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アミ族との接近遭遇……かな?
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「当面の方針として、アミ族どもの流れにそいながら、少しずつ横にずれていく。群れも無限に拡がってるわけではないから、いずれ外れるはずだ」
「あい、さ。そのとおりにいきま~す。メアリさんの方針は意外に普通でしたね」
「なにをいうか。ここで奇想天外でバカ受けな案を出せるか」
メアリさんはにょろにょろ、じょろじょろ動きを止めない。なんというか、実に奇想天外な宇宙人だなあ、メアリさんって。こんな生き物地球にゃいないよ。彼女には目があるのかも、どこでしゃべっているのかもわからない。
「あの……アミ族のひとたちには声をかけられないんですか。ちょっと通して、ごめんごめんといいながら行けば、わざわざぶつかってこないでしょ」
「もやもやのいうことも正しい。あいつらとコミュニケーションが取れればな。なに言ってもシカトだよ」
「結局アミ族さんは生き物なんですか、機械なんですか」
「どっちなんだろ。愛想のないやつらさ」
噴射する炎もフルにしたり絞ったりしながら飛んでいるみたいだ。
「フル噴射では宇宙に行くまでにエネルギー尽きちゃうんじゃないか?」
とメアリさん。人工衛星を打ち上げるロケットだってアミ族さんひとりひとりに比べたらはるかに大きいですよね。その噴煙だってものすごい拡がりだ。
アミ族ってコンパクトだよね。なぜ宇宙を目指すんでしょう?
「アミ族はガス惑星で生まれたわけじゃない。生命の発生しやすい岩石惑星で生まれた。海のある岩石惑星。ただ、彼らは自ら進化したのではなく、進化させられたんだ。宇宙に行かなきゃって衝動を深層心理に植えつけられてさ。これって強制された進化、むしろ品種改良というべきものだ」
「自分では望まない進化ですか」
「そう。誰かに望まれて。誰かの目的に沿うように。ていうか、自ら望んで進化するやつはいないんだけど、ね」
こんにちは、哀しみのミジンコガールです。前章に引き続き、登場しました。ちょっとした補足のためです。進化も品種改良も、とてもよく似た現象です。どちらも生き物が別の姿に変化していくのですから。
品種改良の場合、「こういう家畜(作物)が欲しい」という目的が先にあって、良いものをセレクトするのです。いろいろな品種をかけ合わせることもしますし、さらには遺伝子操作なんてものもありますね。
しかし進化には「目的・目標」がありません。よく上げられる例ですが、鳥は空を飛ぶために翼を進化させたのではありません。鳥のもとは羽毛の生えた恐竜といわれますね。羽毛は体温の保持に役立ったかもしれませんし、また役に立たなくても、当人が頑張って生存競争に打ち勝って、子孫を残したりします。子孫のなかには羽毛がどうにも立派で、もはや翼と呼んでもいいような子もいたのでしょう。その子は可能なかぎり自分の体質を生存に役立てようとするでしょう。飛んじゃいます。
つまり翼が進化したので、飛ぶようになったのです。飛ぶために進化したのではありません。どうしても現在から過去を振り返るために、「目的」と「結果」が逆転して見えてしまうのですね。進化には最終的なゴールが設定されてるわけではないのです。
あたしたちの「単為生殖」より個性的な子孫を残しやすい繁殖方法というのはあるようです。そして自然選択とは何者かの意図によって起こる現象ではありません。
いささかまわりくどいお話でしたね。
ではでは。
「まあ、あまり他の種族と交流を持たない連中だからね、詳しいことはわからないのさ。無表情だし。目を二つ持ってるわりには」
こんなに大勢いるのに非社交的とは……なんだかもったいない。
などと漠然と考えていたら、どしん、と音と振動がつたわってきた。ひゃあ、一号機の二の舞いか。
「斥力なんて、なんのその、アミ族がぶっついてきたよ~」
「役に立たねえやつだな」
「あれ、それ僕のこと? 心外だなぁ」
メアリさんとコンピュータはなんだかのんびりやり取りしているし、肝を冷やしているのは私だけみたいだ。このひとたち、もう少し驚いたほうがいいんじゃないかな。
「アミ族がひとりなかに入り込んでいますよ」
「まさか」
メアリさんはぐるりと回った。やはりメアリさんのこの体形でも後ろ前というのがあるんですかね。アミ族は少し傾いだまま、我々から離れたところに立っていた。エビハラ星人よりは大柄、身長がある。触角は短め。でもトーテムポールが突っ立ってるような縦に長いという印象だ。エビハラ星人と違って赤っぽい色をしている。
非社交的という話だったが、彼らのほうから訪ねてくるとは。この際コミュニケーションをはかるか、さもなければテレパシーで情報収集すればいいんだ。
アミ族はそこにいるだけで、なにも働きかけようとはしていない。
「なんとまあ、びっくりだなぁ」
メアリさんもシンプルな感想を述べてくれるし。
「やっぱりテレパシーには反応ないね、このアミ族、カプセルの外側に貼り付いてるだけだからね。ただ、止まって休んでるだけじゃないかな」
いつ入ってきたのかと思っていたんだけど。
「今、宇宙を目指しているとは限らないよね。単に下から逃げてきただけかもしれない」とコンピュータ。
「逃げてきただ? 何から」
「何とはいえないけど、差し渡しは三キロぐらいの島があります」
「島はないだろう」
「浮き島……ですね」
「あい、さ。そのとおりにいきま~す。メアリさんの方針は意外に普通でしたね」
「なにをいうか。ここで奇想天外でバカ受けな案を出せるか」
メアリさんはにょろにょろ、じょろじょろ動きを止めない。なんというか、実に奇想天外な宇宙人だなあ、メアリさんって。こんな生き物地球にゃいないよ。彼女には目があるのかも、どこでしゃべっているのかもわからない。
「あの……アミ族のひとたちには声をかけられないんですか。ちょっと通して、ごめんごめんといいながら行けば、わざわざぶつかってこないでしょ」
「もやもやのいうことも正しい。あいつらとコミュニケーションが取れればな。なに言ってもシカトだよ」
「結局アミ族さんは生き物なんですか、機械なんですか」
「どっちなんだろ。愛想のないやつらさ」
噴射する炎もフルにしたり絞ったりしながら飛んでいるみたいだ。
「フル噴射では宇宙に行くまでにエネルギー尽きちゃうんじゃないか?」
とメアリさん。人工衛星を打ち上げるロケットだってアミ族さんひとりひとりに比べたらはるかに大きいですよね。その噴煙だってものすごい拡がりだ。
アミ族ってコンパクトだよね。なぜ宇宙を目指すんでしょう?
「アミ族はガス惑星で生まれたわけじゃない。生命の発生しやすい岩石惑星で生まれた。海のある岩石惑星。ただ、彼らは自ら進化したのではなく、進化させられたんだ。宇宙に行かなきゃって衝動を深層心理に植えつけられてさ。これって強制された進化、むしろ品種改良というべきものだ」
「自分では望まない進化ですか」
「そう。誰かに望まれて。誰かの目的に沿うように。ていうか、自ら望んで進化するやつはいないんだけど、ね」
こんにちは、哀しみのミジンコガールです。前章に引き続き、登場しました。ちょっとした補足のためです。進化も品種改良も、とてもよく似た現象です。どちらも生き物が別の姿に変化していくのですから。
品種改良の場合、「こういう家畜(作物)が欲しい」という目的が先にあって、良いものをセレクトするのです。いろいろな品種をかけ合わせることもしますし、さらには遺伝子操作なんてものもありますね。
しかし進化には「目的・目標」がありません。よく上げられる例ですが、鳥は空を飛ぶために翼を進化させたのではありません。鳥のもとは羽毛の生えた恐竜といわれますね。羽毛は体温の保持に役立ったかもしれませんし、また役に立たなくても、当人が頑張って生存競争に打ち勝って、子孫を残したりします。子孫のなかには羽毛がどうにも立派で、もはや翼と呼んでもいいような子もいたのでしょう。その子は可能なかぎり自分の体質を生存に役立てようとするでしょう。飛んじゃいます。
つまり翼が進化したので、飛ぶようになったのです。飛ぶために進化したのではありません。どうしても現在から過去を振り返るために、「目的」と「結果」が逆転して見えてしまうのですね。進化には最終的なゴールが設定されてるわけではないのです。
あたしたちの「単為生殖」より個性的な子孫を残しやすい繁殖方法というのはあるようです。そして自然選択とは何者かの意図によって起こる現象ではありません。
いささかまわりくどいお話でしたね。
ではでは。
「まあ、あまり他の種族と交流を持たない連中だからね、詳しいことはわからないのさ。無表情だし。目を二つ持ってるわりには」
こんなに大勢いるのに非社交的とは……なんだかもったいない。
などと漠然と考えていたら、どしん、と音と振動がつたわってきた。ひゃあ、一号機の二の舞いか。
「斥力なんて、なんのその、アミ族がぶっついてきたよ~」
「役に立たねえやつだな」
「あれ、それ僕のこと? 心外だなぁ」
メアリさんとコンピュータはなんだかのんびりやり取りしているし、肝を冷やしているのは私だけみたいだ。このひとたち、もう少し驚いたほうがいいんじゃないかな。
「アミ族がひとりなかに入り込んでいますよ」
「まさか」
メアリさんはぐるりと回った。やはりメアリさんのこの体形でも後ろ前というのがあるんですかね。アミ族は少し傾いだまま、我々から離れたところに立っていた。エビハラ星人よりは大柄、身長がある。触角は短め。でもトーテムポールが突っ立ってるような縦に長いという印象だ。エビハラ星人と違って赤っぽい色をしている。
非社交的という話だったが、彼らのほうから訪ねてくるとは。この際コミュニケーションをはかるか、さもなければテレパシーで情報収集すればいいんだ。
アミ族はそこにいるだけで、なにも働きかけようとはしていない。
「なんとまあ、びっくりだなぁ」
メアリさんもシンプルな感想を述べてくれるし。
「やっぱりテレパシーには反応ないね、このアミ族、カプセルの外側に貼り付いてるだけだからね。ただ、止まって休んでるだけじゃないかな」
いつ入ってきたのかと思っていたんだけど。
「今、宇宙を目指しているとは限らないよね。単に下から逃げてきただけかもしれない」とコンピュータ。
「逃げてきただ? 何から」
「何とはいえないけど、差し渡しは三キロぐらいの島があります」
「島はないだろう」
「浮き島……ですね」
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