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第21話 ステルスストレスという言い訳
しおりを挟む「ツチノコ、タケノコ、ドッチノコ! ヤリノコ、アイノコ、ハンブンコ! 土槍!」
浮かんでは消えていく疑問を押さえつけ、表情を動かさずに詠唱した土魔法が、敵を下から串刺しにし、トドメを刺す。
「お疲れっす。さいとーさん!」
「お疲れ様です」
「ナイス詠唱でした!」「ナイスです!」
「⋯⋯どうも」
詠唱成功したらナイス詠唱でしたって言うのやめて貰いたい。詠唱内容が全然ナイスじゃない。
午前中からオフィスを出て、ドーリの臨時パーティに混ぜてもらっていた。平日昼間なので流石にプレイヤーは少ない。
そして、そろそろスマホの充電が心許ない。いい加減、モバイルバッテリーを買わねばダメかも知れない。
「それじゃ、この辺で抜けますんで。ありがとうございました」
「あ、こっちこそです! ありでした!」「あざーっす!」
気の良い人達だった。でもこの時間にいるプレイヤーと言うことは、引き籠もらないニートだったりするのだろうか。
最大MPはEPを1300費やして100にした。平日にはNPC商人がおらず、MPポーションガブ飲み作戦もできないので自然回復量を増やさねばやっていけない。
この辺の敵であれば石礫1発と土槍1発で沈むので、休憩を挟みながらの参戦になったがそれなりの戦闘貢献ができた。MP200くらいは欲しい所だ。
まずは充電せねばと、コンセントが使える場所を探す。オフィスに戻る選択肢は持っていない。「朝いれば真面目、夜残っていれば頑張ってる」の頑張ってる評価は、部署の違う俺には必要がない。
大通りから一本南に入った所で赤提灯が目に入る。こんな明るい時間からやっているとは⋯⋯。
そういえば、昼飯はまだだったなと途端に空腹感が押し寄せてくる。心の土俵際は何ら抵抗をする事なく寄り切られ、もつ焼き屋の暖簾をくぐっていた。
「充電ってできます?」
「いいよ。やっとくよアップルかい?」
「はい。アップルです」
Tシャツの店員さんにスマホを渡す。どうやら大義名分が立ってしまった様だ。
「ちょい飲みセットビールと煮込みでお願いします」
「あいよー」
威勢の良い店員さんが早速プレミアムモルツを持ってきてくれる。ちょい飲みセットにはもつ焼きと飲み物2杯が含まれている。遠慮はいらない。
「⋯⋯ブハァ。美味い、もう一杯」
詠唱の後のビールは鉄板だ。飲み干したプレミアムモルツの鮮烈な香りが、吐き出した言葉とともに鼻を抜ける。まだだ、まだ戦える。
やや引き気味の店員さんによって、お代わりともつ煮込みが運ばれてくる。
色の薄いもつ煮込みは上品さすら滲ませているが、こういうのは主役のもつより煮込みに入っているネギが好きだ。一味を振りかけ口の中に放り込む。そしてビール。
うむ。ビールも良いのだがプレミアムは香りがやや強過ぎる。この幸せなネギに合わせるのなら日本酒にすべきだったか。いや、流石にこの時間から日本酒はないな。
俺の心の中の葛藤は、その後にやってきたもつ焼きのせいで無意味となり、追加の日本酒がなくなるころスマホの充電が完了した。目的は達成された。
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