異世界災派 ~1514億4000万円を失った自衛隊、海外に災害派遣す~

ス々月帶爲

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第二章 行き着く先は

第六部

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 気圧の差のせいか、こちらに風が向かってきた。私のミディアムヘアがたなびく。

「さながら、ラスボスの降臨…かなぁ」

 よく、スクウェア・エニックスのドラゴンクエストの自慢を、メール等で伝えてくる巻口隊長が言った。ファミコン世代からのゲーマらしい。

「よくぞヴァルキリーに参ったな」

 前に鈴宮に見せてもらった、アニメに出てくる魔王のような荘厳さだ。巻口隊長の言葉が過言には思えなく感じた。

「叔父様!」

 私達が身動みじろぎもせず立ち止まっている間に、パジャシュは開いた扉の部屋の奥、玉座に向かって走っていってしまった。しかも、叔父様…?この先には帝書記長しかいないはずじゃ…

「あ、ちょ、こら。今は客人の前だから!」

 ん?今までの帝書記長の威厳を見せつけるかのような低い声は?

「大丈夫!巻口たちはここの世界の人じゃないから!」

 ま、巻口?!呼び捨て?!

「そんなの分からないじゃないかぁ…え…?ということは、は成功したのか?」
「そうよ?」 
「ってことは、この方々は…」
「神の概念を召喚しようとして現れた人達。神…いえ、同じ人間みたいだしこう言った方が良いかもね」

 パジャシュがまた、おおすみの艦上で見たあの“猛禽類の目”をした。

「伝説の守護者様、と」

 静かに、それでいてしっかりと言った。妙に心に刺さる。

「また、昔話をした方が良いかな?」

 自衛隊が活躍したのは、桐編隊だけじゃなかったのか?

「お父様が来たほぼ直後。お父様がやっつけた神が、私たちの街を混乱に陥れたと勘違いして、スパル皇国が攻めてきたの。理由は単純。スパル皇国は海峡の殆どを領域の中に取り入れている。けど、前代帝書記長の進攻により、ゴミダ閘門を連邦が占領した」

 この世界では、最近まで戦争を行なっていたということか。

「その閘門を取り返そうと、スパル皇国が…」

 巻口隊長が納得するように言った。

「そう。それで、ノーザン海峡海戦が発生した」
「この戦争に関しては、参戦した私が語った方が良いだろう」

 もう威厳を見せつけるのはやめにしたようだ。優しく、それでいて芯が通った声がした。帝書記長は座りながら身を乗り出した。すると、帝書記長の顔を窓から入ってきていた光が照らした。“帝書記長”という名前から先入観で怖い顔か、人を苛つかせるような顔をしているのかと思った。だが、意外と優しそうな、穏やかな雰囲気を醸し出している。
 しかも、割と整った顔立ち。これは、モテてるんじゃないの?

「私は、ノーザン海峡海戦の時、聯合艦隊旗艦である魔動式巡航砲艦『シクシン・ブルゥス』に艦長として乗艦していた」

 と言うことは、帝書記長は海軍出身者なのか。

「我々は海峡へ侵入していく。敵はそれを海峡内で待ち伏せる。海峡には一隻ずつしか入れないから、聯合艦隊は劣勢を極めつつあった。すると、辺りを霧が覆い始めた。視界が悪くなるというのは…やはり恐怖心を掻き立てるものでねぇ。我々は怖気づいてしまったんだ。笑えるだろ」

 帝書記長は、自分で自分を笑った。

「そしたら…霧の中から何が出てきたと思う?」

 思わず、顔を右に向けてしまう。中学生からの癖だ。
 あ、巻口隊長と目が合った。何も分からない、と目で訴えている。
 帝書記長は、私達がそれが何なのかを閃く前にこう言った。

「海上自衛隊と名乗る者たちだ」

 と。
 その言葉で、今までの混沌とした情報が組上がっていく音がした。
 私達より先に“この世界”へ来ていた航空自衛隊、海上自衛隊。最初に消失した、F-35Aの活躍。ノーザン海峡海戦に出現した海上自衛隊…海上自衛隊で消失した艦は、ありあけしかないので恐らくそれだろう。確実に分かったことが一つだけ。
 皆、この世界に来ている。
 私達の世界とこの世界は、何らかの繋がりを持っているのか。偶然か。確か、私達が来たのはパジャシュ達が神の概念を召喚しようとしたから?
 ともあれ、伝説の守護者とは、恐らく二つの出来事における自衛隊の活躍によりそう呼ばれるようになったのだろう。

「そ、その、海上自衛隊というのはもしや、ありあけ…では?」

 巻口隊長が恐る恐る聞いている。真実を知り、頭の中の情報が組上がっていくのは、何故か恐怖を覚えるものだ。

「そうそう!ありあけ。確か、ありあけの調理師が交流のために訪問してるよ」
「え?」

 私達三人は、同時に呆気にとられた。

「噂をすればなんとやら。もう、朝食の時間のようだ」

 私達がさっき入ってきた扉から、一人の男が料理をトレーと一緒に持ってきた。

「朝から公務、お疲れ様です。朝食をお持ちしました。鶏肉に似たお肉を見つけたので、唐揚げと言うものを……」

 目が合った。トレーを持つ手が震え始め、食器がガタガタと震える音が鳴り始める。

「じ、自衛隊?しかも、陸自…?」

 声も震えていた。

「所属と名前は」

 巻口隊長が、冷静に質問した。
 それを聞いた、ありあけの調理師は、目に涙を浮かべ言った。

「か、海上自衛隊…第一、護衛隊群、第五護衛隊……ありあけ…給養員、山口やまぐち晋哉しんや一等海尉…!」
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