21 / 29
魔獣王に狙われる獲物
しおりを挟む
西方の砂漠地帯が血で染まっていた。
「今日もまた……同胞たちが消えていく……」
ヴェインは四本の腕を大地につき、跪くように戦場を見つめていた。
影のような黒い毛皮が砂塵にまみれ、四本の腕はそれぞれ異なる武器を握っていた。
魔剣に槍斧、炎を帯びた弓矢、そして氷の短杖—全てが血と砂に汚れていた。
「人間どもめ……」
実際のところヴェインと配下達は、この戦線にて倒された同胞の数とは桁違いの
帝国軍の人間を引き裂いてきている。
ヴェインにとって配下は固い絆で結ばれた仲魔であり、人間は動物程度と思っている。
「召喚勇者……カズマと言ったか」
帝国が異世界より召喚した勇者。
かつて幾度も魔族を率いた魔王達を倒す存在。
この世界の人間達とは明らかに別次元の存在。
召喚勇者カズマは強力な特殊能力を持ち、異常な成長速度を示している。
「"解放者"と"救済者"もだが……奴も野放しには出来ない」
しかしヴェインは歯噛みする。その成長速度が厄介だ。
下手に戦えばこちらが痛手を負い時間を与えることになるかもしれない。
「だが……」
ヴェインは砂漠の向こうに広がる星空を見上げる。
そこに広がる夜空は赤茶けた大地とは対照的に清らかだった。
「魔王様の御命令だ。全力を持って奴を排除せよと」
その命令は絶対だった。自分達の主君—偉大なる魔王の意思なのだ。
たとえこの身が砕けようと遂行しろと本能が訴えている。
「ふん……吾輩の力を思い知らせてやる!」
ヴェインは闘志を燃やした。
魔獣王と恐れられる自分の力があれば—例え召喚勇者であろうと倒せるはずだ。
それが魔王様の御意志なのだから。
「カズマ! 出てこい! この四天王ヴェイン様が直々に相手をしてやろう!!」
彼の咆哮は砂漠全体に響き渡る。
帝国の軍勢が狼狽え始めるのが遠くからでも分かった。
「召喚勇者カズマよ!! もし貴様が臆病者ではないなら!! 戦場に姿を現せ!!」
その声には挑発だけでなく明らかな殺意が込められていた。
召喚勇者と四天王の対決—それはまさに魔界と帝国の運命を賭けた戦いとなるのだ。
「来い! カズマ!」
ヴェインは拳を固めた。
その姿はまるで闇の化身のような威圧感を放っていた。
----
「カズマ様っ! 四天王ヴェインより通達でございますっ!」
西部戦線の最前線から早馬が駆け抜けた。
その報は瞬く間に帝都に達し、勇者カズマのもとに届けられた。
「なんだと? 一騎打ちだと?」
和馬は不満げに眉をひそめた。彼が狙っていたのは北部戦線のリザミア。
噂によれば美しいドラゴン族の魔導師とのことだ。
(オンナなら『魅了』でイチコロだと思ってたのに……)
召喚時に手に入れた「魅了」のスキルは異性を虜にすることができる。
リザミアを落として経験値を奪う—そんな算段だった。
(しかも気に入れば俺の女にするってのもアリだしな)
この世界をゲームや異世界転生や召喚モノと考えている、
日本の元高校生だった和馬は効率的なレベル上げを常に考えていた。
『勇者システム』と『魅了』を駆使し、四天王ですら「オンナ」なら利用する。
「ヴェインってどんな奴だ?」
苛立ちを隠せず問いただすと側近の騎士が答えた。
「ヴェインは影のような毛皮に四本の腕を持つ獣人型魔族だそうです」
「ふん。男かよ。まったくつまらん。俺のスキルが使えねぇじゃねえか」
和馬は舌打ちする。
「こっちは『魅了』があるからオンナ相手なら楽勝だったのに……
男タイプだったら実力勝負しかないじゃねえかよ」
「でも一騎打ちなんて申し出を断ったら格好悪いんじゃないですかぁ?」
そう助言するのは魅了で洗脳された側近アリシア。
もとはアルフォンスの婚約者だった女だ。
彼女の美しさと純朴な性格に惹かれ和馬は魅了を使った結果、
アリシアは和馬の忠実な下僕となってしまった。
「うるさいな! お前ら女どもは黙って俺の言うことを聞け!」
和馬はアリシアたちに怒鳴りつけた。もう一人のヒーラーも怯える。
「勇者様を困らせないでくれ」
騎士団から派遣された側近騎士を宥めると和馬は不満げに吐き捨てた。
「仕方ねぇ……行くか。ここで逃げたら俺が弱虫みたいに言われるからな」
「カズマさまぁ~」
アリシアは嬉しそうに寄り添う。
和馬は不貞腐れた様子で立ち上がった。
(まあいい。ヴェインとやらを倒したら次はリザミアだ。早くケリをつけよう)
心の中で計算しながら西部戦線に向けて旅立つのだった。
