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第4章
4-12
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4-12「チェアリーのターン」
(よし!)
袖をユウに腕まくりしてもらい、私は気合いを入れ直し解体作業に戻った。
食べない内臓は破かないように丁寧に外して捨て、残った心臓に手をかける。
「ねぇ、心臓は食べたい?」
「うん、食べるよ。食べるなら、串焼きがいいんじゃないかな」
彼はレバーの時とは違い、今度は料理のリクエストをしてきた。
「きっと美味しいよ」
ウサギの心臓は体の大きさの割に小さい。串焼きにするにしても彼が一人で食べる分くらいしかない。
(ふふっ、心臓はユウにあげよう)
取り出した心臓をレバーと同じ鍋に入れる。
(後は・・・・・・)
内臓を取り出し終え、次は皮を剥ぐ作業だ。
やり方は人それぞれだけれど、作業できる場所に運びロープで吊るして後ろ足から丁寧に剥いでいくのが一般的だ。
しかし、狩ったばかりでまだ温かいうちは皮もめくりやすいため私はここで最後まで作業することにした。
まず下準備に足だけ皮を剥いでしまう。
足先を落とし、足の内側に切れ込みを入れたらそこから皮をめくる。上手く剥がれず突っかかりがあるときはナイフを使うが、せっかくの皮を傷つけないように慎重に切り離す。
足の準備が整ったら、残した背中とお腹の皮は一気に手で引っ張って剥ぐだけだ。
最後はユウにも手伝ってもらおうと、ウサギを彼の前に差し出した。
「ユウ、手伝って」
ちょうど彼は座っていて、肉を持っていてもらうには好都いい。
「ん?」
私の意図していることが飲み込めなかったのか、彼が不思議そうな声を出す。
「皮を一気に剥ぐから足を持っててほしいの」
「オレはどうすればいい?」
「座ったままでいいから、しっかり持ってて」
今度は私の意図が飲み込めたらしく、彼はしっかり脇を締めて備えた。
「温かいうちなら簡単にむけるから、上手くいくと思うけど」
後ろ足の皮を手に持ち、力を込める。
ズッ、ズッ、ズッ、ズッ、・・・・・・
最初は破れないように慎重にめくっていく。
(いけそうね)
綺麗なピンク色の肉が少しずつ露わになる。やはり狩ったばかりだと皮がはがれやすい。
「ちゃんと持っててよ!」
ユウに念を押してから、手にした皮をしっかり握って体重を後ろへかけた。
ザッ!ザザザザザザザァ!!
思った以上にすんなりと皮がめくれたので、勢い余った私はたたらを踏んだ。
後ろに倒れそうになるのを、掴んだ皮を頼りに堪えようとするも、プツン!といきなり綱が切れたように踏ん張りが効かなくなった。
「キャ!」
そのまま後ろに倒れ込み、私は思いっきり尻もちをついた。
「いったーい!」
お尻を打ち動けない私に、ユウが素早く立ち上がり手を差し出してくれる。
「ほら、大丈夫?」
「うん・・・・・・だいじょうぶ」
差し出された手を取り立ち上がると、ユウが苦笑いした。
(カッコ悪い所、見られちゃった)
放り出してしまった皮には、頭が皮一枚でくっ付いている。剣で首に切れ込みが入っていた為、もげてしまったのだ。
その皮に残ったままの頭を見て、いい事を思いついた。
(そうだ!この牙をユウの御守りにしてあげよう)
エルフの間では足の速いウサギにあやかって、その牙はモンスターから逃げることの出来るお守りとして身につける風習がある。
アゴを外して牙を取り除いているのを不思議に思ったのか彼が聞いてきた。
「それ・・・・・・どうするの?」
ユウはエルフについてほとんど知らないため、牙をお守りにしている事も知らないようだ。
「うん、ちょっとね」
私はにっこりと微笑んだ。
(あとのお楽しみ!)
解体も終え空を見上げれば、太陽は真上に来てちょうどお昼にするにはいい頃合いだ。
その空には私達のおこぼれを狙っているのか、トンビが大きく弧を描いて旋回している。降りてきて突かれないうちにと、私は肉と皮を両手に持った。
(鍋は・・・・・・)
ユウに持ってもらおうと思ったのだが、彼は空を見上げてたたずんでいる。
(またボーっとして)
「ユウはお鍋持ってきてくれる?」
私の呼びかけにハッと我に返った彼が返事する。
「ああ、分かった」
急いで鍋を手に取り、こちらへ向かってきたのを確認して私は土手を降り始めた。
(ユウは少し変わったところがあるよね。ふふっ)
ベタベタになった手を川で洗い、さっぱりとしたところで私は声をかけた。
「お昼にしよっか」
「ああ」
今日はおかみさんに貰ったパンだけで簡単に済ませるつもりが、ユウのおかげで思わぬ収穫だ。これなら一昨日のようにお昼は二人で料理を作って楽しむことが出来る。
(そうだ、この前は私が火を付けちゃったけど、今日はユウに任せよう)
そう考え、カバンから魔宝石を取り出した。
「私はもう少しウサギの下処理があるから、ユウは火を起こしてくれる?」
「うん、」
彼は私が差し出した魔宝石を受け取った。
(よし!)
