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第三章 自衛隊の在り方(前)
第四部
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雲量3は十分晴れだ。気象予報士の資格を持っていない者が判断したとしても雲量3程度で、夜空を覆う程の衛星の光が上空にいる敵散兵を照らさない確率は低いと言える。
「CPに。敵散兵は現在確認可能か」
「CP、第一中隊。上空敵散兵は確認出来るか。送れ」
私が無造作に言ったのに対して、京谷が丁寧に通信した。
第一中隊としての無線連絡は、第一中隊中隊本部班の通信手、京谷が行うらしい。今までは鈴宮がやっていたが、鈴宮は小隊指示に尽力する為の分業だ。
「第一中隊、CP。警衛戦車は、目標を視認している。再度確認せよ」
警衛戦車から見えている……ということは、こちら側にだけ見えないような仕掛けがある。
「煙幕か」
この推察が正しければ。
「射撃目標は月を覆う雲」
「01、小隊長。威力偵察続行。HMGは月を覆う雲を狙え……え?雲ですか?」
鈴宮が無線連絡をした後に問い掛けてきた。私を信用はしてくれているらしい。
敵は魔法が使えると思った方が良い。基本的に何でも出来るとしたら、上空で煙幕のようなものを焚く事も容易いだろう。だって、宙に浮いているんだ。煙が出せない可能性は低い。
そして、空中での煙幕はほぼ雲だ。昼ならまだ距離感が掴めて、雲との判別がつくかもしれないが、ルクスも低い真夜中で衛星の光と被るように展開すれば影が付き黒くなるのでまるで雲なのだ。……まあ、まともに空を見ていない、ただの推察なのだが。
再び視察孔を覗いた。
「01、了解。射撃する」
銃手として体を出している隊員が、HMGの楨桿を二度引き付けた。HMGは、二回引く必要があるのだ。二回引き、ようやく12.7mmの弾が装填される。後は、親指二本で引き金を下に押すだけだ。
発砲炎で一瞬視界が奪われたが、目はすぐ慣れた。2、3発に一発には曳光弾が混じっている。その軌跡を辿る。
やはり撃ち始めはブレてしまうな。しかし今回は連射だ。自衛隊でトリガーハッピーが出来るのは幸運だな。いや、そこではなくて、雲に突き刺さっていく弾を追わなくては。
視察孔じゃ見辛い。
「墨田、どう――」
「敵!発砲炎確認!中隊長の読み通りです!」
私の言葉より先に、墨田が報告した。
煙の向こうから攻撃があったという事か。そして、敵はやはり射程が長い銃を所持していた。
「墨田!下がれ!」
咄嗟に、墨田を車内に引きずり込んだ。
その直後、車外から激しい金属音が聞こえてきた。しかし直ぐに止んだ。WAPCが被弾したのだろう。相手は連射はしてこないのか?私だったら、正確に相手の諸元が分かったら間髪入れずに攻撃をするよう、連射を指命する。そういえば、敵は北門に向かう最中にも攻撃を受けた。そして、被害はほぼ無し。そしたら、我の全力を投入するのが当然だ。
「中隊長。感謝致しますが、偵察ですので。ここで倒れても、覚悟は出来ています」
「ご、ごめん……」
咄嗟の私の行動は、指揮官失格だ。だけど、もう二度と、部下を死なせてなるものか。
「早速!第二射来ます!」
墨田が車内にも聞こえる声量で言った。
上空を見るには、このハッチが邪魔だ。しかし上体を出すのは危険なので、頭も出さずに見る事にする。真上から狙われれば、変わりないが……。
簡素なロックを外し、後ろへ押し上げた。後は手を離し、重力に任せる。
おかげでよく見えた。綺麗な曳光弾の軌跡が、第一分隊が乗るWAPCに迫っていた。
「小隊長、01!攻撃を受けた!銃手負傷!衛生願う」
「01、小隊長。了解。現状、衛生派遣は見込めない。簡易措置をするように」
銃手が負傷してしまったらしい。私の後ろでは、小隊がやり取りをしている。
「しかし、傷口が――」
敵の銃弾は、WAPCだけでなくその周囲までにも弾着した。面制圧だ。視察孔から覗くと、煙幕は既に晴れていた。
「01?01?第一分隊、小隊長。応答せよ。続けろ。01?」
鈴宮が、第一分隊を呼び出し続けている。まさか、無線系統がやられたのか?
