イチメハ!! カン違いで始まる物語

二コ・タケナカ

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第5章

5-4

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5-4「ライリーのターン」

「私は22の鐘が鳴りました」
「私は23の鐘が鳴りました。今回も生き残れたことを神に感謝します」
ボアとの戦闘の後、私は福音を聞いた者達の祈りを受けた。

「エリアスさん達は何回鐘が鳴ったんですか?」
祈りを終えたココがエリアス達に尋ねる。
エリアスも祈りを終え、立ち上がると頭を掻きながら答えた。

「冒険者の間ではあまりおおっぴらに鐘の数を言わないのが暗黙のルールみたいなところがあるのです」
エリアスに続きパウルが付け加える。
「鐘の数はそれだけモンスターを倒してきた証しみたいなものだからな。優劣を付けたがる奴がいるから聞かないのもマナーだ」
「へー、そうなんですか。で?いくつ鳴ったんですか?」
「ココ、」
私はココを睨みつけた。

「だって、今みんなは私が22回だって知ったじゃないですか!私だけ教えるのは不公平ですっ」
「自分で言ったんだろ・・・・・・」
「まあ、50回ぐらいですよ、はははっ」
エリアス達とも遠慮なくコミュニケーションを取ろうとするココの物おじしない態度には本当に舌を巻く。

「私ももっと鐘の回数が増えればボアも一撃で倒せるようになりますかね?」
「ほう、福音の祝福を信じているのですね」
「もちろん!こう見えても聖職者ですから」
ココはなぜか誇らしげに胸を張った。

”福音の祝福”は福音の鐘の音を多く聞いた者はモンスターも難なく倒せるようになるという言い伝えだ。
アイオニオン教の聖職者は神からの祝福としてその事を信じているが、現実主義の冒険者の中には眉唾物だと疑う者も少なくない。

「もしかして信じてないんですか?」
「福音自体とても久しぶりの事ですからね。よく分からないといったところです」
「俺は信じている」
疑り深いパウルから予想外の言葉が帰ってきた。
「あら、意外ね。一番そういう事に懐疑的に見えるのに」
「前にも言ったが俺は敬虔なアイオニオン教徒だ。福音の祝福は信じているし、実感も多少あったが・・・・・・」
パウルは私の方に向き直った。

「今回の戦いで確信した。アンタ相当な数の福音を聞いているだろう?」
「なぜそう思うの?」
「昨日、数百のボア相手に弓矢だけで十分だと言い放っていたからな。実際、ボアを矢1本で仕留めていた」
「1本矢のライリーは伊達じゃないですよ!」
ココはまたしても誇らしげに胸を張る。

「茶化すな・・・・・・例えば弓矢で狩をしたとして、矢を1本食らったぐらいならウサギの方がもっとしぶといぜ。ボアより野ウサギの方が強いなんてありえない」
エリアスもうなずく。
「そうですよ。それに、クロスボウと弓矢を比べたって威力の強いクロスボウの方が一撃で倒せてもいいはずだ」
「冒険者同士、共闘を組むなんてあまりない事だから意識してこなかったが、ただの腕力や技術の差とは違う何かがあるのを今日、はっきりと意識した」

「そうね、福音の祝福は確かにあるのよ」
「やはりそうか。で?アンタの鐘の音はいくつなんだ?」
「あら、聞かないのがマナーじゃなかったの?フフ」
「ふん!」

機嫌を損ねたパウルは腕組みをしてそっぽを向いてしまった。
横を向いて目に付いたのか、今度は目線の先にいたアンスに話を振った。
「アンタは祈りを捧げていなかったが、福音を聞かなかったのか?」
「ええ、聞いていないわ。それに私は福音自体ずいぶん長いこと鳴っていないし」
「アンスさんはいくつぐらいですか?」
「ココ、」
「さあ?途中から数えるのが面倒になって自分でも覚えていないから」
「それだけ多くの福音を聞いたってことですよね!で?最後に数えた時は?」
「ココ、いい加減にしなさい」

「さあ、お茶が入りましたよ」
私達の会話を横で聞きながら、お茶の準備をしていたメリーナが気を使ったのか話を終わらせるように皆へカップを配り始めた。
その受け取ったカップには、紅茶とは違う、真っ赤な液体が注がれていた。
「昨日、街でハイビスカスティーっていうのを見つけたので淹れてみたんです。なんでもお店の人が言うにはエルフの村から直接買い付けてきた、まだ市場にも出回っていない珍しいハーブなんだそうですよ」
(エルフの長がまた珍しい植物を作らせてるんでしょうね)

「あ、美味しい」
一口飲んだアデリナの言葉にメリーナはにっこり微笑んだ。
「爽やかな酸味でしょ?疲れた時に飲むとさっぱりしていいからってお店の人に進められたので今日、持ってきたんです」
私もその赤いハーブティーをすすってみた。
それはレモンをそのまま絞って口に含んだ様な強い酸味だったが、シロップを入れてあるのか後味はとても甘く、飲み口は優しい。それに冷たくキンキンに冷えていて、疲れた体に染み渡る。

「ごくっ!ごくっ!・・・・・・ぷはぁー!もう一杯ちょうだい」
「おい、おい、もっと味わって飲んでくれよ。このお茶ビックリするぐらい金かかってんだから」
「いいですよ、気にしなくても。おかわりどうぞ」
メリーナは気前よく応え、ココのカップにハイビスカスティーを注いだ。
「いつもオレには節約しろだの言ってるのに・・・・・・」
「アンタのは無駄使い、これはたまの贅沢だからいいのよ!」
「フフフッ」
彼らのやり取りは見ていて微笑ましい。

私はハイビスカスティーを飲み干し、草原を見渡しながら言った。
「たまには贅沢してもいいんじゃないかしら?今日も相当な額の収穫がありそうよ」
草原にはボアが落としていった緑の魔法石がいたる所に転がっていて、それが太陽の光を受けキラキラと光り輝いている。
「さあ、誰も来ないうちに回収するわよ」

休憩を終え、私達は横一列に等間隔に並ぶと、少しづつ進みながら、魔宝石を拾って回った。
「矢と釘も一緒に回収してちょうだい。釘は見えづらいから踏まないように気を付けて」
「すいませんっ!ライリー様!私のせいで余計な気を使わせて」
「気にしなくてもいいわよ。これくらい。それよりすごかったわね!投げた釘でボアを仕留めるなんて。私も真似してみようかしら?」
「ライリー様の弓矢に比べたら私なんて、全然大したことないです」

「あー、これも折れてる・・・・・・」
メリーナががっかりしたように折れた矢を拾い上げる。
「ボアの大群に踏みつけられてはしょうがないわね。矢じりはまだ使えるでしょうから回収しましょ」
「ライリーさまぁ、矢の修理のお金って・・・・・・」
「もちろん今拾っている魔宝石から出すわよ」
「そんなぁー。私、今度は槍だけで戦おうかな?」
「槍だってギルドから借りている物なんだから、柄はともかく刃を折った時にはかなりの修理費を請求されるわよ」
「う゛・・・・・・だったら私もアンスさんのように素手で戦いますよ!」
「なら次はモンスターの群れの中に一人で飛び込みなさい。フフフッ」
「お断りします!あんなの人のやる事じゃないです!」
ハハハッ!
皆、うなづきながら笑いが起こり、アンスだけが恥ずかしそうに黙々と魔宝石を拾っている。

私達はおしゃべりをしながら、戦闘後の解放感に浸った。
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