袖をユウに腕まくりしてもらい、私は気合いを入れ直し解体作業に戻った。
食べない内臓は破かないように丁寧に外して捨て、残った心臓に手をかける。
「ねぇ、心臓は食べたい?」
「うん、食べるよ。食べるなら、串焼きがいいんじゃないかな」
彼はレバーの時とは違い、今度は料理のリクエストをしてきた。
「きっと美味しいよ」
ウサギの心臓は体の大きさの割に小さい。串焼きにするにしても彼が一人で食べる分くらいしかない。
(ふふっ、心臓はユウにあげよう)
取り出した心臓をレバーと同じ鍋に入れる。
(後は・・・・・・)
内臓を取り出し終え、次は皮を剥ぐ作業だ。
やり方は人それぞれだけれど、作業できる場所に運びロープで吊るして後ろ足から丁寧に剥いでいくのが一般的だ。
しかし、狩ったばかりでまだ温かいうちは皮もめくりやすいため私はここで最後まで作業することにした。
まず下準備に足だけ皮を剥いでしまう。
足先を落とし、足の内側に切れ込みを入れたらそこから皮をめくる。上手く剥がれず突っかかりがあるときはナイフを使うが、せっかくの皮を傷つけないように慎重に切り離す。
足の準備が整ったら、残した背中とお腹の皮は一気に手で引っ張って剥ぐだけだ。
最後はユウにも手伝ってもらおうと、ウサギを彼の前に差し出した。
「ユウ、手伝って」
ちょうど彼は座っていて、肉を持っていてもらうには好都いい。
「ん?」
私の意図していることが飲み込めなかったのか、彼が不思議そうな声を出す。
「皮を一気に剥ぐから足を持っててほしいの」
「オレはどうすればいい?」
「座ったままでいいから、しっかり持ってて」
今度は私の意図が飲み込めたらしく、彼はしっかり脇を締めて備えた。
「温かいうちなら簡単にむけるから、上手くいくと思うけど」
後ろ足の皮を手に持ち、力を込める。
ズッ、ズッ、ズッ、ズッ、・・・・・・
最初は破れないように慎重にめくっていく。
(いけそうね)
綺麗なピンク色の肉が少しずつ露わになる。やはり狩ったばかりだと皮がはがれやすい。
「ちゃんと持っててよ!」
ユウに念を押してから、手にした皮をしっかり握って体重を後ろへかけた。
ザッ!ザザザザザザザァ!!
思った以上にすんなりと皮がめくれたので、勢い余った私はたたらを踏んだ。
後ろに倒れそうになるのを、掴んだ皮を頼りに堪えようとするも、プツン!といきなり綱が切れたように踏ん張りが効かなくなった。
「キャ!」
そのまま後ろに倒れ込み、私は思いっきり尻もちをついた。
「いったーい!」
お尻を打ち動けない私に、ユウが素早く立ち上がり手を差し出してくれる。
「ほら、大丈夫?」
「うん・・・・・・だいじょうぶ」
差し出された手を取り立ち上がると、ユウが苦笑いした。
(カッコ悪い所、見られちゃった)
放り出してしまった皮には、頭が皮一枚でくっ付いている。剣で首に切れ込みが入っていた為、もげてしまったのだ。
その皮に残ったままの頭を見て、いい事を思いついた。
(そうだ!この牙をユウの御守りにしてあげよう)
エルフの間では足の速いウサギにあやかって、その牙はモンスターから逃げることの出来るお守りとして身につける風習がある。
アゴを外して牙を取り除いているのを不思議に思ったのか彼が聞いてきた。
「それ・・・・・・どうするの?」
ユウはエルフについてほとんど知らないため、牙をお守りにしている事も知らないようだ。
「うん、ちょっとね」
私はにっこりと微笑んだ。
(あとのお楽しみ!)
解体も終え空を見上げれば、太陽は真上に来てちょうどお昼にするにはいい頃合いだ。
その空には私達のおこぼれを狙っているのか、トンビが大きく弧を描いて旋回している。降りてきて突かれないうちにと、私は肉と皮を両手に持った。
(鍋は・・・・・・)
ユウに持ってもらおうと思ったのだが、彼は空を見上げてたたずんでいる。
(またボーっとして)
「ユウはお鍋持ってきてくれる?」
私の呼びかけにハッと我に返った彼が返事する。
「ああ、分かった」
急いで鍋を手に取り、こちらへ向かってきたのを確認して私は土手を降り始めた。
(ユウは少し変わったところがあるよね。ふふっ)
ベタベタになった手を川で洗い、さっぱりとしたところで私は声をかけた。
「お昼にしよっか」
「ああ」
今日はおかみさんに貰ったパンだけで簡単に済ませるつもりが、ユウのおかげで思わぬ収穫だ。これなら一昨日のようにお昼は二人で料理を作って楽しむことが出来る。
(そうだ、この前は私が火を付けちゃったけど、今日はユウに任せよう)
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「私はもう少しウサギの下処理があるから、ユウは火を起こしてくれる?」
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彼は私が差し出した魔宝石を受け取った。
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