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威力は抑えていたものの、朝日は肝を冷やしました。なのにお姫様はまた言うのです。
「メイベールさん!もう一回やって」
(ダメだ。この人、完全に酔ってる)
犬に入ってる朝日にも、お姫様の足元がおぼつかないのは分かります。その体はふらふらと揺れているのです。これは酔っぱらいが何の考えも無しに、ただ好き勝手言っているだけ。安全の事など頭の隅にもありません。
それに、もう一度やれと言われても犬の体は凄まじい衝撃波に怯えて震えています。耳も尻尾も垂れてしまっていました。クゥーン、クゥーンと弱々しく鳴き、落ち着かない様子でウロウロしています。朝日にも犬の体は不慣れで、言う事をきかせるのは無理そうです。
「ほら!はやくぅー、これは姫の命令よ」
今度は流石にグランダも止めます。
「あんなモノ、ホイホイ打ち上げるんじゃないよ!さあ、もうパーティーはしまいだ」
「えーっ!楽しくなってきたばかりなのにぃ!あはははは!」
エミリーはふらつく体でメイベールに寄りかかると、その手を繋ぎました。アイラの手も取ります。
「じゃぁーあ、さいごにー、みんなでうたいましょーぉ!コレをやらないと終われないわ」
やれやれと、ルイスが首を振りました。
「すまない、メイベール。あと少しだけ付き合ってあげてくれ」
「ええ、お気になさらず」
差し出されたルイスの手を取ります。皆が手を繋ぎ円陣を組みました。
酔っぱらいが音程を外しつつ最初のリズムを取ります。
「ターぁタータタ、タータぁタタ♪……ハイっ!」
調子は狂っていますが、歌い始めました。どうやら有名な曲らしく、みな歌えるようです。朝日にも何故かそのリズムは聞き覚えがある気がしました。犬のままなので、この世界の言葉は理解できませんが、メイベールと意識を共有しているため大まかな歌詞の内容は頭に流れ込んできます。
♪古き友を忘れ、もう戻る事は無いのか?
♪友も、昔の日々も忘れるべきだろうか?
♪昔懐かしき日々よ、
♪我が愛しき者よ、
♪昔懐かしき日々よ、
♪友も、昔の日々も忘れるべきだろうか?
アイラがライトを付けていてくれたのですが、歌っているとそっちに意識が持っていかれるらしく、光が弱くなったり、強くなったり安定しません。まるで蛍の光の様に点滅を繰り返す中、みな歌っています。
♪この手を取れよ、親友 そして君の手も貸してくれ
♪昔懐かしき日々の為、酌み交わそう
♪懐かしき昔の日々の為に、
♪我が愛しき者の為に、
♪過ぎ去りし日々の為に、
♪昔懐かしき日々の為、酌み交わそう
「ヒューーーーーぅ!」
歌い終わり、一人で歓声を上げたエミリーは両手を振り上げました。そのままゆっくりと後ろへ倒れていきます。慌ててルイスが抱きかかえました。妹は兄の腕の中で寝息を立て始めています。
「本当に困った妹だ……ベットに運んでくるよ。すまないが片づけを頼む」
皆が片づけをしているなかグランダは一人、庭の隅に歩いていきます。犬も寄り添うように付いて行きました。そして見てしまったのです。老婆が夜空を見上げ、静かに泣いているのを……
片づけを終え、メイベールの体に戻ることの出来た朝日は少し早い気はしましたが、寝る事にしました。お姫様に振り回されて気を使いましたし、大魔法まで披露したのですから魔力も使い果たして精神的にも肉体的にも疲れています。アイラも同じらしく、一緒にベットへ入ると隣ですぐに寝息を立て始めました。
(はーぁ、疲れた……なんで今日は急にパーティー始めたんだろう?それに……)
涙するグランダの顔が浮かびます。あんな嫌味な人でも泣く事があるんだと驚くとともに、その理由が分かりません。
(まぁ……いいか……)
