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ⅩⅡ.不幸感染
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不幸感染症候群
僕はそう呼んでいる。周りの人間が僕に関わると必ず不幸になる。
思い上がりと言われるかもしれない。
ふざけてると思われるかもしれない。
でもそれが事実。
小さい頃に両親を亡くした僕は父親側のご両親、つまりおじいちゃんおばあちゃんに引き取られた。しかしその二人が謎の急死。僕の両親が亡くなってから僅か四日後の出来事だった。
親戚たちは僕の事を忌み嫌い互いに押し付け合い、結論僕は施設に預けられることになった。
最初は同じ境遇に立つもの同士という事もあり同じ施設の子供たちと仲良くしていたがある日施設の子たちの遠足で乗っていたバスが事故に遭い僕以外の全員が亡くなった。
先生たちは担当した一人以外は別車両のため一人以外は全員無事であったがそれを境に先生たちも僕の事を一歩引いて接するようになっていた。この「感染症」と接すると自分たちが危ない。そう感じ取ったに違いない。
あれから早五年。小学四年生になった僕の運命が動こうとしていた…
桜の木々が舞い散る四月初頭、夜桜市立桜東小学校をはじめ、多くの小学校で今日から新学期を迎えていた。今年はクラス替えが無いので三年の時からの友達と他愛もない雑談が聞こえてくる教室。僕を除いたその教室は何一つ変わらない景色だ。
「昨日のあんぱんレンジャー見た?」
「あのあんぱん、工場で作られてたとかマジウケるよな!」
「やっぱプリンス晃のカッコよさ、いいよね!」
「大人のフェロモンって素敵!」
そんな会話を耳にしながら窓辺の一つ隣で一番後ろの席にいる僕、波川裕也は一人ぽつんと座り窓の外を眺めていた。僕に関わろうとする人は誰も居ない。去年のクラス替えの時は数人から話しかけられたけど、僕に関わると不幸になるから近づかない方がいいと言ったら数日で誰も話しかけて来なくなった。関わった人達が季節外れのインフルエンザにかかっただけで済んだのは僕が突き放したからだろう。死に至らなくて本当に良かったと思っている。
校長先生の長い会話で終幕した全校朝会を終えて一同、教室に戻りクラス朝会が始まる。
「みんな、おはよう。今年も俺が担任だからよろしくな」
短髪黒髪が似合う若い男性、担任の及川遼太郎(おいかわりょうたろう)がみんなの顔を見ながら話す。そこそこのイケメンと学校の女子から人気のある先生だ。
「しかーし、何も変わらない訳ではないぞー?このクラスの新しい仲間を紹介しよう!」
クラスが騒つく。
転校生。
男子なのか女子なのか、どんな人なのか皆が心を踊らす。
「咲花ぁ、入ってこーい」
扉が開くと同時にクラスのみんながそこに注目した。
カリカリと黒板に名前を書く。
「初めまして。咲花奏音(さきはなかのん)です。よろしくお願いします」
奏音がペコリと頭を下げると長いツインテールの髪が揺れ動く。
大人っぽさを醸し出す顔立ちとは正反対な上で結んだツインテールが可愛らしい。
再びクラスが騒つきはじめる。クラスの男子の殆どがその子が一番可愛いと言われそうなほどの美少女だ。
「奏音は東京に住んでいたのだがご両親の都合でこの夜桜にやってきたそうだ。みんな、仲良くするように」
奏音がにこっと微笑むとクラスの男子がその笑顔に惚れ惚れしてる中、及川は話を続ける。
「奏音の席は…急遽だったもので申し訳ないが窓際の一番奥にある席についてくれ」
そういう事か。どおりで隣の席が空いていると思った。クラスメイトが全員いるのに席が余るはずがない。
しかし厄介だ。不幸感染の病気を持つ僕と接触する可能性が高い...
