私のスキルが、クエストってどういうこと?

地蔵

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第26話

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 クエストの張り出されると、待っていた冒険者達が我先にクエスト内容を確認している。
 内容に納得した冒険者は、クエストボードから紙を剥がして受付に持って行く。
 勝負は最初の五分程度で決まる。
 高報酬で楽なクエストが無くなれば、何日いや、何週間も貼られているクエストが残っているだけだ。
 新規クエストと言っても、納期が変更になっただけのクエストや、受注する冒険者が居ない為、少しだけ報酬が上がったクエスト等ばかりで目新しいものはない。
 魔物討伐の場合、討伐場所が違っていたり、報酬が微妙に異なっていたりと同じようなクエストばかりだからだ。

 一段落したのか、レベッカがアイリを連れてクリスティーナの所に来た。
 クリスティーナは、アイリとレベッカに書庫から『魔物解体新書(初級編)』と、『魔物図鑑(前編)』に『魔物図鑑(後編)』を持って来るように指示する。

「あと、貴女達で初級冒険者に必要な本があれば持って来て下さい」
「はい、分かりました」

 クリスティーナの頼み事は、リゼに読ませる物だと二人は気付く。
 アイリとレベッカは足早に、ギルド会館の奥にある書庫へと向かった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 リゼは悩んでいた。
 デイリークエストは全て受注すると決めたのだが、クリスティーナから無理に体を動かす事を禁じられていたからだ。
 デイリークエストの受注は強制的では無い。
 しかし、強くなるためには受注して、クエストの成功報酬を貰う必要がある。
 もしかしたら、比較的楽なクエストなのかも知れないが、受注するまでクエストの内容が分からない。
 本来であれば、クエストの内容を考えて受注するかを判断するが、リゼのスキルの場合は、クエスト受注の有無が先になり、クエストの内容は後出しになる為、厄介だとリゼも思っている。

(クリスティーナさんに怒られるしな……)

 リゼはクリスティーナが、自分に対して良い印象を持っていないと思っている。
 色々と迷惑を掛けているのも事実だ。

(……仕方ないかな)

 リゼは体が自由に動かせるようになるまで、デイリークエストを受注しない事を決めた。
 当然、ユニーククエストも同様だ。

 誰かが階段を上がってくる足音が聞こえる。
 足音からして、二人以上だ。
 足音は孤児部屋の前で止まり、扉を叩く音と同時にクリスティーナの声で入室の許可を取る声が聞こえる。
 リゼは「どうぞ」と言うと、クリスティーナにレベッカと、アイリが入って来た。
 レベッカの手には食事と飲み物。そして、アイリは何冊かの本を持っていた。

「昼食と、頼まれていた本です」
「ありがとうございます」

 起き上がろうとするリゼを、クリスティーナは手伝った。

「動けるまで、朝昼晩の三食はこちらで用意致します。因みに食費は、支払って頂く宿代に含まれています」

 リゼの体が起きあがると、食事を膝の上に置いた。
 感謝の言葉を言おうとしたリゼだったが、それより先にクリスティーナが本の説明を始める。
 
 『魔物解体新書(初級編)』は、魔物を解体する上で基礎が書かれた本になる。
初級編と題名にあるように、中級編と上級編もある。
 『魔物図鑑(前編)』と『魔物図鑑(後編)』は十年ほど前に書かれた本になる。
 新種の魔物は記載されていないが、魔物の特徴や弱点等の冒険者が魔物と対峙した際の事が詳しく書かれている。

 『魔物解体新書』と『魔物図鑑』のどちらも学習院で学ぶ際の参考書となっている。
 学習院でも解体の授業はあるが、本を読むよりも実際に魔物解体業者の職人に教えて貰う方が効率が良いので、予習の為に読む者は少ない。
 解体作業の授業自体が避けられる傾向にある。
 特に女子からは人気が無い授業だ。
 学習院に居る間は解体の重要性が分らないのも、ひとつの要因だろう。
 魔物解体業者の職人にすれば基本的な事なので、事前に熟読して欲しいと思っている。

「それと、これです」

 クリスティーナが『戦い方の基本』という本を出す。

「レベッカとアイリが選んでくれました」

 本は題名の通り、戦い方を記したものになる。
 パーティーを組んだ時の基本的な事が書かれている。
 学習院であれば、実技の授業があるので基本的な体の動かし方等を教えて貰える。 
 リゼの場合は、独学で覚えるしかない。
 他の冒険者に指南をして貰う事も出来るが、報酬無しでクエストに同行したりしなければならない。
 もし、危険が迫れば自分の身で精一杯で、他の者まで守る余裕は無くなる。
 それは教える者、教えを乞う者ともに、その覚悟がある者は殆ど居ない。

「ありがとうございます。もし、読み終われば続きをお借りしてもよろしいですか?」
「はい、構いません」

 リゼは嬉しかった。
 知らない事を知る事が出来る事。
 それに冒険者として、また一歩成長出来ると思っていたからだ。

「それでは、私達は戻ります。食器は夕食の時に下げます。喉が渇いた際動かずに水が汲めるように、水瓶も近くに移動しておきます」
「ありがとうございます」

 アイリが水瓶を、リゼの寝床の横に移動した。

「リゼちゃん、大丈夫?」
「はい。色々とありがとうございます」
「じゃあね」

 クリスティーナ達は、孤児部屋を出て行った。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 
「……受付長」
「なんですか?」

 階段を下りながら、アイリはクリスティーナに話し掛けた。

「そのですね。私達は受付長が優しいのを知っていますが、リゼちゃんへの態度は、もう少し優しく接した方が……」
「そんなに怖い態度でしたか? レベッカはどうです?」

 突然、話を振られたレベッカは戸惑いながら答える。

「えっ! そうですね。子供からしたら怖いかな? とも思います」
「……そうですか。少し改める努力をしてみます」
「受付長は誤解されやすいですからね」
「何がですか?」
「あっ、いえ……」

 フォローしたつもりだったアイリは、言葉に詰まる。

 クリスティーナは、アイリやレベッカに言われて、自分の言動を思い返す。
 ……確かにそうだったかも知れない。
 冒険者としての接し方としては問題無い。
 しかし、リゼは冒険者になったばかりだ。
 それに暴漢に襲われて怪我もしている。
 もう少し配慮しても良かったのではないかったのかと、反省をする。

 自分でも気が付かずに、人を傷付ける事がある。
 クリスティーナは、オーリスの受付嬢達を信頼している。
 彼女達にしか、自分の欠点を指摘出来ないとも思っていた。
 それはクリスティーナが受付長に就任した時、受付嬢達に向けて言った事でもある。
 だからこそ、アイリも失礼だと思いながらも、クリスティーナに話をした。

「受付長は美人なんですから、もっと笑った方がいいですよ」
「なっ、何を言っているのですか!」

 クリスティーナは顔を赤くして戸惑っていた。

「昼からも宜しく御願いしますね」

 照れているのを隠すかのように、足早に階段を下りて行った。
 その姿を見て、アイリとレベッカは目を合わせて微笑む。

 実際、クリスティーナは美人の部類に入る。
 受付嬢時代はクリスティーナ目当てで、オーリスを訪れる冒険者も居た。
 しかし、無表情で淡々と仕事をするクリスティーナに、冒険者達が思い描いていた人物像とは掛け離れていたせいか、落胆する冒険者も多かった。
 クリスティーナの事を良く知る冒険者は、クリスティーナの仕事ぶりと、的確な指示等で命を救われた者も居た。
 受付嬢は、クエストを発注するだけでなく、達成が難しいと判断した場合、相談に乗る。
 回復薬を購入した方が良いや、パーティー構成等についてもアドバイスする。
当然、受注しないという選択肢もある。
 受付嬢の一番の目的は、クエストを受注した冒険者を生きて戻って来させる事だからだ。
 受付嬢同士の仲が悪い所は、冒険者の生死を気にしない受付嬢が居るのも事実だ。
 長く担当していなければ、冒険者の事も良く分からないのでアドバイスも雑になる。
 オーリス冒険者の生還率は、国でも五本の指に入るくらい優秀だ。
 冒険者が強いだけでなく、受付嬢達の支えがあってこそ、クエストが達成出来る事をオーリスの冒険者は知っていた。
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