イチメハ!! カン違いで始まる物語

二コ・タケナカ

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第4章

4-13

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4-13ユウのターン

ひと仕事終えたチェアリーがさっぱりした顔で言う。
「お昼にしよっか」
「ああ」
オレの方は手についた血を洗い流しても、彼女の様にスッキリとした気分ではいられなかった。

(オレ、何やってるんだろ・・・・・・)
気合いを入れてスライムを探していたはずなのに結局そのスライムは見つからず、代わりにウサギを狩ってしまった。まだ、心にもやがかかったようにウサギに対して罪悪感がまとわりついてくる。
(・・・・・・こんなはずじゃなかったのに)
しかし、救いはチェアリーがとても楽しそうにしていることだった。

その彼女がまた嬉しそうに言う。
「私はもう少しウサギの下処理があるから、ユウは火を起こしてくれる?」
彼女はカバンをあさると小石を取り出し、オレの前に差し出した。
チェアリーが魔法を使った時に持っていたあの小石だ。
(はっ!?オレが使うのか!?)

いきなり訪れたピンチにオレは焦った。
(魔法なんて使ったことなどないのにどうすれば?チェアリーに使い方を聞くか?ダメだ、そんなことしたら怪しまれるに違いない。いや・・・・・・待てよ)
「うん、」
オレは差し出された魔宝石を受け取った。

チェアリーはごく自然に小石を渡してきた。という事は、誰でも普通に魔法が使えるという事じゃないのか?使える人が限られている物ならオレが使えるかどうか初めに聞いてくるはずだ。
それに、彼女が火を起こしたところは見ている。それは衝撃的だったので脳裏へ鮮明に焼き付いた。彼女がしたようにまねればオレにも使えるかもしれない。

(となればさっそく準備だ)
チェアリーが川で肉を洗っている間に、見られない所で火を起こせるか試しておきたい。
オレは急いで転がっている河原の石で簡易かまどを作り、辺りに落ちている流木を集め、火を起こす準備をした。

「ふー」
急いで準備したので息が上がってしまった。一呼吸ついて彼女の方を確認すると、まだ川で洗いものを続けている。ジャブジャブと音を立てながら、ウサギの毛皮を洗っているようだ。

(よし!)
彼女から渡された小石を取り出し改めて見てみた。それはクリスタルの様に多面体をしている5㎝もない石柱だ。
おととい拾ったスライムの魔宝石とそっくりだった。

(そうだ!)
ポケットにしまっておいたスライムの魔宝石をさがした。が、出てこない。
(あぁ!今朝、着がえたからそっちか)
スライムの物と見比べようと思ったのに、宿に脱いできた服のポケットの中だ。けれど、見比べるまでもなく同じものの様に見える。
(モンスターの落とす魔宝石で魔法が使えるという事か?)
魔宝石と言う名前からしても、この仮説はおかしくない。

もたもたしている訳にはいかない。彼女に見つからないうちにと、かまどに流木を入れ枯草を詰めた。
そしてチェアリーが火を起こした手順を思い出し、手に魔宝石を握る。
(確か、人差し指を向けて・・・・・・)
「・・・・・・ファイ、ヤー」

恐る恐る口にした言葉に応えるように指先が青白く光り、その先の枯草が一瞬で燃え上がった。
「お! わっち!!」
自分にも魔法が使えた事に驚くも、指先が炎にあぶられ熱かった。確かに自分が魔法で火をつけたことを身をもって確認できた。

嬉しくなり、思わずチェアリーの方を満面の笑顔で振り返った。
彼女は火を付けている様子を向こうからうかがっていたらしく、目が合うとクスクスと笑った。
(はずかしい)
子供のようにはしゃいでいると思われてしまったかもしれない。だが、そんなことより魔法がオレにも使えた事が素直に嬉しい。

(こんなにも簡単に使えるのか)
まだ弱々しい炎に小枝を乗せ、火が安定してくるのを待ちながらオレはウズウズした。もしかしたらこの魔法石があればどんな魔法でも使えるのではないか?そう思ったのだ。