「どうした鈴宮」
「回線が不明瞭になってしまいました」
「小隊長?現在、砂嵐にて聞こえない。送れ!」
鈴宮が答えた後、第一分隊から無線が来た。一時的な通信不良?電波妨害?
「01。傷口がどうした」
「再度攻撃を受けた」
話が噛み合っていない。
「了解。傷口がどうした」
「傷口が見当たらない。早急な衛生の派遣を願う」
「了解」
成程。傷口が見当たらない……。危険だが、ここにビルブァターニの人がいてくれれば、敵がどんな攻撃をしてきたのかを分析出来たかもしれない。
「敵が発砲!」
敵の第三射が始まった所で、墨田は車内に身を戻した。丁寧に両開きのハッチを閉じた。
「やはり得られる情報は少ないですね」
墨田は、車内で開口一番そう言った。確かに、上空に対する威力偵察など訓練していない。
「敵の射撃には必ず間隔が空いていました」
墨田が詳細を語る間にも、敵の射撃は続いている。しかし、さっき言った通り、一定の、安定する程一定の間隔を空けての射撃だ。
「少なくとも自動小銃ではないでしょう。個人的にはボルトアクション、狙撃銃ではないでしょうが、ビルブァターニの技術力を見る限り、楨桿を一回一回動かす小銃でしょう」
成程。だからこそ、一定の間隔が空いていたのか。あまり過信すぎるのも駄目だが、理にはかなっている。
「そして、発砲炎を見る限りは、敵は横隊を組んでいる事でしょう」
同時発射、しかも横隊を組み攻撃するという事は、敵同士はコミュニケーションを綿密に取れる。敵は相当の練度があるという事になる。
「CPに。敵散兵は現在確認可能か」
「CP、第一中隊。上空敵散兵は確認出来るか。送れ」
私が無造作に言ったのに対して、京谷が丁寧に通信した。
第一中隊としての無線連絡は、第一中隊中隊本部班の通信手、京谷が行うらしい。今までは鈴宮がやっていたが、鈴宮は小隊指示に尽力する為の分業だ。
「第一中隊、CP。警衛戦車は、目標を視認している。再度確認せよ」
警衛戦車から見えている……ということは、こちら側にだけ見えないような仕掛けがある。
「煙幕か」
この推察が正しければ。
「射撃目標は月を覆う雲」
「01、小隊長。威力偵察続行。HMGは月を覆う雲を狙え……え?雲ですか?」
鈴宮が無線連絡をした後に問い掛けてきた。私を信用はしてくれているらしい。
敵は魔法が使えると思った方が良い。基本的に何でも出来るとしたら、上空で煙幕のようなものを焚く事も容易いだろう。だって、宙に浮いているんだ。煙が出せない可能性は低い。
そして、空中での煙幕はほぼ雲だ。昼ならまだ距離感が掴めて、雲との判別がつくかもしれないが、ルクスも低い真夜中で衛星の光と被るように展開すれば影が付き黒くなるのでまるで雲なのだ。……まあ、まともに空を見ていない、ただの推察なのだが。
再び視察孔を覗いた。
「01、了解。射撃する」
銃手として体を出している隊員が、HMGの楨桿を二度引き付けた。HMGは、二回引く必要があるのだ。二回引き、ようやく12.7mmの弾が装填される。後は、親指二本で引き金を下に押すだけだ。
発砲炎で一瞬視界が奪われたが、目はすぐ慣れた。2、3発に一発には曳光弾が混じっている。その軌跡を辿る。
やはり撃ち始めはブレてしまうな。しかし今回は連射だ。自衛隊でトリガーハッピーが出来るのは幸運だな。いや、そこではなくて、雲に突き刺さっていく弾を追わなくては。