こうして朝日は気付かないまま12月31日の大晦日は更けていったのでした。
「メイベールさん!もう一回やって」
(ダメだ。この人、完全に酔ってる)
犬に入ってる朝日にも、お姫様の足元がおぼつかないのは分かります。その体はふらふらと揺れているのです。これは酔っぱらいが何の考えも無しに、ただ好き勝手言っているだけ。安全の事など頭の隅にもありません。
それに、もう一度やれと言われても犬の体は凄まじい衝撃波に怯えて震えています。耳も尻尾も垂れてしまっていました。クゥーン、クゥーンと弱々しく鳴き、落ち着かない様子でウロウロしています。朝日にも犬の体は不慣れで、言う事をきかせるのは無理そうです。
「ほら!はやくぅー、これは姫の命令よ」
今度は流石にグランダも止めます。
「あんなモノ、ホイホイ打ち上げるんじゃないよ!さあ、もうパーティーはしまいだ」
「えーっ!楽しくなってきたばかりなのにぃ!あはははは!」
エミリーはふらつく体でメイベールに寄りかかると、その手を繋ぎました。アイラの手も取ります。
「じゃぁーあ、さいごにー、みんなでうたいましょーぉ!コレをやらないと終われないわ」
やれやれと、ルイスが首を振りました。
「すまない、メイベール。あと少しだけ付き合ってあげてくれ」
「ええ、お気になさらず」
差し出されたルイスの手を取ります。皆が手を繋ぎ円陣を組みました。
酔っぱらいが音程を外しつつ最初のリズムを取ります。
「ターぁタータタ、タータぁタタ♪……ハイっ!」
調子は狂っていますが、歌い始めました。どうやら有名な曲らしく、みな歌えるようです。朝日にも何故かそのリズムは聞き覚えがある気がしました。犬のままなので、この世界の言葉は理解できませんが、メイベールと意識を共有しているため大まかな歌詞の内容は頭に流れ込んできます。
♪古き友を忘れ、もう戻る事は無いのか?
♪友も、昔の日々も忘れるべきだろうか?
♪昔懐かしき日々よ、
♪我が愛しき者よ、
♪昔懐かしき日々よ、
♪友も、昔の日々も忘れるべきだろうか?
アイラがライトを付けていてくれたのですが、歌っているとそっちに意識が持っていかれるらしく、光が弱くなったり、強くなったり安定しません。まるで蛍の光の様に点滅を繰り返す中、みな歌っています。
♪この手を取れよ、親友 そして君の手も貸してくれ
♪昔懐かしき日々の為、酌み交わそう
♪懐かしき昔の日々の為に、
♪我が愛しき者の為に、
♪過ぎ去りし日々の為に、
♪昔懐かしき日々の為、酌み交わそう
「ヒューーーーーぅ!」
歌い終わり、一人で歓声を上げたエミリーは両手を振り上げました。そのままゆっくりと後ろへ倒れていきます。慌ててルイスが抱きかかえました。妹は兄の腕の中で寝息を立て始めています。
「本当に困った妹だ……ベットに運んでくるよ。すまないが片づけを頼む」
皆が片づけをしているなかグランダは一人、庭の隅に歩いていきます。犬も寄り添うように付いて行きました。そして見てしまったのです。老婆が夜空を見上げ、静かに泣いているのを……
片づけを終え、メイベールの体に戻ることの出来た朝日は少し早い気はしましたが、寝る事にしました。お姫様に振り回されて気を使いましたし、大魔法まで披露したのですから魔力も使い果たして精神的にも肉体的にも疲れています。アイラも同じらしく、一緒にベットへ入ると隣ですぐに寝息を立て始めました。
(はーぁ、疲れた……なんで今日は急にパーティー始めたんだろう?それに……)
涙するグランダの顔が浮かびます。あんな嫌味な人でも泣く事があるんだと驚くとともに、その理由が分かりません。
(まぁ……いいか……)
こうして朝日は気付かないまま12月31日の大晦日は更けていったのでした。
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