私のスキルが、クエストってどういうこと?

地蔵

文字の大きさ
66 / 372

第66話

しおりを挟む
「コファイ! 後方に安全だと知らせてくれますか!」
「はっ、はい‼」

 アルベルトがコファイに指示を出す。
 洞窟もかなり奥まで進んできている。

「サウディにバクーダ。疲れているかと思いますが、頑張ってください」

 ラスティアが、サウディとバクーダに労いの言葉をかけた。

「疲れているなんて、言っていられません。ほとんどのゴブリンは、アルベルトさんが倒していますので……」
「そうです。俺やサウディが、役に立っているのか……」
「……何を言っているのですか、あなたたちは?」

 ラスティアは不機嫌そうに喋った。

「アルベルトが取り逃がしたゴブリンを、きちんと倒していたのに、役に立っていないというのですか?」
「それは、本当に数匹だけの話で……」

 サウディの言葉を聞いたラスティアは、不機嫌でなく怒った表情を浮かべた。

「アルベルトは言いましたよね。自分の攻撃を回避したゴブリンの対応を頼むと!」
「……はい」
「あなたたちは、自分の役割をこなしているのですよ」

 サウディとバクーダは顔を見合わせる。

「倒した数の問題ではありません。パーティーにはそれぞれの役割があるのですよ。もっと、自信を持って下さい」

 先程の表情とは一変して、最後は笑顔で話し掛ける。

「コファイ。あなたもですよ」
「はっ、はい!」

 ラスティアは、この三人に自信をつけさせることで、戦況が有利になるとアルベルトが考えているのだと思っていた。
 とくにコファイは、自分に自信がなさすぎる。
 ラスティアは今迄も、コファイと同じような冒険者を見たことがある。
 自信のなさは、技や魔法にも影響する。
 一瞬の躊躇いが生死を左右する状況が、冒険者では頻繁におとずれる。
 冒険者の仲間が死ぬのは、出来る限り見たくはない。
 そんな思いで、コファイたちに接していた。

 もちろん、過剰な自信も問題だ。
 どちらかといえば、そちらの方が厄介だ。
 大抵、そういう場合は仲間の意見を聞かずに、一人で暴走するか、仲間を巻き込むかだ……。
 自信過剰な冒険者は、他の冒険者の言葉に耳を貸す者は少ない。
 自分に絶対の自信を持っているので、格下の冒険者を馬鹿にするし、格上の冒険者には、実力では負けていなはずだから偉そうにするなという表情をする。

 そういう冒険者が銀翼に向かってくる時は、いつもミランやローガンが相手をして、完膚なきまで叩きのめしていた。

「一皮剥ければ、見える世界が変わるんでしょうけどね……」

 ラスティアは、誰にも聞こえないような小声で呟いた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 アルベルトたちは、順調に奥へと進んでいく。
 明らかにゴブリンの数が多くなっているので、ゴブリン側もこれ以上、奥へは進ませないつもりなのだと、アルベルトとラスティアは思っていた。
 気になっていたのは、進化種であるゴブリンナイトや、ゴブリンアーチャーにゴブリンメイジの姿がないことだ。
 つまり、ゴブリン側は戦力を温存している――。
 自分たちの状況を確認する必要がある。

「ラスティア。どうだ?」
「まだ、大丈夫ですわ」

 アルベルトはラスティアだけが分かる、銀翼のメンバーしか分からない話し方をする。
 ラスティアの体力や魔力などが、どれほど残っているかだった。
 アルベルトに答えた「まだ、大丈夫」は、半分ほど残っているということだ。

「……ここからが、本番か!」

 アルベルトの視線は、ゴブリンのたちの奥にいるゴブリンナイトの姿を捉えていた。
 しかも、洞窟が少し広くなっている場所で待機している。
 広い場所だと、四方から襲われる。
 サウディたちには負担が大きいかもしれない。

「とりあえず、私一人で数を減らします。サウディたちは、この付近で戦って下さい。奥へ進むと危険ですから……ラスティア、頼みますよ」
「えぇ、分かりましたわ。私が指揮を取らせていただきます」

 アルベルトは安心した顔でラスティアを見る。
 右手に持っていた剣で地面を軽く叩くと、ラスティアたちの体が薄っすらと光った。

「これで、防御力は上がったはずです。では、行ってきます」

 なにが起きたのか分かっていないサウディたち三人。

 アルベルトは一人で、ゴブリンの群れへと歩き出す。

「アルベルトさん、大丈夫ですか?」

 心配そうにコファイが話す。

「まぁ、見ていれば分かりますわ。ランクAの冒険者の実力が――そして、この世界に数人しかいない聖騎士の戦いを――」

 聖騎士は、戦士職の上位職になる。
 しかし、戦闘補助スキルが習得できるので、事前にスキルをかけて仲間を守ることもできる。
 アルベルトが使用したのは、聖騎士のスキル【聖なる加護】だった。
 【聖なる加護】は、ステータスの防御や、魔法耐性を一時的に向上させることができる。
 光属性の魔法でも似たようなものはある。
 銀翼だと、ササジールが光属性の魔法を習得しているので、補助系魔法は主にササジールの担当だが、状況に応じてアルベルトも使用する。
 補助系魔法は、強い相手と戦う時には必要な魔法である。
 しかし、他にも使用できる魔法がないと冒険者として、それ以上を望めない。
 今のコファイがそうだ。

