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第5章
5-5「2人のターン」
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5-5「チェアリーのターン」
チュン、チュン、
早起きな小鳥が窓の外で鳴いているのが聞こえる。朝だ。けど、私は体を起こすことなくシーツにくるまりながら身をよじっていた。
「すぅー、はぁー、すぅー、はぁー、あぁ・・・・・・ユウ」
昨日、ユウが脱ぎっぱなしにしてあった服を持ち帰った私はそれを抱きしめながら寝た。彼の服に顔をうずめ、何度も何度も深呼吸をしながら頬ずりしているうちに安心感に包まれ、満足した私はいつの間にか眠ってしまった。
一晩中、彼に抱かれているような錯覚に身をよじり、ふと目を覚ましてはまた身をよじった。夢の中では幸福に包まれていたのに現実に戻ると、とても切ない。すぐ下の階では彼自身がいるのに・・・・・・。
私は彼の服の残り香で自分をなぐさめた。
「ああ、ユウ。すぅーーーーーー、はぁ、はぁ」
何度も浅い眠りを繰り返し、朝になってもずっとこうして彼の匂いを嗅いでいる。
昼間はこっそりとしか嗅ぐことが出来なかったけど、今は思う存分、胸いっぱいに吸うことが出来る。
(こんな事してるの、絶対彼には言えない)
お互いそのつもりでいるはずなのに、なかなかタイミングが合わない。この状況に悶々としていた私は抑えがきかず、普段ならしないような洗濯物の匂いを嗅ぐなどという行動に出てしまったのだ。
ぎゅーーーーっ!!
服と一緒に抱きかかえていた枕を力いっぱい締め上げ、行き場の無い感情をぶつける。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・あァ、ュゥ・・・・・・ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、んっ、」
バサッ!
自分の呼吸と彼の匂いが混じって生温かいシーツを勢いよくめくり、湿気と共に解き放たれた体を起こして、私は大きくため息をついた。
「ハァー・・・・・・ユウのせいなんだからね」
ほてった体は少し気だるく、じっとりと汗ばんでいる。
(シャワー、浴びよ)
クタクタになってしまった彼の服と、昨日お尻の部分を汚してしまった自分の服を手に取り、浴室へ向かう。
浴槽へ自分の服を放り込み、私は名残惜しみつつもう一度彼の服へ顔をうずめ深呼吸した。
すぅーーーーーー、はぁーーーーーー。
「ハァ、・・・・・・くさい」
男臭い匂いがするのだけれど、何度嗅いでも私を虜にする何かがその匂いの奥から漂ってくる。それを胸に吸い込むたび脳がしびれるような感覚を繰り返し、私はすっかり酔いしれていた。
カランッ、カラ、カラン・・・・・・
抱きしめていた彼の服から滑り落ちた何かが床に転がり、乾いた音を浴室に響かせた。
小さなそれを拾い上げる。
(魔宝石?)
それは緑の魔宝石だった。きっと予備としてユウが最後まで残しておいたのだろう。冒険者なら誰もが念のため持っているものだ。
まだ他にないかポケットの中に手を突っ込み調べた。すると、ズボンのポケットからギルド会員であることを証明するバッチが出てきた。
(見えるところに付けておかないといけないのに)
私はいつも出かける時に持っていくバックに付けている。
あまり目立つものではないので、ユウがバッチを付けていなかった事に一緒にいた私も気付かなかった。
見ると彼のバッチナンバーは「オ・213」と刻印されている。
「おにいさん?・・・・・・ぷっ!」
語呂がちょうどよかったものだから吹き出してしまった。ユウはこの数字を見られるのが恥ずかしくてポケットに入れていたのかもしれない。そう思った。
後で魔宝石と一緒にバッチを返そうと取り置き、彼の服も浴槽へ入れる。
シャワーの蛇口をひねり、服が水に浸っていくのを眺めているうちに湯気が立ちのぼりはじめた。熱くなったのを確認して水を少しずつ足し適温にしてから、身につけていた下着も全て浴槽へ入れシャワーを浴びた。
「はぁー」
シャワーを浴びながら服を足で踏んで洗う。
ジャブジャブジャブ・・・・・・
泥が付いてしまったところは石鹸をこすりつけ手で丹念に揉み洗い。
ユウには洗濯に出すと言ったが、洗濯に出すのにだってお金はかかるのだ。
(そりゃあ、プロが洗うのとでは比べ物にならないかもしれないけど・・・・・・)
下着など薄手の物なら私はいつもこうして洗っていたし、コートなど厚手の物は洗濯に出す事もあったが、今は財布がきびしい。少しでも節約しておきたい。
(どうせ一緒に住むようになったら、私が洗ってあげることになるんだし、フフッ)
彼にはお金の事は心配させたくないので、私が洗っている事は黙っておくつもりだ。
シャワーを浴び終え、部屋の窓を開け放った。
朝の清々しい空気が流れ込み、部屋にこもった湿気が流れ去っていく。
開け放った窓から洗い終えてぎゅうぎゅうに絞り上げた服をシワを伸ばしながら干す。
パン!パン!
「よしっと、」
シャワーを浴びているうちに太陽は登り、日はサンサンと降り注いでいる。手を額に当て空を見上げると雲一つなく、今日もいい天気になりそうだ。
(これなら帰ってくるまでに乾きそうね)
私の服とユウの服が並べられて干されているのを見ていると何とも言えない幸福感に包まれ、寝ている間に感じていた切ない気持ちはいつの間にか消えていた。
チュン、チュン、
早起きな小鳥が窓の外で鳴いているのが聞こえる。朝だ。けど、私は体を起こすことなくシーツにくるまりながら身をよじっていた。
「すぅー、はぁー、すぅー、はぁー、あぁ・・・・・・ユウ」
昨日、ユウが脱ぎっぱなしにしてあった服を持ち帰った私はそれを抱きしめながら寝た。彼の服に顔をうずめ、何度も何度も深呼吸をしながら頬ずりしているうちに安心感に包まれ、満足した私はいつの間にか眠ってしまった。
一晩中、彼に抱かれているような錯覚に身をよじり、ふと目を覚ましてはまた身をよじった。夢の中では幸福に包まれていたのに現実に戻ると、とても切ない。すぐ下の階では彼自身がいるのに・・・・・・。
私は彼の服の残り香で自分をなぐさめた。
「ああ、ユウ。すぅーーーーーー、はぁ、はぁ」
何度も浅い眠りを繰り返し、朝になってもずっとこうして彼の匂いを嗅いでいる。
昼間はこっそりとしか嗅ぐことが出来なかったけど、今は思う存分、胸いっぱいに吸うことが出来る。
(こんな事してるの、絶対彼には言えない)
お互いそのつもりでいるはずなのに、なかなかタイミングが合わない。この状況に悶々としていた私は抑えがきかず、普段ならしないような洗濯物の匂いを嗅ぐなどという行動に出てしまったのだ。
ぎゅーーーーっ!!
服と一緒に抱きかかえていた枕を力いっぱい締め上げ、行き場の無い感情をぶつける。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・あァ、ュゥ・・・・・・ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、んっ、」
バサッ!
自分の呼吸と彼の匂いが混じって生温かいシーツを勢いよくめくり、湿気と共に解き放たれた体を起こして、私は大きくため息をついた。
「ハァー・・・・・・ユウのせいなんだからね」
ほてった体は少し気だるく、じっとりと汗ばんでいる。
(シャワー、浴びよ)
クタクタになってしまった彼の服と、昨日お尻の部分を汚してしまった自分の服を手に取り、浴室へ向かう。
浴槽へ自分の服を放り込み、私は名残惜しみつつもう一度彼の服へ顔をうずめ深呼吸した。
すぅーーーーーー、はぁーーーーーー。
「ハァ、・・・・・・くさい」
男臭い匂いがするのだけれど、何度嗅いでも私を虜にする何かがその匂いの奥から漂ってくる。それを胸に吸い込むたび脳がしびれるような感覚を繰り返し、私はすっかり酔いしれていた。
カランッ、カラ、カラン・・・・・・
抱きしめていた彼の服から滑り落ちた何かが床に転がり、乾いた音を浴室に響かせた。
小さなそれを拾い上げる。
(魔宝石?)
それは緑の魔宝石だった。きっと予備としてユウが最後まで残しておいたのだろう。冒険者なら誰もが念のため持っているものだ。
まだ他にないかポケットの中に手を突っ込み調べた。すると、ズボンのポケットからギルド会員であることを証明するバッチが出てきた。
(見えるところに付けておかないといけないのに)
私はいつも出かける時に持っていくバックに付けている。
あまり目立つものではないので、ユウがバッチを付けていなかった事に一緒にいた私も気付かなかった。
見ると彼のバッチナンバーは「オ・213」と刻印されている。
「おにいさん?・・・・・・ぷっ!」
語呂がちょうどよかったものだから吹き出してしまった。ユウはこの数字を見られるのが恥ずかしくてポケットに入れていたのかもしれない。そう思った。
後で魔宝石と一緒にバッチを返そうと取り置き、彼の服も浴槽へ入れる。
シャワーの蛇口をひねり、服が水に浸っていくのを眺めているうちに湯気が立ちのぼりはじめた。熱くなったのを確認して水を少しずつ足し適温にしてから、身につけていた下着も全て浴槽へ入れシャワーを浴びた。
「はぁー」
シャワーを浴びながら服を足で踏んで洗う。
ジャブジャブジャブ・・・・・・
泥が付いてしまったところは石鹸をこすりつけ手で丹念に揉み洗い。
ユウには洗濯に出すと言ったが、洗濯に出すのにだってお金はかかるのだ。
(そりゃあ、プロが洗うのとでは比べ物にならないかもしれないけど・・・・・・)
下着など薄手の物なら私はいつもこうして洗っていたし、コートなど厚手の物は洗濯に出す事もあったが、今は財布がきびしい。少しでも節約しておきたい。
(どうせ一緒に住むようになったら、私が洗ってあげることになるんだし、フフッ)
彼にはお金の事は心配させたくないので、私が洗っている事は黙っておくつもりだ。
シャワーを浴び終え、部屋の窓を開け放った。
朝の清々しい空気が流れ込み、部屋にこもった湿気が流れ去っていく。
開け放った窓から洗い終えてぎゅうぎゅうに絞り上げた服をシワを伸ばしながら干す。
パン!パン!
「よしっと、」
シャワーを浴びているうちに太陽は登り、日はサンサンと降り注いでいる。手を額に当て空を見上げると雲一つなく、今日もいい天気になりそうだ。
(これなら帰ってくるまでに乾きそうね)
私の服とユウの服が並べられて干されているのを見ていると何とも言えない幸福感に包まれ、寝ている間に感じていた切ない気持ちはいつの間にか消えていた。
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