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アイラが何か思い出したように声を上げます。
「そうだ!私、考えてたんですよ。魚が獲れないかなって」
「ああ、今ならルイス様が風を防いでくださっているから、釣りも出来るんじゃない?」
「釣りじゃなく、電気で捕る方法です」
彼女は地面に転がる針金を指さしました。
「その針金、少し貰ってもいいですか?」
オリバーに許可を取ったアイラは針金を長く伸ばしたものを2本用意すると、それぞれ両手に持って波打ちぎわに立ちました。その先端を海の中へつけます。
「危ないから近づかないでくださいね……んっ!」
どうやら海中に電気を流しているようです。見ているうちにも、海面に魚が次々と浮いてきたではありませんか。
「凄い!凄い!」
エミリーが指をクイっと振り上げました。海から一匹の大きな魚が引き上げられます。
「何という魚かしら?」
「タラでしょうか?上手くいきましたね」
「丁度いいわ。今日はご馳走を作りましょう!アイラさんも手伝って」
タラをアイラに任せたエミリーはそのアイラの隣に立ち、彼女の腰に手を回すとグッと引き寄せました。
「え?ちょ!」
戸惑うアイラの事などお構いなしに、エミリーの魔法が発動します。
「フライ!」
「うわーーーーーーーぁ!」
アイラの悲鳴を残して二人は崖をひとっ飛びに飛んで行ってしまいました。
「作業の途中だというのに……しょうがない。メイベール、私達でやろうか」
「はい。」
メイベールがニッコリ笑って応えます。
焼き上がったセメントに水を注ぎ、地面を掘り返して砂や砂利も加えていきます。よく練り上げればコンクリートの準備は終わりです。
練り上げているうちにオリバーが持ってきていたツルハシで階段の手直しをしてくれました。そこにルイスがコンクリを平らに伸ばしながら塗り込んでいきます。
ルイスは作業している間もメイベールに「寒くはないか?」「魔法を使い過ぎて、疲れていないか?」など、声をかけてくれます。その気遣いがメイベールにとって堪らなく嬉しいのでした。脈は速くなり、体は熱を帯びて寒さなど感じていません。けれど朝日にとって心境は複雑です。お嬢様の気持ちは知っていても、この恋はどうしようも出来ないのですから。
あらかた作業も済んだところで、頭上から声が降ってきました。
「うわーーーーーーーぁ!」
エミリーとアイラがコートをひるがえし、浜に降り立ちます。
「エミリーさん!魔法も無しに飛び降りないでください!」
「魔力放出すれば大丈夫だったでしょ?アハハ!」
「やれやれ、キミ達がいない間にもうほとんど作業は済んでしまったよ」
ルイスが呆れています。
「丁度良かったわ。お昼ご飯が出来たから呼びに来たのよ」
そう言ったエミリーはアイラに針金を持たせています。
「また魚を獲るのですか?」
「ええ、今度は夕飯の分ね」
先ほど水面に浮いていた魚たちは感電していただけなので、気が付くと水中へと逃げていってしまっていました。
そこへまたアイラが電流を流し、浮いてきた大きなタラを引き上げます。すると息つく間もなく再びフライの魔法で二人は崖の上に飛んで行ってしまいました。
「早く来てねー!」
崖の上からエミリーが手を振り呼びかけます。
「やれやれ、本当にせわしないな」
作業と片づけを済ませ、オリバーが頷きます。朝日は聞きました。
「そう言えば今更ですけど、どうやって上に登りましょうか?まだコンクリートを塗ったばかりですわ」
「私が風魔法で運んであげるから大丈夫だよ」
オリバーの体がふわりと浮かび上がり、崖の上へと運ばれていきます。
「さあ、私達も帰ろうか」
メイベールの体がふわりと浮かび上がります。
「え?……あ、」
フワフワと漂っていた彼女の体をルイスが抱っこしました。
「しっかり掴まって。いくよ?……フライ!」
メイベールは彼の横顔を間近に見つめつつ、まさしく天に昇る様な気分でうっとりしています。朝日は自分もフライの魔法が使えると余計な事を言いかけ、言葉を飲み込みました。
