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第19話 晩飯
しおりを挟むアユミさんが出勤準備のために帰っていったので、ようやくのんびりとした時間だ。白米を研ぎ、炊飯器にセットする。炊き立てのご飯には何を合わせようか。
炊けるまでの時間で銭湯に寄り、コンビニの店内をうろつきながらお惣菜や冷凍食品を物色する。そういえば肉なんて最近は異世界でしか食べていない気がする。
和風出汁の鶏のみぞれ煮。あーこういうの日本ぽくていいじゃないですか。炊き立てのご飯にオンで更に良きじゃないですか。カップの豚汁も買おう。
そういえば昨日初収入があったのだ。サラダも買う。
意気揚々と帰宅するとふんわりとした米の香りが漂い、炊飯器から湯気が立ち昇っていた。蒸らしに入っている。もう少しだ。
鶏のみぞれ煮を電子レンジに入れ、湯沸ケトルでお湯を沸かす。
湯上がりでもあり、暑い。
じわりと汗が滲む中、軽やかな炊飯器の完了電子音が戦端を開く。総員戦闘配備。電子レンジから鶏のみぞれ煮を出撃させ、豚汁のカップについていた包装を脱ぎ散らかし湯を注ぐ。
沈黙した炊飯器の蓋を開けると、ちりちりと音を立てて輝く白米に思わず息を飲む。研ぎ加減、水加減、パーフェクトな仕事だ。天才か?
すかさず丼によそい、みぞれている鶏を載せる。素晴らしい風景だブラボー。
かぶりつくと柔らかい鶏がほろりととろけ、甘みのある大根おろしが鰹出汁を1匹残らず拘束していた。柔らかくも力強い和風出汁が単体なら淡白な鶏胸肉に絡みつき、真夜中の街灯のように白米を誘っている。
そして米。今の俺の人生の最高傑作といっていい白米。ぱらりとしたやや硬め。だがそれがいい。
箸で強引に引き上げ、口一杯に放り込む。
「よく噛んで食べなさい」
そう言っていた母の顔が思い浮かぶ。
すまない。
鶏が口の中に存在しているうちに次の米を放り込みたい。放り込みたいんだ。おかずは有限なんだ。
口だけの謝罪を終える頃には丼から米が消えていた。
おかしい。まだ豚汁にもサラダにも手を付けていないのに。
更にご飯をよそう。
口一杯に放り込んだ米を豚汁で流し込むのもいい。チープな豚汁だがシンプルに炊き立てご飯に合う。味噌汁と和風出汁の鶏と炊き立ての白米。日本はいいところだ。
お金さえ稼げれば。
腹がいっぱいになってしまったのでサラダは明日食べることにした。
食後の軽い運動に1層の蜘蛛を虐殺してみたがレベルは上がらなかった。200匹以上やっているはずなので蜘蛛じゃ上がらなそうだ。次はスライムで試してみよう。
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