何よりも窓際の席だと隣は1人しかいない。
必然として話す機会が増える。クラスのみんながこちらを睨みつけてるのが分かる。
…分かってる。何とかして引き離さないと彼女が危険だ。
「よろしくね!あなたのお名前は?」
そんな僕の脳内とは裏腹に笑顔をこちらに向ける奏音。
「…浪川裕也。よろしく」
「ゆーやくんね?私まだ夜桜(ここ)に来たばかりだから色々教えてね!」
「…僕に関わると不幸になる。だから君は僕に関わらない方がいい。悪いけど他の子に聞いてくれないかな」
「…え?」
困惑する様子を見せる奏音。当然である。いきなりそのようなことを言われても理解は出来ないだろう。しかし、その後奏音の顔が再び微笑む。
「そっか。君、マザー感染者なんだ...そゆことね...
大丈夫、私には感染者しないから」
「は?」
「だから私はマザー感染者の影響を受けないの。この学校にいるのは聞いたけどこんなに早く見つかるなんて…」
「...?」
「では改めて、ゆーやくん、私はあなたを助けにやってきたのよ!」
一体この子は何を言ってるのだろうか。裕也は理解に困る。
マザー感染者?どういう事だ。
「僕の事をからかってるんでしょ」
「とんでもない!私はこう見えてあなたの様な感染してる人を治療して元の生活に戻すお仕事をしてるのよ!」
「馬鹿馬鹿しい。
さっきも言ったけど、僕に関わらないで。咲花さん気づかない?クラスのみんなが僕がまた関わった子を不幸にさせるって思ってる。
僕はこの学校に来てから関わった何人もの人を殺してしまった死神...
だから咲花さんもみんなと同じ所に行ったほうがいい」
思わず口調が強くなる。
「お前たち、そろそろHR(ホームルーム)はじめたいからいいか?」
遼太郎が二人の会話に水を差す。そして、30分ほどのHRのあと、4年生の教材を渡され下校となった。
「明日から普通に授業あるから時間割をしっかり確認しとく様に!あと日直も明日から始まるから明日の当番は頼んだぞ?」
早い下校時刻。僕は早々に支度をして下校をする。
誰よりも早く教室を出て行く事によってみんなの平穏が戻るなら嬉しいものだ。しかし、
「おい、浪川。お前ちょっとこっちこいや」
大曲晴樹(おおまがりはるき)をはじめとするクラスの不良グループ4人が僕を囲みこむ。
「…何?」
普段は僕の感染病を怖がって近づいて来ないくせに珍しい。
「てめぇ奏音ちゃんと話せたからって調子こいてんじゃねーぞ」
やはりそうか。これだから馬鹿は困る。
こっちは好きで話したわけでもなければ馬鹿から反感を買う事などするわけがない。
「…僕に関わると不幸になるよ?死にたいの?
こっちはみんなが平穏に過ごせる様に早く帰ろうとしてるのにやめて欲しいんだけど」
淡々とした口調でやり過ごそうとする...が、しかし。
「あん?てめぇうぜぇんだよ。関わった人が死ぬだぁ?
んなのなぁ、プラズマチョップで壊せるんだよ!」
「はぁ...」
四年生にもなって戦隊ものの技で何とかしようという考えがお子様だ。僕が大人っぽいからかもしれないけど、非常にレベルが低い。
正直くだらない。
「バカじゃねーのお前」
思わず口走ってしまった。こんな事言ったら次にする事なんて安易に想像出来る。
「このやろー!!」
ほらね。
「二人共いい加減にしなさい!!」
「!!?」
甲高い声が響く。
意外にも喧嘩の仲裁に入ったのはクラス委員で普段は大人しい女の子、葉山菜月(はやまなつき)であった。
「どうして男子ってそうやってすぐケンカするかなー。
いい加減にしないと先生に言っちゃうからね!」
先程まで物々しい雰囲気だったが、一瞬にして静まり返る。
大曲は「チッ」と一言吐き捨てて他の仲間と帰って行った。
「あっ、ありがとう」
「別にクラス委員としての仕事をしただけだからいいけど、浪川くんってやっぱみんなと感じが違うよね。
関わると嫌なことが起こるとか言ってるけど、あんまりそうやってるといつまで経っても友達出来ないよ?」
「うん...」
そんなの分かってる。でも、これはみんなのため。
僕が誰とも関わらなきゃみんな幸せ...
