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グランダの横暴に苦笑いしていたアイラが、思い出したようにキッチンから何か持ってきました。
「揚げ物ばかりだと重いかと思って用意したんです。良かったらこれも、」
ボウルに入れられていたのは、ピーラーでリボン状に薄くスライスされた人参と大根です。それを食べ終えたローストポテトのトレイに入れました。塩辛いオリーブオイルと酢でもってマリネしていきます。
気の利いた一品にさっそく手を伸ばした朝日。リボン状になっているのでフォークでクルクルと巻き取りやすく、立ったままでも食べやすいよう工夫されています。
「アイラさんってホント料理が上手ね」
「いえ、そんな事はありませんよ」
グランダが鼻で笑います。
「ニンジンを生で食べるなんて、アンタ達はウサギかい。野菜は茹でて食うもんだよ」
皆が苦笑いしている所へ今度はオリバーがカッティングボードに料理を乗せて運んできました。並べられているのは薄くスライスされた肉類と数種類のチーズ。明らかにお酒のおつまみ盛り合わせです。
彼が1つの肉を指さし、メイベールに言います。
「食べてみろ。ウサギの燻製だ」
「あぁ、先日の」
ウサギのシチューが美味しかったので、もう抵抗の無くなっていた朝日は勧められた肉を口にしました。スモークされているので風味は芳醇で、おそらく塩のみで味付けされているものの、噛むほどにウサギの旨味が肉から染み出してきます。
朝日が肉を噛み続けながら頷くと、オリバーも満足気に頷き返しました。
グランダが言います。
「これはサイダーが欲しくなるね」
オリバーがパントリーから瓶を持ってきました。コルクの蓋がポン!と音を立てて開けられ、グラスに黄金色の液体がトクトクと注がれます。
それは自家製のお酒です。秋に庭で収穫したリンゴを絞り、発酵させて作られたシードルと呼ばれるお酒で、リンゴの甘い香りと発酵で発生する炭酸ガスがシュワシュワと口の中で弾けるスッキリした飲み口が特徴です。グランダはコレをサイダーと呼んでいるのでした。
目ざとく見ていたエミリーが声を上げます。
「わたくしも飲みたいわ!」
すぐさまルイスが止めます。
「エミリー、キミはお酒を飲まない方がいい」
「なんでーぇ」
妹が抗議の視線を向けました。聞き返された兄の方が「なぜって⁉」と大きなジェスチャーで驚いてみせます。
その様子を見ていたグランダがやれやれと言って口を挟みました。
「今日くらい構わないだろう」
「いいんですか⁉お婆様?」
「ダメだ、ダメだと言ってたら、そのうち隠れて飲み始めないとも限らないからねぇ。そっちの方がタチが悪い。まだ目の前で酔っ払ってくれた方がマシさ」
「流石お婆様!話が分かるわ」
エミリーがグラスを嬉々として差し出すと、オリバーは戸惑いつつもお酒を注ぎました。
ルイスが諦めた様に首を振って、メイベールとアイラに言います。
「この家が吹き飛ばなければいいが……二人とも気を付けてくれ」
「揚げ物ばかりだと重いかと思って用意したんです。良かったらこれも、」
ボウルに入れられていたのは、ピーラーでリボン状に薄くスライスされた人参と大根です。それを食べ終えたローストポテトのトレイに入れました。塩辛いオリーブオイルと酢でもってマリネしていきます。
気の利いた一品にさっそく手を伸ばした朝日。リボン状になっているのでフォークでクルクルと巻き取りやすく、立ったままでも食べやすいよう工夫されています。
「アイラさんってホント料理が上手ね」
「いえ、そんな事はありませんよ」
グランダが鼻で笑います。
「ニンジンを生で食べるなんて、アンタ達はウサギかい。野菜は茹でて食うもんだよ」
皆が苦笑いしている所へ今度はオリバーがカッティングボードに料理を乗せて運んできました。並べられているのは薄くスライスされた肉類と数種類のチーズ。明らかにお酒のおつまみ盛り合わせです。
彼が1つの肉を指さし、メイベールに言います。
「食べてみろ。ウサギの燻製だ」
「あぁ、先日の」
ウサギのシチューが美味しかったので、もう抵抗の無くなっていた朝日は勧められた肉を口にしました。スモークされているので風味は芳醇で、おそらく塩のみで味付けされているものの、噛むほどにウサギの旨味が肉から染み出してきます。
朝日が肉を噛み続けながら頷くと、オリバーも満足気に頷き返しました。
グランダが言います。
「これはサイダーが欲しくなるね」
オリバーがパントリーから瓶を持ってきました。コルクの蓋がポン!と音を立てて開けられ、グラスに黄金色の液体がトクトクと注がれます。
それは自家製のお酒です。秋に庭で収穫したリンゴを絞り、発酵させて作られたシードルと呼ばれるお酒で、リンゴの甘い香りと発酵で発生する炭酸ガスがシュワシュワと口の中で弾けるスッキリした飲み口が特徴です。グランダはコレをサイダーと呼んでいるのでした。
目ざとく見ていたエミリーが声を上げます。
「わたくしも飲みたいわ!」
すぐさまルイスが止めます。
「エミリー、キミはお酒を飲まない方がいい」
「なんでーぇ」
妹が抗議の視線を向けました。聞き返された兄の方が「なぜって⁉」と大きなジェスチャーで驚いてみせます。
その様子を見ていたグランダがやれやれと言って口を挟みました。
「今日くらい構わないだろう」
「いいんですか⁉お婆様?」
「ダメだ、ダメだと言ってたら、そのうち隠れて飲み始めないとも限らないからねぇ。そっちの方がタチが悪い。まだ目の前で酔っ払ってくれた方がマシさ」
「流石お婆様!話が分かるわ」
エミリーがグラスを嬉々として差し出すと、オリバーは戸惑いつつもお酒を注ぎました。
ルイスが諦めた様に首を振って、メイベールとアイラに言います。
「この家が吹き飛ばなければいいが……二人とも気を付けてくれ」
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