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第77話 ゲイバーにて
しおりを挟む「どうしよーママー」
三日三晩燃え続けたススキノ火災は、ススキノの中心部と言ってもいい南5条の飲食店に甚大な被害をもたらした。カウンター上の飲み物を避けながら器用に突っ伏しているルイの職場もまた営業再開の目処が立たないようだ。
「こんな状況じゃ……どうしようもないわねぇ」
ウチの店も直接的な被害はないものの、ススキノ自体の客足が遠のいていて、回復する気配も感じられない。
「アタシも潮時かしらねぇ……」
思わずため息が漏れてしまう。
「学費と家賃がぁぁぁ」
「他の店は探したの?」
「募集してるとこ、ハード店か風俗くらいしかない……」
「……大人しく実家に頼ったら?」
「実家から通学2時間やだぁぁぁ。……というか大学ももうやめたい」
がばりと顔を上げたかと思えばそんな事を言い出した。
「大学も後一年くらいでしょ? 就活困るじゃない」
「ロクな求人ないの! びっくりするくらい!」
「あら、でも折角だから大卒まで頑張ったら? アタシなんて高卒でゲイバーだから潰し効かないのよ?」
「お金払って大学出て、手取り20万円にもならない所に就職しても凄く意味ない気がする。結局夜バイトしないと暮らしていけないもん」
「そうやってススキノから抜け出せなくなるのよ」
「さいとーさん、雇ってくれないかなー」
「またそんな。……でもアリかもしれないわね冒険者」
「冒険者かー。でも冒険者だと安定した仕事じゃないねー。正社員がいいなー」
「正社員が安定なんて幻想よ」
「まーそうかもだけどー」
「決めた。アタシ店たたむわ!」
「ええー! この店、心のオアシスなのにー」
「餃子バーで我慢なさい」
「あそこだと、たまにおっさんに絡まれるんだもん」
「飲みなら付き合ってあげるわよ」
「うー。じゃ私も冒険者やろうかなー」
「あんたはまず大学卒業しときなさいな」
「やだ! 私も大学たたむ!」
「大学たたむって」
「たたむ! 大学たむたむ!」
「可愛く言ってもダメよ。でもイーストもモモちゃん次第だけど、上手くやれば公式EP売りだけで暮らせるかもだし、冒険者ギルドでEP買取が始まればもっと楽かも」
「そうなの!?」
「EP5円とか言ってたから2000EPで1万円よ」
「2000なら全然いける! 中級エリアで1日頑張れば5000くらいはいけそう!」
「でしょ? 下手に仕事するより稼げるのよ」
「オレは冒険王になる!」
「いや、学校は卒業しなさいよ」
そんなこんなでアタシも、自分の店を持ちたいという夢をかなえて3年ほどやっていた店を諦め、専業冒険者になることを決めた。
かなえた夢は思っていたほど良いものではなく、期待は現実に押し潰されていたのだ。
夢という負債を断捨離することで、清々しい気分すら感じていた。
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