なんだか少し、泣きそうになってしまった。
気が付くと時計の短針は十一の数字を通過し始めていた。
僕はそう呼んでいる。周りの人間が僕に関わると必ず不幸になる。
思い上がりと言われるかもしれない。
ふざけてると思われるかもしれない。
でもそれが事実。
小さい頃に両親を亡くした僕は父親側のご両親、つまりおじいちゃんおばあちゃんに引き取られた。しかしその二人が謎の急死。僕の両親が亡くなってから僅か四日後の出来事だった。
親戚たちは僕の事を忌み嫌い互いに押し付け合い、結論僕は施設に預けられることになった。
最初は同じ境遇に立つもの同士という事もあり同じ施設の子供たちと仲良くしていたがある日施設の子たちの遠足で乗っていたバスが事故に遭い僕以外の全員が亡くなった。
先生たちは担当した一人以外は別車両のため一人以外は全員無事であったがそれを境に先生たちも僕の事を一歩引いて接するようになっていた。この「感染症」と接すると自分たちが危ない。そう感じ取ったに違いない。
あれから早五年。小学四年生になった僕の運命が動こうとしていた…
桜の木々が舞い散る四月初頭、夜桜市立桜東小学校をはじめ、多くの小学校で今日から新学期を迎えていた。今年はクラス替えが無いので三年の時からの友達と他愛もない雑談が聞こえてくる教室。僕を除いたその教室は何一つ変わらない景色だ。
「昨日のあんぱんレンジャー見た?」
「あのあんぱん、工場で作られてたとかマジウケるよな!」
「やっぱプリンス晃のカッコよさ、いいよね!」
「大人のフェロモンって素敵!」
そんな会話を耳にしながら窓辺の一つ隣で一番後ろの席にいる僕、波川裕也は一人ぽつんと座り窓の外を眺めていた。僕に関わろうとする人は誰も居ない。去年のクラス替えの時は数人から話しかけられたけど、僕に関わると不幸になるから近づかない方がいいと言ったら数日で誰も話しかけて来なくなった。関わった人達が季節外れのインフルエンザにかかっただけで済んだのは僕が突き放したからだろう。死に至らなくて本当に良かったと思っている。
校長先生の長い会話で終幕した全校朝会を終えて一同、教室に戻りクラス朝会が始まる。
「みんな、おはよう。今年も俺が担任だからよろしくな」
短髪黒髪が似合う若い男性、担任の及川遼太郎(おいかわりょうたろう)がみんなの顔を見ながら話す。そこそこのイケメンと学校の女子から人気のある先生だ。
「しかーし、何も変わらない訳ではないぞー?このクラスの新しい仲間を紹介しよう!」
クラスが騒つく。
転校生。
男子なのか女子なのか、どんな人なのか皆が心を踊らす。
「咲花ぁ、入ってこーい」
扉が開くと同時にクラスのみんながそこに注目した。
カリカリと黒板に名前を書く。
「初めまして。咲花奏音(さきはなかのん)です。よろしくお願いします」
奏音がペコリと頭を下げると長いツインテールの髪が揺れ動く。
大人っぽさを醸し出す顔立ちとは正反対な上で結んだツインテールが可愛らしい。
再びクラスが騒つきはじめる。クラスの男子の殆どがその子が一番可愛いと言われそうなほどの美少女だ。
「奏音は東京に住んでいたのだがご両親の都合でこの夜桜にやってきたそうだ。みんな、仲良くするように」
奏音がにこっと微笑むとクラスの男子がその笑顔に惚れ惚れしてる中、及川は話を続ける。
「奏音の席は…急遽だったもので申し訳ないが窓際の一番奥にある席についてくれ」
そういう事か。どおりで隣の席が空いていると思った。クラスメイトが全員いるのに席が余るはずがない。
しかし厄介だ。不幸感染の病気を持つ僕と接触する可能性が高い...
