燃え尽きた灰から蘇るもの

庵ノ雲

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カズマVS四天王ヴェイン -決着-

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「はっ……これならどうだ!?」


和馬はレベルアップによって得た自信と勇者システムの補正に溺れていた。
ヴェインの四本腕から放たれた大地をヒビ割る猛攻に耐えれた事で、
ついに反撃のターンに入れると確信したからだ。

「勇者カズマ様のチカラを見せつけてやるっ!」

和馬が動き出した瞬間、ヴェインの表情が曇る。

「この男……! 戦いを舐めてるのか!」

和馬の剣戟は確かに速く正確だった。だがそこに一切の信念も誇りもない。
ただレベルアップとスキル獲得の産物でしかない。

「くっ……!」

ヴェインの漆黒の毛皮が切り裂かれていく。
和馬の放つ剣技は見た目だけは派手で勇者の威厳すら感じさせた。

「カズマさまぁっ! すごいですぅっ!」

アリシアとヒーラーの少女の甘ったるい歓声が戦場に響き渡る。

「いけっ! そこだっ!」
「カズマ様なら勝てるぞっ!」

従卒たちも興奮のあまり叫び始めた。

だが当のヴェインは歯噛みしていた。

(なんだ……! この信念の無い軽い剣は……!)

確かに和馬の攻撃は威力がある。
勇者システムの恩恵により強化されているのだから。

しかし、ヴェインがこれまで戦ってきた相手とは根本的に異なるものを感じていた。

「召喚勇者よ……お前の剣に魂はあるのか!?」

ヴェインの問いかけに対して和馬は不敵に微笑んだだけだった。

(ゲームのイベントボスが何言ってんだ?
 俺はプレイヤー。つまり主人公なんだから最強で当然だろ!)

「必殺っ! 勇者の剣技・光の裁きっ!!」

和馬はなんとも"恥ずかしい必殺技"を叫ぶと共に、
両手で大上段に勇者の剣を構えると渾身の力を込めて振り下ろした。

剣身から"派手"な虹色の光が迸り大地をも砕かんばかりの一撃が炸裂する。

「この技の前に敗北は無いっ!」

和馬はヴェインの反撃を警戒するどころか大技の反動で硬直すらしていた。
元の世界でのゲーム知識からすればボスは特定の条件を満たせば倒れるはず。

信念を貫くヴェインの命を懸けた切り札の可能性すら頭の隅に追いやって……

「戦いを……侮辱するなぁっ!」

和馬の"必殺技"を受けて傷だらけのヴェインは全身を震わせて咆哮を上げた。

「この程度で倒される四天王だと思うなっ!!」

体内で練り上げられた魔力が喉奥へと集中していく。
ヴェインが魔王軍最高幹部の一人たる所以の切り札だ。

「お前に真の絶望を見せてやるっ!」

ヴェインの口内から吐き出す灼熱の奔流。
口から放たれた爆炎は大技直後の硬直した和馬に向かっていく。
ヴェイン自身の体内すら焼いてしまう諸刃の技だった。

「えっ……!? ちょっ……!?」

完全に不意をつかれた和馬は硬直が解けると共に辛うじて避けたが、
情けなくも地面に倒れ伏してしまう。

続けてヴェインは"一撃"しか繰り出せない爆炎の"二撃目"を放つ。
もはや身体のいたる所から黒煙を上げながら、文字通り命を懸けた二撃目を――

---

その二撃目をアリシアは既に予期していた。魅了状態にある彼女の本能が。

(……これはまずい!)

心の中でそう思ったかどうかすら曖昧なまま、アリシアは無意識に駆け出した。
その足取りは異常なまでの機敏さだった。

倒れてもがく和馬を見た彼女の視界は急激に歪む。
だが同時に脳裏を過るのは和馬ではなく誰かの面影だった。

「だめっ!」

爆炎の先端が和馬に届こうかという瞬間、アリシアが彼に体当たりをするように飛び込んだ。

「ーーーーーーッ!」

誰かの名を叫ぶアリシアの悲鳴にも似た叫びと共に、
和馬の体は吹き飛ばされ爆炎の射線上から離脱。

だが代償として、爆炎の余波を浴びたアリシアの左腕は赤く燃え上がる。

「うぅっ……」

直撃ではないものの左腕は焼け爛れ煙を上げている。
アリシアの瞳からは、痛みの為か誰かへの郷愁か涙が一筋流れていく。
しかし次の瞬間、アリシアは何故か恍惚とした表情に変わる。

魅了状態ゆえ、自身の身を顧みる事さえなく戦いを見守る体勢に戻ったからだ。
流れた一筋の涙もすでに乾いてしまっていた……。

---

ヴェインは既に虫の息だった。
本来なら命を削ってまで放てない"二撃目"まで使用した結果、
もはや立つことすら困難になっている。

そんな瀕死のヴェインに和馬が迫る。

「ふっ……俺を舐めるからそうなるんだ!」

「必殺っ! 勇者の剣技・闇を切り裂く閃光の光刃っ!」

再び耳障りな大声で、恥ずかしい技名を叫びながら今度は横薙ぎに剣を払う。
勇者システムの補正でヴェインの身体は易々と切り裂かれていった。

「俺様の勝ちだなぁっ!」

もはや死を待つだけだったヴェインに対して、嬉々として追撃を加える和馬。
その光景を従卒たちは複雑な表情で見守っている。
戦士としての誇りを踏みにじる行為だと理解しながらも声を上げることができない。

アリシアは焼け爛れた腕の痛みにも気付かず呆然と立ち尽くしていた。
いや、痛みはあるが彼女の意識は魅了状態の中にある。
ただただ無神経な称賛を和馬に送るだけになっていた。

「カズマさまぁ、すごいですぅっ!」
「お見事ですっ!」

ヒーラーの少女は大した怪我もない和馬を取り囲み嬌声を上げる。
アリシアは放置され続けていたが魅了された瞳で微笑んでいるだけだった。
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