仮想現実という現実世界

絢瀬レン

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ⅩⅩ.元刑事

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「さて、ここがマーケットプレイス市かぁ。薬物犯罪の温床所と言われている街ねぇ。街の入口付近でも違法ドラッグの香りがぷんぷんしてるじゃねぇか。堤さんよぉ、こいつは野放しに出来ねぇトコだなぁ」

「そうですね。この街は元々は土地柄、露天商が盛んな街だったのですが、今は無法地帯に近い状態です。あと……」

「あ?どうしたぁ?何か言いたげじゃねぇかぁ」

「歩きタバコは辞めてください。もう何回目ですか、渡邉さん」

「おっとすまねぇ、刑事時代のクセでねぇ。タバコ吸いながら仕事すると捗るんだよぉ」

「元、治安維持のお仕事をされたとは思えませんね。ルールを守ってください。そしてぼくの方が年上なので敬語をきちんと使ってく、だ、さ、い!」

「ははは、そうでしたそうでしたぁ。すんませぇん、堤のにぃさん」

「……もういいですよ」


他愛もない話をしている二人組の男性。どちらも高身長でスラットした体つきだ。咥えタバコをして、黒のズボンに手を入れている渡邉と呼ばれた男。そしてスーツをビシッと着こなして、一言で言うなら誠実な人と呼ぶのがしっくりとくる堤と呼ばれた男。

「……さて、本題に入ります。実はこの街で不可解な殺人事件が起こってるんですよ」

「不可解な殺人事件だぁ?」

「死体が消えるんです……」

「は?」

「普通の反応ですね」

「いや、言ってることがおかしいだろうよぉ。死体が消えるだぁ?神隠しじゃねぇんだからありえねえだろぉ」

「いえ、何一つおかしくありませんよ。人が見ている目の前で消えるんですから」

「そいつはすげぇトリック使ってんなぁ。そんな話先輩デカからも聞いた事ねぇぜぇ?」


渡邉はパーマかかっている頭を掻きむしる。


「トリックならまだいいですよ。恐らくですがこれは人体消失の魔法では無いかと思います。人を消すだけなら中位魔法、存在や人々の記憶も消しされるのなら上位魔法です」

「なんでもありでやり放題だなぁそりゃ。こいつは一筋縄ではいかねぇ案件だぁ」

「……怖いですか?」

「いいや、その逆だ。この手で犯人をとっ捕まえて制裁する。早く試してみてぇんだよ。オレに宿りし炎の力ってやつをな」


こいつはやべぇ。人を殺したくてゾクゾクするぜ。オレは警察なんて肩書きはあったが、そもそも人を焼き殺すのが趣味な殺人鬼さ。誰もオレが連続殺人鬼なんて思ってないみたいだがな。


「……渡邉さんの笑みが不気味です。その笑い方辞めてください。不快感を与えます」

「そいつはすまねぇ。犯人とっちめて平和な街にしてやりてぇんだよぉ」

「……そうですね」




マーケットプレイス本市場


「危険危険言われながら随分賑わってるじゃねぇか」


街の内部に入った時、危険な香りはするものの、あまりの"平和"さに拍子抜けした。


「そうですね。ここは観光客向けの表市場ですから。一般的に食するものやゲテモノ、珍しい装飾品など幅広くありますよ」

「しっかしなぁ、わっかんねぇよぉ。普通に観光客は多いし、商人の連中も何も知らねぇみたいな感じじゃねぇかよぉ」


まるで今まで事件や事故なんてものは起こったことがないと言わんばかりの賑わい。
人々は縦横無尽に交わり売買を続ける。


「なぁ、堤の兄さんよぉ、どうしてこんなこの街は普通を装ってるんだあ?」

「渡邉さん、何か勘違いしてるみたいですが普通を装ってるのでは無く普通なんです。人が死のうがいなくなろうが関係ないんです。皆さん生きることに必死ですから。それにこの街には危険なマフィアもいます。いちいち気にしてないですよ」

「どんだけやべぇ街なんだよ。それに裏路地にも露店がびっしりあるじゃねぇか。なんなんだここは……!?」

「この国の平均所得って知ってますか?

「何だよ急に」

「質問に答えてください」

「すまんが分からない」

「年収約80万円です」

「いや暮らしてけねぇだろ!?」

「そうです。この街だけで考えるなら一般的な社会人で年収50万円弱。飢え死にしてしまいます。当然政府の支援もありません。だから露天商を仕事の休日を使ってするんです。食材、衣服、装飾品を。
でもみんな同じ事してたら売り上げになりませんよね?だからマフィアから危ない品を買って高値で転売する様になったんですよ」

「そしてその品を求めて多方面から人が来る。……正に負の連鎖だな」

「そういう事です。この街はそんな場所なんです。渡辺さん、先ずは聞き込みからしていきましょう」

「……ああ。そうしようか」
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