燃え尽きた灰から蘇るもの

庵ノ雲

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召喚勇者の決断 - カズマside

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帝国首都の豪奢な宮殿内で和馬は窓際に立っていた。
午後の陽光が差し込む執務室で、彼は複数の報告書を眺めていた。

「なるほど…… '解放者' と '救済者' か」

彼は唇を歪める。噂の内容は耳に届いていた。

隻腕隻眼の男と聖女のコンビが各地の村々を救っている。
しかも魔族や魔物を撃退し幹部クラスを葬ったこともあるという。

(どちらかは、十中八九……アルフォンスだな)

和馬は確信を持って呟く。
帝国での地位を築いた今では忘れかけていた男だったが……

(俺の破滅フラグは……やはり残ってしまっていたか……)

異世界転生における "破滅テンプレ" の回避策――

和馬は日本では異世界転生物語をいくつも読み漁ってきた。
だからこそ自分だけは同じ轍を踏まないと心に誓ってきたつもりだった。

『印象操作』:魅了で民衆も洗脳する。いや……俺が操れる人数は限られてる。
『暗殺』:実行する人材や信頼関係を構築するのが難しい。バレれば信用失墜だ。
『冤罪』:冤罪を被せて直接対決?逮捕して断罪?……無理がある。

全て悪手だと判断した。どれも何かしらの粗があり不確定要素がある。

(となると……正道を征くしか道はないか)

彼は書類を置き深く考え込んだ。

"解放者" と "救済者" は確かに魔王軍幹部を倒したらしい。
しかし自分は――召喚勇者として認められた存在である自分なら、
もっと大きな獲物を仕留めることで名を揚げることができるはずだ。

(そうだ……四天王だ)

帝国が把握している魔族側の有力幹部――四天王と呼ばれる存在がいる。
その一角を落とすことができれば……
市井での評判も自身へ傾くだろうし真の実力を見せつけることができる。

『勇者システム』

それが和馬が召喚時に『魅了』と共に獲得したもうひとつの能力であった。

この世界の人間には無い "レベル" という概念を彼だけが持っている。
経験値を得てレベルアップすることでステータスが向上するうえ、
特定の条件で新しいスキルも習得する。

普通なら時間と経験で培うものをシステム的に早回しできるのだ。

和馬はそれを活かすべく努力を重ねてきた。
武術訓練。魔法の研究。実戦演習。

彼は怠惰ではなかった。むしろ、
帝国召喚勇者として"戦闘力だけ"は相応しい資質を持っていたと言える。

ただし――

ひとつだけ足りないものがあった。

命の危険を顧みず敵と向き合い続ける胆力。根性とも言える。

それさえ備われば彼は本当の意味で最強クラスの戦士となっただろう。

(いや……それでも十分すぎるぐらい強いはずだ)

彼は自分の才能を信じていた。
少なくともアルフォンスよりも優位に立てる実力は備えているはずだと。

「アルフォンス……お前の活躍は認めてやるよ。
 けど最終的には俺が上を行く。それが真の勇者なんだからな」

和馬は自身の『勇者システム』を使って能力を確認する。
レベル120――アルフォンスの左腕を奪った時の3倍以上のステータスだ。

窓の外を見つめながら和馬は小さく呟いた。

「待っていろ四天王。次なる魔王軍討伐では俺が英雄となる」




----


帝国領東部――魔族支配地域との境界に近い古城。
暗雲立ち込める空の下で、石造りの城壁が不気味な影を落としていた。

魔王軍の四大幹部――
「四天王」のひとりグラヴィウスは執務室の机に報告書を広げていた。

「……これが最新の戦況報告か」

彼は静かに呟く。

銀髪に鋭い紫水晶のような瞳。鋭利な牙と翼を持つ半竜人種の青年。
端正な顔立ちだがその内には底知れぬ冷徹さを秘めていた。
四天王最年少かつ最も苛烈な指導者とされる存在だった。

『召喚勇者カズマは帝国首都に腰を据えて出陣の準備をしている』

『一方で"解放者"と"救済者"は……各地の重要拠点ではなく勇者や帝国が
 目も向けないような村々を救いながら移動しているようだ』

部下から上がってきた情報によれば――
隻腕隻眼の男と純白の衣をまとった少女が行動を共にしている。

彼女は聖女と呼ばれており民衆からは絶大な支持を集めているらしい。
だが問題は「解放者」の方だった。

「我が方の将を何人も討ち取ったということか……」

グラヴィウスは報告書にある名を指でなぞる。
いずれも魔族側では精鋭とされた者たちだ。

「これは看過できん。我々の威厳に関わる問題だ」

彼は決断した。召喚勇者はともかく――
この"解放者"は放置すれば大きな障害になりうる。

「手を打つ必要があるな。今すぐ魔王陛下にご報告しよう」

その言葉と同時に彼は席を立つ。
冷ややかな光を宿した瞳はすでに謁見の間に向かって行った。
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