 ゴブリンの攻撃範囲に入ったアルベルトへ、ゴブリンたちが一斉に攻撃を仕掛けた。

 ――アルベルトの戦いは凄かった。
 目で捉えることができないくらいの早さで剣を振り回して、ゴブリンたちをどんどんと倒して行く。
 四方からの攻撃を気にすることなく、ゴブリンたちを切り刻んでいった。

「す、すごい……」

 アルベルトの戦いに目を奪られるサルディとバクーダ、コファイ三人。

「あれが私たち銀翼のリーダーですわ」

 ラスティアが誇らしげに話した。

 興奮したバクーダが、無意識に足を進めようとした。

「いけません。あなたたちの出番は、もう少し後です‼」

 ラスティアはバクーダを抑止する。

「アルベルトも、昔はあなたたたちと同じようにランクBの冒険者だったのですよ」
「でも……才能が違います」

 サルディが、諦めるように話した。

「才能ですか……才能であれば、銀翼のメンバーは才能がない冒険者の集まりですね」
「そんな、皆さん才能があるじゃないですか……」
「才能って、なんだと思っていますか?」
「それは――」

 言葉に詰まるサルディ。

「私たちは、あなたたちが思っている以上に、強くなる努力をしています。それこそ、死にもの狂いで努力している者もいます。その努力をすることが才能と言うのであれば、あなたのいう才能を持っていることは間違いありませんね」

 ラスティアは、全て才能がないと諦めるサルディに憤慨していた。
 なんでも運命だと諦めるのは簡単だからだ。
 なにより、昔の自分を見ているようだったからだ――。

 ラスティアの本名は、エルダという。
 学習院時代のエルダは、平均的な成績しか残せない生徒だった。
 しかし、その容姿のせいか異性からのアプローチが多かった。
 それを面白く思わない女子生徒もいるため、いやがらせをうけることもあった。
 家柄による貴族同士の派閥争い……エルダは本当に嫌だったが、親の顔もあるため、仮面を被ったように学生生活を送っていた。
 卒業間際になり、両親が事故で死亡をすると状況が一変した。
 叔父が家督を継ぐと、エルダは邪魔な存在になり卒業後、権力のある貴族との婚約を迫られる。
 両親が守ってきた家のためだと我慢をすることにしたが、実家に戻った時、従兄が口を滑らせて、両親の事故は叔父によって企てられたことを知る。
 そのことを叔父に話すと、叔父はエルダを殺そうとしたのだ。
 使用人の一人が、そのことを知りエルダを事前に逃がしてくれたが、すぐに追手に向かわせる。
 そして、エルダは追手に殺されそうになっているところを、アルベルトとクウガ、アリスの三人に助けられた。
 盗賊からエルダを救ったと思っていた三人だったが、エルダから事情を聞くと、追手にエルダの着ていた衣装の一部を渡す。

「これで、この子は崖から落ちたことにしなければ、今すぐにお前を殺す‼」
 
 クウガが脅しをかけると、追手はそのまま逃げ帰って行った。
 追手もエルダを取り逃がしたと報告すれば、自分の立場が悪くなる。
 崖から落ちたと言えば、エルダが死んでいようが自分たちは関与していないので、問題無い。
 咄嗟にクウガの機転で、難を逃れることができたエルダ。
 この時、過去との決別をするため、両親が自分が生まれた時に悩んでいたと言っていたもう一つの名前『ラスティア』と名乗ることにした。
 その後、アルベルトたちと行動を共にして、身近で三人の強さへの執念に感化されて、ラスティア自身も努力を重ねた――。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

魔法使いじゃなくて魔弓使いです

カタナヅキ
ファンタジー
※派手な攻撃魔法で敵を倒すより、矢に魔力を付与して戦う方が燃費が良いです 魔物に両親を殺された少年は森に暮らすエルフに拾われ、彼女に弟子入りして弓の技術を教わった。それから時が経過して少年は付与魔法と呼ばれる古代魔術を覚えると、弓の技術と組み合わせて「魔弓術」という戦術を編み出す。それを知ったエルフは少年に出て行くように伝える。 「お前はもう一人で生きていける。森から出て旅に出ろ」 「ええっ!?」 いきなり森から追い出された少年は当てもない旅に出ることになり、彼は師から教わった弓の技術と自分で覚えた魔法の力を頼りに生きていく。そして彼は外の世界に出て普通の人間の魔法使いの殆どは攻撃魔法で敵を殲滅するのが主流だと知る。 「攻撃魔法は派手で格好いいとは思うけど……無駄に魔力を使いすぎてる気がするな」 攻撃魔法は凄まじい威力を誇る反面に術者に大きな負担を与えるため、それを知ったレノは攻撃魔法よりも矢に魔力を付与して攻撃を行う方が燃費も良くて効率的に倒せる気がした――

