仮想現実という現実世界

絢瀬レン

文字の大きさ
12 / 24

ⅩⅠ.最悪の魔女・三門桜

しおりを挟む

「お嬢さん、こんにちは」

「知らないおじさんこんにちは!わたしに何か用ですか?」

「お嬢さんは可愛いからおじさんがお菓子を買ってあげようねー。でも、おじさん今すっごく困ってて、少し手伝って貰いたい事があるんだよー?」



思い出しただけでも気持ち悪い。わたしも手伝うって言ってしまったから悪いけど。大人の男の人を1人"お星さま"にしただけなのに思い出すなんて・・・・・・


「桜ちゃん、大丈夫?少し顔色悪いみたいだけど?」

「奈菜お姉ちゃん、大丈夫だよ!わたしみんなをお星さまにかえすためにがんばるね!」

「うん!桜ちゃんは、ワンス最強の魔法使いって言われてるからきっと出来るよ!」

「奈菜お姉ちゃんだって、すごく強い弓使いじゃない!わたしはふつうの魔法使いだよ?」

「もう、桜ちゃんったら可愛いんだから!」

「えへへ♪」


そう言って万遍の笑みのを見せる桜に思わず「尊い」と言ってしまう奈菜。傍から見ると仲の良い姉妹みたいだ。




「所長、流石に子供たちも巻き込むのは残酷過ぎませんか!?」

「仕方ない事なんだよ絢瀬君。私たち大人とは違い子供たちの純真無垢な心は"この世界"では必要不可欠。国家一大のプロジェクトなんだ。失敗は許されない」

「確かにそうですけど・・・」

「それともあれかね?君の子供を消し去っても構わないのだよ?」

「・・・申し訳御座いません」




『最悪の魔女、隣国の大都市を一夜にして滅ぼす』


「おいおい、マジかよ・・・また"破滅"の記事じゃねーか。しかも隣国の大都市って言ったら殆ど何処か分かってるようなもんじゃね?俺っちの故郷じゃなきゃいいんだけど・・・親父、死んでねーといいんだが」

「あら?あんたの生まれ故郷って隣国だったのね?」

「あ?まあな、名前がペ・ドクって名前の地点で気付くと思ったよ。月詠のお嬢さん?」

「あたしは別に名前になんて興味無いね。そもそもこっちの言葉がそんだけ達者なら言われないと分かんないと思うけど?」

「俺っち幼少時代にはこっちの国に来てるからな?」

「ふーん」


背が高く少しひょろっとした青年と長い黒髪を靡かせた少女は、公園のベンチで男性の広げている新聞の記事を目で追いながら話す。


「それって、もしかしたらわたしの事じゃないかな?」

「!?」


新聞の下から見える細く小さな脚を見て二人の行動が止まる。


「おどろかせてしまってごめんね?わたしの名前は三門桜、まだまだこどもの10さい、小等部4年生!よろしくお願いします!」


そんな二人を気にしないかの様に、自己紹介を始める桜。深々と頭を下げた時にふわっとしたロングの髪が重力に反したように浮いてゆっくりと落ちる。


「なっ·····」


言葉が出てこない。俺っちとした事が警戒状態を完全に解いてしまっていた。しかし·····小等部·····?子供じゃねーか·····
一部の間で"最悪の魔女"とまで呼ばれてるんだぞ?少女一人で街一つを簡単に滅ぼす力があるだと·····?


「おにいさんはNo.17のぺさんだよね?おとなりはNo.18のつきよみのお姉ちゃんでしょ

「何故名前を·····?」

「えへへ♪わたしってNo.10000までの人の顔と名前をすべて記憶してるの!おべんきょう大好き♪」


おいおいおいおい、こいつやべーぞ。なんて記憶力なんだ。その地点でこの子はタダモンではないな·····何とかやり過ごさなければ。


「そんなにわたしから逃げようとしないで?もうわたしおうちに帰るし、おにいさんたちと戦おうとも思わないし、わたしが倒そうとしてるのは"ワンス"の人たちだけだから。あと·····わたしは人の考えてる事ぜーんぶ分かるからヤバイ子とか思われるのは嬉しくないかな?じゃあね!さようなら!」


公園を楽しそうに走り去っていく彼女の姿が段々遠のいていく。何か直接的な攻撃はされていないにも関わらず、ドクは安堵の表情を浮かべていた。


「あんた、情けないわね。たかが"子供"一人に怯えるなんて。あたしみたいにもっと正々堂々としなさいよ。それでもあんた男?なっさけない」

「ははっ·····俺っちは月詠のお嬢さんとは違ってメンタル弱いからな·····すまねぇな」

「まったくもう·····」


そう言って月詠は立ち上がりドクに手を差し伸べる。


「もう夕刻だしお腹も空いたわ。早く帰りましょ?」





隣国の大都市プティング


「鳴海、大丈夫か·····?」

「あなた·····私は大丈夫。でももうこの街は·····」

「なんて力なんだ·····俺達でも歯が立たないなんて·····」

「えへへ♪オジサンにオバサンもすっごく強いね♪わたし凄く嬉しい!この街の人達がもう"お星さま"になってるのに2人だけ輝けないなんて可哀想·····早く死ねよ」


そう言うと"彼女"は目をすっと閉じて詠唱を始める。


「A person controlling. Absolutely retain power of God Zeus in my hand! (大地を司る者よ。絶対神ゼウスの力を我が手に宿せ!)」