他にも魔法が使えないか試してみよう。
チェアリーが魔法で水を出していたのを思いだし、オレは目に付いたレバーとハツが入っている鍋を石の上に置いた。
(ファイヤーで火が付くなら・・・・・・)
魔宝石を握り、鍋に向かって構える。
「・・・・・・ウォーター」
そう唱えると、また指先が青白く光り、今度は鍋に水が湧き始めた。

(やっぱりか!)
簡単な英単語を唱えるだけでそれが魔法となって現れるらしい。
(今どきのゲームならもうちょっとひねったネーミングにすると思うけど)
だが、英語が苦手なオレでも分かる単語で良かったと安心した。

安心と共になんだかおかしくなって笑えてきた。
(なんで話す言葉は日本語なのに、魔法は英語なんだ?)
この世界の都合の良さには笑ってしまうが、しかし世界の仕組みがまた1つ分かった気がして興奮する。

オレが唱えた呪文によって、目の前で水が湧いているのだ。
よく観察しようとその青白く光る指先を横から覗き込んで見てみたが、水道の蛇口の様に水が出ている訳ではなかった。
水はどこからともなく湧き、鍋に溜まっていく。

(でもこれって・・・・・・)
水がゆっくり鍋を満たしていくのを眺めながら、オレは焦りを感じ始めた。止め方が分からない!
(さっきの炎はどうやって止まったんだ?)
興奮していて魔法の止め方など気にもしていなかったのだ。見ているうちにも水は鍋に止めどなく湧き続けている。

指を鍋から離したらいいのか?それとも魔宝石を手離すか?どうしようか迷っているうちに水は鍋の8分目くらいまで満たすとピタリと止まった。
(は?どうなってんだ・・・・・・自動?)
人差し指を鍋に向けたままだったのに、青白い光は消え水も勝手に止まってしまった。オレが止まって欲しいと願ったから止まったのだろうか?

(はぁ・・・・・・さすが魔法。よく分からん)
握っていた手を開き、魔宝石を見た。すると、
ピシッ!
乾いた音を立てて魔宝石は粉々に割れてしまった。
「おわっ!!」
ビックリして思わず声が出た。
(壊してしまった・・・・・・どうしよう)
オレが変な使い方をしたのかもしれない。
ぼう然としているうちに、手のひらの上で割れた宝石の結晶はさらさらと粉になりこぼれ落ちていく。

耳元で声がした。
「壊れちゃったね」
「おわっ!!」
急に声がして、またしても驚いて声が出た。チェアリーがそんなオレの様子を見て笑っている。

笑いをこらえながら、それでもクスクスと声が漏れているチェアリーにオレは罰悪く謝った。
「ごめん、壊れた・・・・・・」
「ちょうど寿命だったんだね。気にしなくてもいいよ」
(寿命?)
彼女は鍋に溜まった水を見て言葉を続ける。

「でも、節約してよ?お肉洗うだけなら、川で洗ってね」
そう言い残して彼女はまた川べりへ戻っていった。
チェアリーは魔宝石を壊してしまったことを怒ってはいないようだ。むしろ、さも当然といった感じに見える。

(寿命?使用回数か何かあるってことか)
節約しないといけないと彼女は言った。それは魔宝石は使い続けているといつかは壊れるという事なのかもしれない。

(・・・・・・そういうことか)
魔宝石はただ綺麗な宝飾品として希少価値があるのではない。こういった火を起こしたり、水を出したりといった実用品として価値があるのだろう。その上、消耗品だからこそ価値が生まれる。
消耗品でないと、魔法を使うにしても魔宝石1つで事が足りてしまう。それにモンスターを倒し続ければ魔宝石は溢れかえることになり価値など無くなる。

(上手く回ってるんだな)
魔法のネーミングセンスはいまいちだが、この世界の経済に魔法が溶け込んでいることに驚かされる出来事だった。
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