ゆるゾン

二コ・タケナカ

文字の大きさ
94 / 136

87

しおりを挟む
87

「完璧でないと言うと?」
「改定されたのは2000年だからね。それ以前のいわゆるレトロゲームと呼ばれる部類は国会図書館に収められていないんだ」

ボリボリ、ボリボリ、
と、お菓子をかみ砕く音が聞こえてくる。

アタシははなっちを指さした!こちらが熱くゲームを語っているというのに、すました顔でお菓子を頬張りやがって!
「ハイッ!花代さんに問題です!ジャジャン!2000年に発売された家庭用ゲーム機といえば?」
「プ○イステーション2」あっさり答えたはなっち。
「凄いわね⁉花。何で知ってるの」
「月光ちゃんがいつもこんなクイズ出してくるから覚えちゃったよ」
「では、第2問!ジャジャン!そのプ○ステ2の発売日は?」
「平成12年3月4日」
「正解!さすがアタシの相棒」
「なんで日にちまで覚えてるのよ」ふーみんが呆れている。
アタシは「オホン」と咳払いを1つして応えた。
「プ○ステ2は数字の並びが丁度いい日を狙って発売されたんだ。平成12年3月4日だと1234と数字が並ぶでしょ?2000年というのもキリが良くて覚えやすいし、ゲームオタクの間では常識だよ」
「ハイ、ハイ、」

アタシは話を戻した。
「レトロゲームと言ってもファ○コンだけじゃないよ?2000年以前、90年代だと初代プ○ステがゲームの新時代を切り開き、ソ○ーが勢いに乗っていた。それを追いかけていたのはセ○サターンだったし、SE○Aの社運をかけて専務みずから広告塔となり宣伝した次世代機ド○ームキャストが登場したのも90年代。任○堂はというとスーパーファ○コンは好調だったから油断したのかもしれない。快進撃を続けるプ○ステに奪われた首位の座を奪還すべくNIN○ENDO64を投入するも、売り上げは伸びず不遇の時代を迎えていたよ。90年代は各メーカーがしのぎを削るゲーム戦国時代だった。そのゲーム史を語る上でも重要な年代の資料、ゲームソフトが国会図書館には無いんだ。ごっそり抜け落ちている」

「それわぁ、大変ですねぇ」かいちょが気の抜けるような声で言った。彼女にとってはどのメーカーもなじみがないのだろう。
「大変なんだよ!初代プ○ステで販売されたゲームタイトルの数はおよそ3200タイトル。セ○サターンだとおよそ1100タイトル。NIN○ENDO64だとおおよそ400タイトルもあるんだ!それだけじゃないファ○コンにスー○ァミ、PCエ○ジン、メガド○イブ、ネオ○オ、それに携帯ゲームも忘れちゃいけない。ゲーム○ーイでしょ?ゲーム○アでしょ?ネオ○オポケットにワ○ダースワン、」
「ハイハイ。誰も付いていけてないわよ」
みんなの点になった目がアタシに向いていた。
「オホン!・・・・・・それら貴重なゲームの数々が散逸してしまっているんだ。文化財を後世に残すという役割を持っている国会図書館に保存されていないなんて由々しき事態だよ。販売したメーカーですら保存してあるのか怪しい。更には、そのお宝は日本から海外へ流出しようとしている!」
指も差していないのにチカ丸の顔が横へ向いた。

「どうにかならないのでしょうか?」
「どうにもならない訳じゃない。無いものは寄贈すればいいんだから」
「持っている人から譲ってもらうんですね」
「でも、アンタみたいなオタクにとっては貴重なお宝なんでしょ?簡単に譲ってはくれないんじゃない?」
「ふむ。」
アタシは腕を組み、うなずいてからもったいつけて口を開いた。
「ファ○コンが発売されたのは1983年。その頃、夢中になって遊んでいた少年も今は50代だよ。少年は大人になりゲームを卒業していく人も大勢いたはずさ。就職・結婚・出産、人生の節目でゲームから離れる人は大勢いる。それでもゲームを手放さず、続けてきた人は真のオタクと呼んでいいだろう。けど!どうしても手放さなければいけない人生の節目は必ず訪れる。それは、死さ。」
「乗ってきたわね。」
「うん。ノリノリだね。」
(人が気持ちよく語っているのに茶々を入れないでくれ。そこの二人!)

「オタクの語源はコミケに集まっていた人達が相手に尋ねる時の口調、『お宅は』から来ているそうだよ。その口調を揶揄して”オタク”という言葉が初めて登場したのは1983年だと言われている。丁度ファミコンが発売された年さ。初めてオタクと呼ばれた人達とゲームはほぼ、同年代なんだ。その初期オタク達が今、直面しているのが終活なんだよ。あ、シュウカツは就職活動の略じゃないよ。人生の終わりに向けた身辺整理の方だから」
「ハイハイ、」ふーみんが”そういう細かい所はいいから”みたいに手を振って話の続きを促してくる。
「今、オタク達は初めての経験に直面している。これまで一生懸命集めてきたコレクションをどうするのか?今までは好きな物を欲望のままに収集しているだけで良かった。それが喜びだったし、人生の支えだった。けど、自分の残り時間を考えた時、このままでいいのだろうか?と、悩んでいる」
「いや、もっと早くに気付きなさいよ!」
「ごもっともです。けど、何かに夢中になれるなんて幸せな事じゃないか。どんなジャンルのオタクであろうとね」
「そういった終活を考えている人から寄贈してもらえたらいいですね」
「そう!・・・・・・そうなんだけど、これには一つ障害があってね、」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

美人生徒会長は、俺の料理の虜です!~二人きりで過ごす美味しい時間~

root-M
青春
高校一年生の三ツ瀬豪は、入学早々ぼっちになってしまい、昼休みは空き教室で一人寂しく弁当を食べる日々を過ごしていた。 そんなある日、豪の前に目を見張るほどの美人生徒が現れる。彼女は、生徒会長の巴あきら。豪のぼっちを察したあきらは、「一緒に昼食を食べよう」と豪を生徒会室へ誘う。 すると、あきらは豪の手作り弁当に強い興味を示し、卵焼きを食べたことで豪の料理にハマってしまう。一方の豪も、自分の料理を絶賛してもらえたことが嬉しくて仕方ない。 それから二人は、毎日生徒会室でお昼ご飯を食べながら、互いのことを語り合い、ゆっくり親交を深めていく。家庭の味に飢えているあきらは、豪の作るおかずを実に幸せそうに食べてくれるのだった。 やがて、あきらの要求はどんどん過激(?)になっていく。「わたしにもお弁当を作って欲しい」「お弁当以外の料理も食べてみたい」「ゴウくんのおうちに行ってもいい?」 美人生徒会長の頼み、断れるわけがない! でも、この生徒会、なにかちょっとおかしいような……。 ※時代設定は2018年頃。お米も卵も今よりずっと安価です。 ※他のサイトにも投稿しています。 イラスト:siroma様

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

みんなの女神サマは最強ヤンキーに甘く壊される

けるたん
青春
「ほんと胸がニセモノで良かったな。貧乳バンザイ!」 「離して洋子! じゃなきゃあのバカの頭をかち割れないっ!」 「お、落ちついてメイちゃんっ!? そんなバットで殴ったら死んじゃう!? オオカミくんが死んじゃうよ!?」 県立森実高校には2人の美の「女神」がいる。 頭脳明晰、容姿端麗、誰に対しても優しい聖女のような性格に、誰もが憧れる生徒会長と、天は二物を与えずという言葉に真正面から喧嘩を売って完膚なきまでに完勝している完全無敵の双子姉妹。 その名も『古羊姉妹』 本来であれば彼女の視界にすら入らないはずの少年Bである大神士狼のようなロマンティックゲス野郎とは、縁もゆかりもない女の子のはずだった。 ――士狼が彼女たちを不審者から助ける、その日までは。 そして『その日』は突然やってきた。 ある日、夜遊びで帰りが遅くなった士狼が急いで家へ帰ろうとすると、古羊姉妹がナイフを持った不審者に襲われている場面に遭遇したのだ。 助け出そうと駆け出すも、古羊姉妹の妹君である『古羊洋子』は助けることに成功したが、姉君であり『古羊芽衣』は不審者に胸元をザックリ斬りつけられてしまう。 何とか不審者を撃退し、急いで応急処置をしようと士狼は芽衣の身体を抱き上げた……その時だった! ――彼女の胸元から冗談みたいにバカデカい胸パッドが転げ落ちたのは。 そう、彼女は嘘で塗り固められた虚乳(きょにゅう)の持ち主だったのだ! 意識を取り戻した芽衣(Aカップ)は【乙女の秘密】を知られたことに発狂し、士狼を亡き者にするべく、その場で士狼に襲い掛かる。 士狼は洋子の協力もあり、何とか逃げることには成功するが翌日、芽衣の策略にハマり生徒会に強制入部させられる事に。 こうして古羊芽衣の無理難題を解決する大神士狼の受難の日々が始まった。 が、この時の古羊姉妹はまだ知らなかったのだ。 彼の蜂蜜のように甘い優しさが自分たち姉妹をどんどん狂わせていくことに。 ※【カクヨム】にて編掲載中。【ネオページ】にて序盤のみお試し掲載中。【Nolaノベル】【Tales】にて完全版を公開中。 イラスト担当:さんさん

処理中です...