何よりも窓際の席だと隣は1人しかいない。
必然として話す機会が増える。クラスのみんながこちらを睨みつけてるのが分かる。
…分かってる。何とかして引き離さないと彼女が危険だ。
「よろしくね!あなたのお名前は?」
そんな僕の脳内とは裏腹に笑顔をこちらに向ける奏音。
「…浪川裕也。よろしく」
「ゆーやくんね?私まだ夜桜(ここ)に来たばかりだから色々教えてね!」
「…僕に関わると不幸になる。だから君は僕に関わらない方がいい。悪いけど他の子に聞いてくれないかな」
「…え?」
困惑する様子を見せる奏音。当然である。いきなりそのようなことを言われても理解は出来ないだろう。しかし、その後奏音の顔が再び微笑む。
「そっか。君、マザー感染者なんだ...そゆことね...
大丈夫、私には感染者しないから」
「は?」
「だから私はマザー感染者の影響を受けないの。この学校にいるのは聞いたけどこんなに早く見つかるなんて…」
「...?」
「では改めて、ゆーやくん、私はあなたを助けにやってきたのよ!」
一体この子は何を言ってるのだろうか。裕也は理解に困る。
マザー感染者?どういう事だ。
「僕の事をからかってるんでしょ」
「とんでもない!私はこう見えてあなたの様な感染してる人を治療して元の生活に戻すお仕事をしてるのよ!」
「馬鹿馬鹿しい。
さっきも言ったけど、僕に関わらないで。咲花さん気づかない?クラスのみんなが僕がまた関わった子を不幸にさせるって思ってる。
僕はこの学校に来てから関わった何人もの人を殺してしまった死神...
だから咲花さんもみんなと同じ所に行ったほうがいい」
思わず口調が強くなる。
「お前たち、そろそろHR(ホームルーム)はじめたいからいいか?」
遼太郎が二人の会話に水を差す。そして、30分ほどのHRのあと、4年生の教材を渡され下校となった。
「明日から普通に授業あるから時間割をしっかり確認しとく様に!あと日直も明日から始まるから明日の当番は頼んだぞ?」
早い下校時刻。僕は早々に支度をして下校をする。
誰よりも早く教室を出て行く事によってみんなの平穏が戻るなら嬉しいものだ。しかし、
「おい、浪川。お前ちょっとこっちこいや」
大曲晴樹(おおまがりはるき)をはじめとするクラスの不良グループ4人が僕を囲みこむ。
「…何?」
普段は僕の感染病を怖がって近づいて来ないくせに珍しい。
「てめぇ奏音ちゃんと話せたからって調子こいてんじゃねーぞ」
やはりそうか。これだから馬鹿は困る。
こっちは好きで話したわけでもなければ馬鹿から反感を買う事などするわけがない。
「…僕に関わると不幸になるよ?死にたいの?
こっちはみんなが平穏に過ごせる様に早く帰ろうとしてるのにやめて欲しいんだけど」
淡々とした口調でやり過ごそうとする...が、しかし。
「あん?てめぇうぜぇんだよ。関わった人が死ぬだぁ?
んなのなぁ、プラズマチョップで壊せるんだよ!」
「はぁ...」
四年生にもなって戦隊ものの技で何とかしようという考えがお子様だ。僕が大人っぽいからかもしれないけど、非常にレベルが低い。
正直くだらない。
「バカじゃねーのお前」
思わず口走ってしまった。こんな事言ったら次にする事なんて安易に想像出来る。
「このやろー!!」
ほらね。
「二人共いい加減にしなさい!!」
「!!?」
甲高い声が響く。
意外にも喧嘩の仲裁に入ったのはクラス委員で普段は大人しい女の子、葉山菜月(はやまなつき)であった。
「どうして男子ってそうやってすぐケンカするかなー。
いい加減にしないと先生に言っちゃうからね!」
先程まで物々しい雰囲気だったが、一瞬にして静まり返る。
大曲は「チッ」と一言吐き捨てて他の仲間と帰って行った。
「あっ、ありがとう」
「別にクラス委員としての仕事をしただけだからいいけど、浪川くんってやっぱみんなと感じが違うよね。
関わると嫌なことが起こるとか言ってるけど、あんまりそうやってるといつまで経っても友達出来ないよ?」
「うん...」
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