視察孔じゃ見辛い。
「墨田、どう――」
「敵!発砲炎確認!中隊長の読み通りです!」
私の言葉より先に、墨田が報告した。
煙の向こうから攻撃があったという事か。そして、敵はやはり射程が長い銃を所持していた。
「墨田!下がれ!」
咄嗟に、墨田を車内に引きずり込んだ。
その直後、車外から激しい金属音が聞こえてきた。しかし直ぐに止んだ。WAPCが被弾したのだろう。相手は連射はしてこないのか?私だったら、正確に相手の諸元が分かったら間髪入れずに攻撃をするよう、連射を指命する。そういえば、敵は北門に向かう最中にも攻撃を受けた。そして、被害はほぼ無し。そしたら、我の全力を投入するのが当然だ。
「中隊長。感謝致しますが、偵察ですので。ここで倒れても、覚悟は出来ています」
「ご、ごめん……」
咄嗟の私の行動は、指揮官失格だ。だけど、もう二度と、部下を死なせてなるものか。
「早速!第二射来ます!」
墨田が車内にも聞こえる声量で言った。
上空を見るには、このハッチが邪魔だ。しかし上体を出すのは危険なので、頭も出さずに見る事にする。真上から狙われれば、変わりないが……。
簡素なロックを外し、後ろへ押し上げた。後は手を離し、重力に任せる。
おかげでよく見えた。綺麗な曳光弾の軌跡が、第一分隊が乗るWAPCに迫っていた。
「小隊長、01!攻撃を受けた!銃手負傷!衛生願う」
「01、小隊長。了解。現状、衛生派遣は見込めない。簡易措置をするように」
銃手が負傷してしまったらしい。私の後ろでは、小隊がやり取りをしている。
「しかし、傷口が――」
敵の銃弾は、WAPCだけでなくその周囲までにも弾着した。面制圧だ。視察孔から覗くと、煙幕は既に晴れていた。
「01?01?第一分隊、小隊長。応答せよ。続けろ。01?」
鈴宮が、第一分隊を呼び出し続けている。まさか、無線系統がやられたのか?
「どうした鈴宮」
「回線が不明瞭になってしまいました」
「小隊長?現在、砂嵐にて聞こえない。送れ!」
鈴宮が答えた後、第一分隊から無線が来た。一時的な通信不良?電波妨害?
「01。傷口がどうした」
「再度攻撃を受けた」
話が噛み合っていない。
「了解。傷口がどうした」
「傷口が見当たらない。早急な衛生の派遣を願う」
「了解」
成程。傷口が見当たらない……。危険だが、ここにビルブァターニの人がいてくれれば、敵がどんな攻撃をしてきたのかを分析出来たかもしれない。
「敵が発砲!」
敵の第三射が始まった所で、墨田は車内に身を戻した。丁寧に両開きのハッチを閉じた。
「やはり得られる情報は少ないですね」
墨田は、車内で開口一番そう言った。確かに、上空に対する威力偵察など訓練していない。
「敵の射撃には必ず間隔が空いていました」
墨田が詳細を語る間にも、敵の射撃は続いている。しかし、さっき言った通り、一定の、安定する程一定の間隔を空けての射撃だ。
「少なくとも自動小銃ではないでしょう。個人的にはボルトアクション、狙撃銃ではないでしょうが、ビルブァターニの技術力を見る限り、楨桿を一回一回動かす小銃でしょう」
成程。だからこそ、一定の間隔が空いていたのか。あまり過信すぎるのも駄目だが、理にはかなっている。
「そして、発砲炎を見る限りは、敵は横隊を組んでいる事でしょう」
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