「鳴海·····!これ以上は危険過ぎる!戦線離脱するぞ·····!」





「桜ちゃん、おかえり!」

「奈菜お姉ちゃんただいま!んー♪夕ごはんのいい香りがするぅ♪」

「今日は桜ちゃんの大好きなハンバーグオムライスだよ!」

「やったー!奈菜お姉ちゃんのハンバーグオムライスだーいすき!、」


日も沈み始めた大都市、京(きょう)。和をイメージした街並みで家屋も日本家屋の建築物が殆どだ。住宅街にも拘っていて、全てが和風一色の街である。内装にもかなりの拘りがあり、全ての家が和室や居間など、今の日本ですら殆どお目にかからなくなった程の拘りよう。


「ほんと桜ちゃんって可愛いんだから!」


着物姿の奈菜はにこにことしながら桜の事を玄関で眺める。


「えへへ♪ありがとう♪」

「さあ、早く着物にお着替えしてご飯にしましょ?」

「うん!」


日が沈む。やがて街には灯りが燈り始める。優しい蝋燭の火が街並みをより一層幻想的にさせてくれる。しかし、この街の縛りは他の街と違う一見変わった縛りがあった。
市民は街の外へ出る以外は基本和服を身に着ける事。
少し縛りが厳しい街ではあるが環境もよく、風習さえ守れば非常に住みやすい街である。




「最悪の魔女?」

「そっ、最悪の魔女三門桜。茉莉奈はあいつ大っ嫌いなの。糞ガキのくせに魔法は滅法強いし、No.7なのも納得出来るけど。召喚魔法を主とする茉莉奈にとっては遣りづらいかな。ゆうみたいに物理タイプなら勝算はあるかもだけど」

「そっか·····出来れば僕は戦いたくないな·····」

「裕太が仮に戦っても厳しいと思うよ?」

「モモさん、起きてたんですね」

「なかなか寝付けなくてね·····No.7の側近にいる香川奈菜っていう女性がいるんだけど、彼女は世界最強の弓使いなの。1キロ以上離れた相手の心臓を一発で的中させる程の腕前。だからそもそも接近戦に持ち込もうとする地点で無理。物理と魔法、まさに最強タッグよね」

「あら、お詳しい事。確かにあの香川奈菜っていう女はNo.がいくつかも分かってないし、腕前考えたらかなり上位にいる事は間違えないだろうけど。正直あの2人がいる限りはこの世界は改変されたままの感じもするし。ホントイヤになっちゃうわね·····」


気がつくと夜が明け、辺りが段々と明るくなってきていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

才能に打ち砕かれた日から、僕の最強は始まった

雷覇
ファンタジー
ワノクニ、蒼神流・蒼月道場。 天城蒼真は幼き頃から剣を学び、努力を重ねてきた。 だがある日、異世界から来た「勇者」瀬名隼人との出会いが、すべてを変える。 鍛錬も経験もない隼人は、生まれながらの天才。 一目見ただけで蒼真と幼馴染の朱音の剣筋を見切り、打ち破った。 朱音は琴音の命で、隼人の旅に同行することを決意する。 悔しさを抱えた蒼真は、道場を後にする。 目指すは“修羅の山”――魔族が封印され、誰も生きて戻らぬ死地へと旅立つ。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』

KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。 日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。 アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。 「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。 貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。 集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。 そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。 これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。 今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう? ※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは 似て非なる物として見て下さい

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした

藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると 土地を蝕む邪気となって現れる。 それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。 派手な奇跡は起こらない。 けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。 ――その役目を、誰一人として理解しないまま。 奇跡が少なくなった。 役に立たない聖女はいらない。 そう言われ、私は静かに国を追放された。 もう、祈る理由はない。 邪気を生み出す原因に目を向けず、 後始末だけを押し付ける国を守る理由も。 聖女がいなくなった国で、 少しずつ異変が起こり始める。 けれど彼らは、最後まで気づかなかった。 私がなぜ祈らなくなったのかを。

異世界配信〜幼馴染みに捨てられた俺を導く神々の声(視聴者)

葉月
ファンタジー
コルネ村で、幼なじみであり恋人でもあったユリアナと、ささやかな幸福を分かち合って生きていたロイド。 だがある日、ユリアナは女神の愛子として目覚め、国王の命により王都へと連れ去られる。 突然、日常を奪われ、運命に引き裂かれたロイドは、抗う術も持たぬまま、否応なく大きな流れへと呑み込まれていく。 これは、奪われたものを取り戻すため、そして理不尽な運命に抗おうとする、一人の少年の物語である。

処理中です...