(これくらいは、いいか)
「そうだ!私、考えてたんですよ。魚が獲れないかなって」
「ああ、今ならルイス様が風を防いでくださっているから、釣りも出来るんじゃない?」
「釣りじゃなく、電気で捕る方法です」
彼女は地面に転がる針金を指さしました。
「その針金、少し貰ってもいいですか?」
オリバーに許可を取ったアイラは針金を長く伸ばしたものを2本用意すると、それぞれ両手に持って波打ちぎわに立ちました。その先端を海の中へつけます。
「危ないから近づかないでくださいね……んっ!」
どうやら海中に電気を流しているようです。見ているうちにも、海面に魚が次々と浮いてきたではありませんか。
「凄い!凄い!」
エミリーが指をクイっと振り上げました。海から一匹の大きな魚が引き上げられます。
「何という魚かしら?」
「タラでしょうか?上手くいきましたね」
「丁度いいわ。今日はご馳走を作りましょう!アイラさんも手伝って」
タラをアイラに任せたエミリーはそのアイラの隣に立ち、彼女の腰に手を回すとグッと引き寄せました。
「え?ちょ!」
戸惑うアイラの事などお構いなしに、エミリーの魔法が発動します。
「フライ!」
「うわーーーーーーーぁ!」
アイラの悲鳴を残して二人は崖をひとっ飛びに飛んで行ってしまいました。
「作業の途中だというのに……しょうがない。メイベール、私達でやろうか」
「はい。」
メイベールがニッコリ笑って応えます。
焼き上がったセメントに水を注ぎ、地面を掘り返して砂や砂利も加えていきます。よく練り上げればコンクリートの準備は終わりです。
練り上げているうちにオリバーが持ってきていたツルハシで階段の手直しをしてくれました。そこにルイスがコンクリを平らに伸ばしながら塗り込んでいきます。
ルイスは作業している間もメイベールに「寒くはないか?」「魔法を使い過ぎて、疲れていないか?」など、声をかけてくれます。その気遣いがメイベールにとって堪らなく嬉しいのでした。脈は速くなり、体は熱を帯びて寒さなど感じていません。けれど朝日にとって心境は複雑です。お嬢様の気持ちは知っていても、この恋はどうしようも出来ないのですから。
あらかた作業も済んだところで、頭上から声が降ってきました。
「うわーーーーーーーぁ!」
エミリーとアイラがコートをひるがえし、浜に降り立ちます。
「エミリーさん!魔法も無しに飛び降りないでください!」
「魔力放出すれば大丈夫だったでしょ?アハハ!」
「やれやれ、キミ達がいない間にもうほとんど作業は済んでしまったよ」
ルイスが呆れています。
「丁度良かったわ。お昼ご飯が出来たから呼びに来たのよ」
そう言ったエミリーはアイラに針金を持たせています。
「また魚を獲るのですか?」
「ええ、今度は夕飯の分ね」
先ほど水面に浮いていた魚たちは感電していただけなので、気が付くと水中へと逃げていってしまっていました。
そこへまたアイラが電流を流し、浮いてきた大きなタラを引き上げます。すると息つく間もなく再びフライの魔法で二人は崖の上に飛んで行ってしまいました。
「早く来てねー!」
崖の上からエミリーが手を振り呼びかけます。
「やれやれ、本当にせわしないな」
作業と片づけを済ませ、オリバーが頷きます。朝日は聞きました。
「そう言えば今更ですけど、どうやって上に登りましょうか?まだコンクリートを塗ったばかりですわ」
「私が風魔法で運んであげるから大丈夫だよ」
オリバーの体がふわりと浮かび上がり、崖の上へと運ばれていきます。
「さあ、私達も帰ろうか」
メイベールの体がふわりと浮かび上がります。
「え?……あ、」
フワフワと漂っていた彼女の体をルイスが抱っこしました。
「しっかり掴まって。いくよ?……フライ!」
メイベールは彼の横顔を間近に見つめつつ、まさしく天に昇る様な気分でうっとりしています。朝日は自分もフライの魔法が使えると余計な事を言いかけ、言葉を飲み込みました。
(これくらいは、いいか)
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