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第60話 雉も鳴かずば撃たれまい
しおりを挟む「お疲れー。乾杯!」
「「お疲れ(様です)ー!」」
マスクを外したルイさんの音頭とともに恒例の餃子バー打ち上げだ。相変わらず、詠唱で乾いた喉にはサッポロクラシックが染み渡る。ビールは最強の打ち上げツールだ。ジョッキの半分ほどを一息で飲み干す。
「⋯⋯さて」
そう呟いたルイさんを筆頭に、じとりとした複数の視線が突き刺さる。味方はいないようだ。
「さいとーさん、あの連射速度なに!」
「さいとーさんがチートな件について」
「ずるい」
「す、凄かったです!」
「あらぁ、みんな食い付き過ぎよぉ」
いや、1人だけ味方がいた。ガイさんだ。ナイスゲイ。
「詠唱短縮が付くとその分、連射と詠唱成功率が⋯⋯」
「東京で何かあったの?」
「いえ、特には⋯⋯」
ルイさんが前のめりにグイグイ来るが、東京出張は関係ありません。
「東京であったのは仕事の件かな?」
そっちを掘り下げるんかいマスター。
「仕事は⋯⋯そうですね」
「仕事?」
「はい。急遽、会社を辞めて起業しまして。冒険者ギルドを作りました」
「えっ。全然意味が分からない」
目を白黒させるルイさんだが、自分でもそう思います。
「とりあえず、詠唱短縮が取れると詠唱が短い分だけ連射しやすいですし、詠唱成功率も上がります」
「うん。それはさっき聞いたけど」
「冒険者ギルドとは」
「なんか凄いです!」
「あらぁ、気になるわねぇ」
いつの間にか興味の対象が冒険者ギルドになっていた。何だろう、このとっ散らかり感。
「国の暴走エリア対策で予算が付くことになりまして。それの実行部隊として冒険者ギルドという法人を作りました。ススキノ界攻略も成功すれば報酬を出せそうです」
「「おおー」」
どよめく一同に、なるほど権力とはこういうものなのかと何となく腑に落ちる。これは偉くなったと勘違いしないようにしないと暗黒面に堕ちそうだ。
「その他、色々構想段階ではあるんですがススキノ界の攻略してからになりそうです。まずは今週末のイースト界の攻略ですね」
「なるほど。何でそんな話になったのかはさておき悪い話じゃなさそうね。会社辞めて起業とかびっくりしちゃったけど」
「自分としても現実感が乏しくて、まだふわふわしてます」
「それじゃ、土曜日のイースト攻略だけど、消火をもう1人くらい詠唱短縮できたらと思うんだけど⋯⋯できそうな人いる?」
先程とはうって変わり静まり返る場内。
やはり詠唱短縮というニンジンが目の前にぶら下がっていても、一朝一夕に厨二ポエムをスラスラと諳んじる事は難しいのだろう。やや打ちのめされた顔色が並ぶ。
「さいとーさん、何とかならないかな? 私にできることなら頑張ってみようと思うんだけど」
上目使いに懇願するルイさんは中々に破壊力が高い。目を逸らすように目を瞑り、思い付きのアイディアを口にした。
「ここではできないんですが、一つ思い付いたことがあります」
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