燃え尽きた灰から蘇るもの

庵ノ雲

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回想:過去の光 - 騎士と魔導士の絆(アルフォンス視点)

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雨上がりの庭園で、薔薇の香りが漂っていた。
アルフォンスは革鎧ではなく普段着でベンチに腰掛けている。

あの時のことは今でも鮮明に覚えている。

俺が17歳で副団長に抜擢され、魔導師団で実力が伸び始めた彼女が15歳。
二人で初めて遠征先の小さな村を訪れた帰り道。春の初めだったかことだった。

「アルフォンス様! この花……覚えてますか?」

アリシアが白い小さな花を指さしていた。
名もない野草だったが、彼女が笑顔で言うと特別な花のように感じられた。

「ああ。去年の夏に君が教えてくれた花だな。
 確か『月の涙』という名前だったか?」

「はい! 良く覚えていてくれましたね!」

そう言って彼女は嬉しそうに微笑んだ。

陽の光を浴びて輝く金色の髪と青い瞳。
その笑顔を見るだけで俺の心は温かくなった。



今思えばあの頃の俺たちはただ無垢なだけだった。
お互いに使命を背負いながらも、それでも未来を信じることができた。

(だが、それがもう戻らない日々になった)

アリシアが偽勇者カズマの虜となり、自分を裏切った瞬間から
全てが崩れ落ちていった。彼女はもうかつての面影を残していない。



騎士団長拝命を間近に控えた19歳になった俺と、
アリシアが魔導師団のエースとして活躍するようになった頃。

俺が以前の日課以上の剣の稽古を終えた夕暮れ時、
訓練所の片隅で汗を流しているとアリシアが駆け寄ってきた。

「アルフォンス様! モンスター討伐任務お疲れ様でした!」
「ありがとう。しかし今回は怪我人も多く出してしまった……俺は未熟だな」

アリシアは首を振り、俺の手を取った。
「いいえ。貴方はいつも必死に戦っています。私も貴方と共に戦いたい……
 もっと強くなって一緒にこの国を守りましょう」

彼女がそう言ってくれると力が湧いてくる気がした。

「ああ、共に頑張ろう……だが……何かあれば俺は君を守りたい」

俺は彼女の手を強く握り返した。

(俺たちは同じ志を持ち、互いに支え合っていたんだ)

アリシアは優秀な魔導士でありながら控えめで純粋な女性だった。
俺がどんなに苛烈な任務から帰還しても彼女は笑顔で迎えてくれる。

俺もそんな彼女を愛していた。
だからこそ騎士団長として、国のために戦うだけでなく、
彼女を守るために強くなり続けようと誓っていた。



夜空を見上げる時間が好きだった。
星々が煌めく空の下で二人だけで過ごすひととき。

「アルフォンス様……
 私たち婚約してますが結婚はいつになるのでしょうね?」

彼女の唐突な言葉に驚きつつも俺は答えた。

「俺も君と早く一緒になりたいさ。だが今はまだその時ではない。
 この国はまだまだ危機に瀕しているからな」

「分かってます。でも夢見るくらいは良いでしょう?」

アリシアの柔らかな微笑みを
今も昨日のことのように思い出せる。



しかし……あの時俺がもっと強ければ。
あるいは勇者としての啓示が世界に伝わっていれば。

いや……何を言ってももう遅い。アリシアは戻らない。
偽勇者カズマの手に堕ちてしまったのだから……

俺の中で何かが弾けてしまった。

今まで信じていたもの全てが嘘に思えてしまい、
憎しみと悲しみが心を埋め尽くしていき……絶望の果てに壊れた。

リーンと出会い、彼女おかげで少しだけ希望を取り戻したが
かつての幸せな日々はもう戻らない。

(世界の人々を救う……だが……あの男は許せない……)

俺は立ち上がり再び歩き出す。
女神フィリアと聖女リーンと共に魔王を討つ勇者として。

そして……かつての騎士団長としてではなく一人の復讐者として。
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