「今日もまた……同胞たちが消えていく……」
ヴェインは四本の腕を大地につき、跪くように戦場を見つめていた。
影のような黒い毛皮が砂塵にまみれ、四本の腕はそれぞれ異なる武器を握っていた。
魔剣に槍斧、炎を帯びた弓矢、そして氷の短杖—全てが血と砂に汚れていた。
「人間どもめ……」
実際のところヴェインと配下達は、この戦線にて倒された同胞の数とは桁違いの
帝国軍の人間を引き裂いてきている。
ヴェインにとって配下は固い絆で結ばれた仲魔であり、人間は動物程度と思っている。
「召喚勇者……カズマと言ったか」
帝国が異世界より召喚した勇者。
かつて幾度も魔族を率いた魔王達を倒す存在。
この世界の人間達とは明らかに別次元の存在。
召喚勇者カズマは強力な特殊能力を持ち、異常な成長速度を示している。
「"解放者"と"救済者"もだが……奴も野放しには出来ない」
しかしヴェインは歯噛みする。その成長速度が厄介だ。
下手に戦えばこちらが痛手を負い時間を与えることになるかもしれない。
「だが……」
ヴェインは砂漠の向こうに広がる星空を見上げる。
そこに広がる夜空は赤茶けた大地とは対照的に清らかだった。
「魔王様の御命令だ。全力を持って奴を排除せよと」
その命令は絶対だった。自分達の主君—偉大なる魔王の意思なのだ。
たとえこの身が砕けようと遂行しろと本能が訴えている。
「ふん……吾輩の力を思い知らせてやる!」
ヴェインは闘志を燃やした。
魔獣王と恐れられる自分の力があれば—例え召喚勇者であろうと倒せるはずだ。
それが魔王様の御意志なのだから。
「カズマ! 出てこい! この四天王ヴェイン様が直々に相手をしてやろう!!」
彼の咆哮は砂漠全体に響き渡る。
帝国の軍勢が狼狽え始めるのが遠くからでも分かった。
「召喚勇者カズマよ!! もし貴様が臆病者ではないなら!! 戦場に姿を現せ!!」
その声には挑発だけでなく明らかな殺意が込められていた。
召喚勇者と四天王の対決—それはまさに魔界と帝国の運命を賭けた戦いとなるのだ。
「来い! カズマ!」
ヴェインは拳を固めた。
その姿はまるで闇の化身のような威圧感を放っていた。
----
「カズマ様っ! 四天王ヴェインより通達でございますっ!」
西部戦線の最前線から早馬が駆け抜けた。
その報は瞬く間に帝都に達し、勇者カズマのもとに届けられた。
「なんだと? 一騎打ちだと?」
和馬は不満げに眉をひそめた。彼が狙っていたのは北部戦線のリザミア。
噂によれば美しいドラゴン族の魔導師とのことだ。
(オンナなら『魅了』でイチコロだと思ってたのに……)
召喚時に手に入れた「魅了」のスキルは異性を虜にすることができる。
リザミアを落として経験値を奪う—そんな算段だった。
(しかも気に入れば俺の女にするってのもアリだしな)
この世界をゲームや異世界転生や召喚モノと考えている、
日本の元高校生だった和馬は効率的なレベル上げを常に考えていた。
『勇者システム』と『魅了』を駆使し、四天王ですら「オンナ」なら利用する。
「ヴェインってどんな奴だ?」
苛立ちを隠せず問いただすと側近の騎士が答えた。
「ヴェインは影のような毛皮に四本の腕を持つ獣人型魔族だそうです」
「ふん。男かよ。まったくつまらん。俺のスキルが使えねぇじゃねえか」
和馬は舌打ちする。
「こっちは『魅了』があるからオンナ相手なら楽勝だったのに……
男タイプだったら実力勝負しかないじゃねえかよ」
「でも一騎打ちなんて申し出を断ったら格好悪いんじゃないですかぁ?」
そう助言するのは魅了で洗脳された側近アリシア。
もとはアルフォンスの婚約者だった女だ。
彼女の美しさと純朴な性格に惹かれ和馬は魅了を使った結果、
アリシアは和馬の忠実な下僕となってしまった。
「うるさいな! お前ら女どもは黙って俺の言うことを聞け!」
和馬はアリシアたちに怒鳴りつけた。もう一人のヒーラーも怯える。
「勇者様を困らせないでくれ」
騎士団から派遣された側近騎士を宥めると和馬は不満げに吐き捨てた。
「仕方ねぇ……行くか。ここで逃げたら俺が弱虫みたいに言われるからな」
「カズマさまぁ~」
アリシアは嬉しそうに寄り添う。
和馬は不貞腐れた様子で立ち上がった。
(まあいい。ヴェインとやらを倒したら次はリザミアだ。早くケリをつけよう)
心の中で計算しながら西部戦線に向けて旅立つのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる