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第49話 東京出張2日目
しおりを挟む小さな赤提灯が並ぶ商家造りのお店の暖簾をくぐる。暖簾には「どぜう」と分かりやすい三文字が縦に書かれていた。
仕切りのない広々とした入れ込み座敷には外国人観光客もチラホラと見える。
田辺さんを上座の奥へと促し、空いている場所に腰を落ち着ける。隣は爺さんが1人、冷酒をチビチビやりながらどじょう鍋をつついていた。
いいねぇ。粋でいなせだねぇ。
「さいとーさんも珍しいところ知ってますね」
「東京を離れると何故か東京らしいものが食べたくなりまして⋯⋯。つい、この間までいたんですけどね」
「あー。わかる気がします」
どじょう鍋と冷酒を注文する。田辺さんはビールだ。
運ばれてきた炭のコンロには、底が浅い鉄鍋にどじょうがぎゅうぎゅうと敷き詰められていた。見た目は少々グロ注意だ。
「「お疲れ様です」」
カチリと乾杯を交わし、冷酒を口に含む。やはり札幌とは気温が違うのか冷たさが心地良い。喉をゆるりと冷ましながら温めていく。
「ハンドルネームについては余り触れないでもらえると助かります」
目を逸らしながらボソリと呟く田辺さん。分かっている皆まで言うな。
「イエス。ユア、マジェスティ」
「おいこら」
「はは⋯⋯。中々、難儀ですね」
「全くです」
どじょう鍋にネギを積んでいく。溢れても気にしない位に盛っていく。
「そんなにネギ被せたらどじょう取れなくないです?」
「えっ?」
「え?」
「どじょうなんてオマケみたいなもんです。これのメインはこのタレで煮たネギですよ?」
「ネギ⋯⋯ですか⋯⋯」
カイザーは何言っているんだろうか。どじょう鍋のどじょうなど出汁を取った後のコンブみたいなものだ。むしろ、主役はこの盛り放題のネギだろう。
山椒を掛けて頂く。そういえば昨日も山椒だったな。
熱々のネギと鼻を抜ける山椒の鮮烈な香り。グビリとやればそれに負けぬ冷酒の吟醸香。火事と喧嘩は江戸の華という奴か。
「そういえば、昨日のお話ですがお受けします」
「そうですか! では早速、法人設立の手続きに入ってくださいね。時間かかりますので」
「⋯⋯展開早いですね」
「そうですかー。それなら今日も上級魔法まで買っちゃえば良かったかもですね」
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「それは⋯⋯流石に先立つ物が厳しいですよ」
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