姉だが、家では鼻息を荒くし、時にはヨダレを垂らしながらbl漫画を読み漁る腐女子であることを統万は知っていた。
(そうだよ、姉ちゃんに相談すればいじゃん!)
統万は名案を思い浮かべては顔をニヤつかせ、学校の終わりを待っていた。
「ただいま~。姉ちゃんいる~??」
統万は学校が終わるやいなや、友人達の誘いを全て断り急いで帰宅した。
帰宅と同時にウキウキで姉の部屋に向かったが、どうやら姉は留守のようだ。
残念に思いつつ、何かbl漫画でも読んでみるか、と姉の本棚に向かって歩みを進める統万の目に、姉の机の上に出しっぱなしにされたbl漫画が入った。
「えっ何かこれ…」
統万はbl漫画を手に取って表紙をまじまじと見つめる。
「めちゃくちゃ俺に似てない?!」
表紙の男は整った顔に明るめの茶髪、切れ長の瞳をしている。もちろんデザインは違うが制服を着崩した着方も似ている。
それだけなら、まぁ無くはない特徴なのかもしれないが、左目の泣きぼくろと口元右側にホクロがあるのも統万と同じだった。
『闇BLアンソロジー』と記されたタイトルの横には、~殴って嬲って詰ってでも俺のものにしたい~という物騒な文句が書かれている。
統万は文言に引きつつも、漫画風に描かれた自身の似顔絵のような表紙に惹かれページを捲った。
「こ、こ、これだーーーーー!!!」
統万は最初に収録されていた話を読み終わると雄叫びをあげた。
話を簡単にまとめると、クラス中からいじめを受けている受けが、クラスのリーダー的な攻めに助けられ、攻めの手引きによりイジメも無くなり、受けは優しくて顔もいい攻めに惚れ身も心も結ばれるが、実は全ては攻めが計画した事だった!と匂わせて終わるストーリーだ。
常人ならば、決してこの話を参考に思い人を落とそうとはならないが、統万は顔がいいだけの馬鹿だったのだ。
(これなら俺にもできそうっ)
ルンルンとした気持ちのままの勢いで次のページを捲る。
「?!!!!」
統万は、心臓に鉄パイプをぶっ刺されたかと思う程ドキリとした。
受けと思われる男の絵が、似てたのだ。
青木智に。
統万は夢中でページを捲った。
内容をまとめると、受けに振られた攻めが愛される事を諦め、受けを強姦したり暴行したりして支配すると言う話だ。
(これは参考にできないな…。智くんをボコすとか無理無理!)
と思いつつ本を閉じるも、青木に似た受けが陵辱されているシーンに興奮してしまった統万は、オナニーをする為に自室へ戻って行った。
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