建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~

ヒロノF
ファンタジー
死後に転生した魔界にて突然無敵の身体を与えられた地野改(ちの かい)。 その身体は物理的な攻撃に対して金属音がするほど硬く、マグマや高電圧、零度以下の寒さ、猛毒や強酸、腐食ガスにも耐え得る超高スペックの肉体。   その上で与えられたのはイメージ次第で命以外は何でも作り出せるという『創成魔法』という特異な能力。しかし、『イメージ次第で作り出せる』というのが落とし穴! それはイメージ出来なければ作れないのと同義! 生前職人や技師というわけでもなかった彼女には機械など生活を豊かにするものは作ることができない! 中々に持て余す能力だったが、周囲の協力を得つつその力を上手く使って魔界を住み心地良くしようと画策する。    近隣の村を拠点と定め、光の無かった世界に疑似太陽を作り、川を作り、生活基盤を整え、家を建て、魔道具による害獣対策や収穫方法を考案。 更には他国の手を借りて、水道を整備し、銀行・通貨制度を作り、発電施設を作り、村は町へと徐々に発展、ついには大国に国として認められることに!?   何でもできるけど何度も失敗する。 成り行きで居ついてしまったケルベロス、レッドドラゴン、クラーケン、歩く大根もどき、元・書物の自動人形らと共に送る失敗と試行錯誤だらけの魔界ライフ。 様々な物を創り出しては実験実験また実験。果たして住み心地は改善できるのか?   誤字脱字衍字の指摘、矛盾の指摘大歓迎です! 見つけたらご報告ください!   2024/05/02改題しました。旧タイトル 『魔界の天使 (?)アルトラの国造り奮闘譚』 2023/07/22改題しました。旧々タイトル 『天使転生?~でも転生場所は魔界だったから、授けられた強靭な肉体と便利スキル『創成魔法』でシメて住み心地よくしてやります!~』 この作品は以下の投稿サイトにも掲載しています。  『小説家になろう(https://ncode.syosetu.com/n4480hc/)』  『ノベルバ(https://novelba.com/indies/works/929419)』  『アルファポリス(https://www.alphapolis.co.jp/novel/64078938/329538044)』  『カクヨム(https://kakuyomu.jp/works/16818093076594693131)』

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

異世界召喚に巻き込まれたのでダンジョンマスターにしてもらいました

まったりー
ファンタジー
何処にでもいるような平凡な社会人の主人公がある日、宝くじを当てた。 ウキウキしながら銀行に手続きをして家に帰る為、いつもは乗らないバスに乗ってしばらくしたら変な空間にいました。 変な空間にいたのは主人公だけ、そこに現れた青年に説明され異世界召喚に巻き込まれ、もう戻れないことを告げられます。 その青年の計らいで恩恵を貰うことになりましたが、主人公のやりたいことと言うのがゲームで良くやっていたダンジョン物と牧場経営くらいでした。 恩恵はダンジョンマスターにしてもらうことにし、ダンジョンを作りますが普通の物でなくゲームの中にあった、中に入ると構造を変えるダンジョンを作れないかと模索し作る事に成功します。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

【第一章改稿中】転生したヒロインと、人と魔の物語 ~召喚された勇者は前世の夫と息子でした~

田尾風香
ファンタジー
ある日、リィカの住む村が大量の魔物に襲われた。恐怖から魔力を暴走させそうになったとき前世の記憶が蘇り、奇跡的に暴走を制御する。その後、国立の学園へと入学。王族や貴族と遭遇しつつも無事に一年が過ぎたとき、魔王が誕生した。そして、召喚された勇者が、前世の夫と息子であったことに驚くことになる。 【改稿】2026/02/20、第一章の40話までを大幅改稿しました。 これまで一人称だった第一章を三人称へと改稿。その後の話も徐々に三人称へ改稿していきます。話の展開など色々変わっていますが、大きな話の流れは変更ありません。 ・都合により、リィカの前世「凪沙」を「渚沙」へ変更していきます(徐々に変更予定)。 ・12から16話までにあったレーナニアの過去編は、第十六章(第二部)へ移動となりました。

今日からはじめる錬金生活〜家から追い出されたので王都の片隅で錬金術店はじめました〜

束原ミヤコ
ファンタジー
マユラは優秀な魔導師を輩出するレイクフィア家に生まれたが、魔導の才能に恵まれなかった。 そのため幼い頃から小間使いのように扱われ、十六になるとアルティナ公爵家に爵位と金を引き換えに嫁ぐことになった。 だが夫であるオルソンは、初夜の晩に現れない。 マユラはオルソンが義理の妹リンカと愛し合っているところを目撃する。 全てを諦めたマユラは、領地の立て直しにひたすら尽力し続けていた。 それから四年。リンカとの間に子ができたという理由で、マユラは離縁を言い渡される。 マユラは喜び勇んで家を出た。今日からはもう誰かのために働かなくていい。 自由だ。 魔法は苦手だが、物作りは好きだ。商才も少しはある。 マユラは王都の片隅で、錬金術店を営むことにした。 これは、マユラが偉大な錬金術師になるまでの、初めの一歩の話──。

処理中です...