イチメハ!! カン違いで始まる物語

二コ・タケナカ

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第4章

4-30「ライリーのターン」

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4-30「ライリーのターン」

私は部屋で朝の身支度に追われていた。
(今日は・・・・・・弓は必要ないわね)
壁に立てかけてあった弓と剣のうち、剣だけ手に取り腰へさす。

コン、コン、コン

誰かがドアをノックした。
「空いてるわ、入りなさい」
入ってきたのはアデリナとココだった。
彼女達はもう装備を整えて、いつでも出られるといった格好だ。

昨日はスライムの大群を相手にして戦いの後大泣きしていた彼女達だが、今朝はキリッと引き締まった表情をしている。浮いた気分はすっかり抜けたようだ。
あのお調子者のココが朝食の時も言葉数少なげだったのだから、昨日の戦いはよほどこたえたのだろう。

「ライリー様、今日はどうなさるのですか?」
「私はエリアス達と浮島に向かいます。今日中に石積みを完成させたいわ。アデリナとココはユウの監視を頼むわよ」
二人は部屋の入り口で姿勢を正したままうなずいた。

「ココ、大丈夫?」
「ハイ!任せてください」
静かに姿勢を正したまま口を挟んでこないココに確認すると、いつものおちゃらけた様子は無かった。
(フッ、返事がいいこと・・・・・・でも、いつまで続くかしらね)

そう簡単に人の性格は変わらない事を私はよく知っている。
私が力を入れている北方遠征でも、隊員達と打ち解け、ようやく命を預け信頼出来ると思えるまでにかなりの時間がかかった。今は私が遠征地を離れていても隊員達に任すことが出来るまでに育ってくれた。
ココは任せてくださいなどと言っているが、まだその言葉を簡単に鵜呑みにすることは出来ない。

「アンスさんの姿が見えないのですがどちらに?」
「アンスには先に、エリアス達の元へ向かってもらいました。今日は資材も必要になるから、その準備よ」
「そうですか」
アンスは人とのコミュニケーションを取るのは苦手だが、私の指示にはよく従ってくれる。任せられる仕事も随分と増えてきた。いずれは私の代わりを務めてほしいと思っている。

ゴーン、ゴーン、ゴーン、
準備を整えているうちに、朝の礼拝を知らせる鐘が鳴り始めた。
「さあ、お祈りをしてから出かけましょう」

今日はまた河原での作業だ。
エリアス達は資材を置きに浮島へ向かい、アンスと私が河原の砂をかき集める。

ザック、ザック、ザック・・・・・・
アンスが広げていてくれる袋に私がスコップで砂や砂利、小石などまとめて詰めていく。
「ふー、いいわよ運んでちょうだい」
彼女は袋の口を紐でくくり縛ると、軽々と担いで土手の上へと運んでいった。
(そろそろいいかしら)
アンスが黙々と働いてくれるので、作業がはかどる。土手の上にはいくつもの砂袋が積み上がった。

ガラガラガラガラガラガラ・・・・・・
休憩がてら土手の上を眺めていると、資材を下ろし終わったのかフィンとメリーナの二人が荷馬車で戻ってきた。
「エリアスとパウルはどうしたの?」
土手を下ってくる二人に聞く。

「先に木枠を組んでおくからって、残してきました」
「そう。砂はもう詰め終わったから、構わないけど。順調ね、この分なら日暮れ前に終わりそうだわ」
「それにしても随分と綺麗サッパリなくなりましたね」
フィンが河原を見渡して言う。
「ええ、そうね」

私達が居るのは東から流れる川がその流れを南へと変える転換場所だ。大きく湾曲する流れの内側には砂や砂利など堆積物が溜まりやすいと思いこの場所を選んだ。
おとついは石を運び、今日は砂や砂利、小石までさらってしまったので河原にはもう運ぶことの出来ない大きな岩ぐらいしか残っていない。

「ライリーさん。これを運び終わったらお昼にしましょうか。今日は手軽に食べられるようにサンドイッチを用意してきましたよ」
「えっ!!」
メリーナの言葉にフィンが驚きの声をあげた。

彼女は文句でもあるのかと言わんばかりの視線を彼に向ける。
「なによ」
「肉は?昨日あれだけスライムで稼いだんだし、ケチることないじゃん!」
「アンタそう言って昨日の夕飯、散々飲み食いしてたでしょ?肉、肉、ばっかり言って、毎食肉でもいいわけ?」
「オレは構わないけどな。お前が焼く肉はうまいから」
「バっ!!」

「フフフッ」
あまりに二人が微笑ましく思えて、私は笑ってしまった。
「もう!早く砂袋積む手伝いしなさいよ。アンスさんだけ働かせてるんじゃないわよ、ばか!」
メリーナは恥ずかしさを隠すように馬車の方へ駆けていった。その後を頭を掻きながらフィンも歩いて行く。
土手の上ではアンスがこちらにお構いなく黙々と砂袋を荷馬車へ積み上げていた。
(本当に今日は早く終わりそうね)

アンスのおかげで砂袋を手早く馬車に積み終えた私達は、エリアスとパウルのいる浮島へと向かった。
その道中、私はすれ違う馬車に注目した。
(普段通り・・・・・・か)
昨日はスライムを倒している間だけ盆地の入り口をバリケードで封鎖しておいたが、すれ違う馬車に特に変わった様子は無い。

見ていたのは冒険者が護衛をしているかどうかだ。護衛も冒険者の仕事の内だが、この草原でモンスターが大量発生したとはまだ知れ渡っていないのだろう。すれ違う馬車はわざわざ護衛を付けていないようだった。

街道のバリケードと合わせて、コッレの街も手はず通り門は閉鎖された。だから誰も草原には出られなかったはずだ。
街では何も知らない人々が教会に押し寄せ、一時的に混乱を招いたようだがモンスターの大量発生が知れ渡ればそれこそ大きな混乱を招く。
(知れわたる前に終わらせたいわね)

この盆地になった平原はモンスターと戦うには絶好の場所だ。周囲は山に囲まれ道は一本道、街道を塞げば邪魔も入らず、余計な被害を出すことなく戦える。
エルフの長がもくろんだ通りだ。

浮島の手前に到着すると、作業を進める二人が木枠を組み上げている最中だった。体格のいいエリアスが木材を支えて持ち、パウルが釘打ちをしている。

「こんなものでどうでしょうね」
作業の手を止め、エリアスが汗を拭きながら言う。
「ええ、十分よ」
木枠は10メートル程の長さで、幅が2メートル弱。この枠の中に河原で拾ってきた石を積み、砂や砂利で隙間を埋めながら積み上げていく。
ここに簡易的な防壁を作るのだ。

エリアスとパウルはその木枠を見ながら少し不安げな表情をしている。何か言いたげだったが、その不安をかき消すように明るい声がした。
「お昼にしましょう」
バスケットを片手にメリーナがサンドイッチを配り始めた。
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