私のスキルが、クエストってどういうこと?

地蔵

文字の大きさ
127 / 374

第127話

しおりを挟む
 オーリスに戻るとリゼはクエスト達成の報告をするため、リアムたちと一緒に冒険者ギルドに向かった。 

「お帰りリゼ。後ろの方々たちは?」
「クエストの途中で知り合って、オーリスまで来るとのことでしたから、一緒に戻ってきました」
「そう……」

 見たことのない冒険者だったためレベッカは警戒していた。
 もちろん、他の冒険者も初見の冒険者に対して警戒しているのが、リゼにも感じられた。

「あちらで詳しくお話をお聞き致します」
「分かりました。御手数お掛け致します」

 レベッカは手が空いている受付嬢に、リアムたちを対応するように頼んだ。
 対応しているのは剣士のクリスパーだった。
 クリスパーたちはレベッカに言われた通り、別の受付嬢の所に移動をして話を始めていた。
 すぐに行動しないリアムたちを、クリスパーは叱りながら移動するように促す。
 クリスパーは苦労が絶えないのだろうと、リゼは改めて感じていた。
 リゼはレベッカと話をしながらもリアムたちのことが気になっていたので、横目で少しだけ見ていた。
 クリスパーと受付嬢の会話は、リアムたちの声で掻き消されて殆ど聞こえない。
 ただ、クリスパーがアイテムバッグから布に包んだ物を取り出して、受付嬢に見せていた。

「はい‼」

 ひと際、大きな声で叫ぶ受付嬢は驚いた表情で、駆け足で奥の部屋に走って行った。
 リゼとレベッカは、その声の大きさに驚きリアムたちの方を見ていると、受付長のクリスティーナが受付嬢と一緒に戻って来て、リアムたちと話し始めた。
 もっとも話をしているのは、クリスパー一人で他の人たちは、クリスパーの後ろで我関せずと言った感じで、好き好きに会話をしている。
 クリスパーは我儘な仲間に、かなり苛立っているのがリゼから見ても分かる。
 それは対面で話を聞いている、クリスティーナたちの方が分かっていた。
 いつもなら叱るクリスティーナも、リアムたちを無視するかのようにクリスパーと話をしている。

「じゃあ、討伐した魔物を見せてくれるかしら?」

 レベッカはリゼに、討伐対象の魔物ニードルシープを見せるように言うと、リゼは戸惑いながら答える。

「はい、でもニードルシープは六匹居ますが、ここで良かったですか?」
「えっ、六匹‼」

 レベッカは一匹、増えても二匹だと思っていた。
 ここで確認した後に解体業者に運んでも貰えばと考えていた。
 リゼの能力を侮っていた自分の考えを改める。
 ニードルシープを六匹も討伐するのは簡単なことではないからだ。
 しかし、ニードルシープを六匹も討伐することが出来たのは、偶然が重なってのことだとは、レベッカが知る由も無かった。

「裏に行きましょうか」
「はい、分かりました」

 私はレベッカと解体場のある扉から外に出ると、六匹のニードルシープをアイテムバッグから取り出した。
 レベッカがニードルシープの数を数え終えると再び、ギルド会館内に戻る。

「失礼します」

 クリスティーナが受付に戻ったレベッカの後ろを通り、階段前でリアムたちを待つ。

「じゃあな、リゼ」

 軽く挨拶をするリアムに、リゼは頭を下げた。
 リアムたちはクリスティーナに案内されて二階へと上がって行った。

「緊急事態ですか?」
「さぁ、どうかな?」

 クリスティーナの行動が普段と違うことに気付いたリゼだったが、それをレベッカが見逃すはずがないとリゼは思っていた。
 守秘義務もあるだろうと思い、リゼはクエスト完了の手続きを終えた。

「そういえば、町の入口に何台も馬車が並んでいましたが、なにかあるんですか?」
「学習院との交流会で、生徒の親たちが子供たちと会うために訪れているのよ」

 レベッカの回答にリゼは血の気が引く。
 学習院に通う兄だけでなく、あの両親とも会う可能性があることは想定外だったからだ。

「リゼ、大丈夫⁈」

 顔色の悪いリゼを見て、レベッカは心配する。

「はい……大丈夫です」

 リゼは精一杯答えた。
 レベッカはリゼの狼狽え方を見て、自分を捨てた両親と再会することを恐れているのだと感じた。
 受付嬢としてでなく、個人的に学習院との交流会の日程をリゼに伝えた。
 レベッカの行為は受付嬢として問題無い。
 日程を伝えることは、守秘義務に反していない。
 レベッカに心配させてはいけないと思いながら、リゼは必死で混乱する思考を戻そうとする。

「ありがとうございます」

 最低限の内容だけは頭に叩き込んだ。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ――学習院との交流会の日が訪れる。
 リゼは悩みながらも町にいた。
 今日から数日は学習院の生徒が、ギルド会館に出入りする。
 ギルド会館に行かなければ、学習院の生徒と顔を合わせることは無い。
 しかし、クエストを受注しなければ生活することが出来ない。
 リゼは、その葛藤の中で藻掻いていたのだ。

 一応、リゼは顔見知りの冒険者や、受付嬢のレベッカから交流会の予定を聞いていた。
 初日は交流会の予定や、冒険者についての簡単な講義を行う。
 二日目は現役冒険者との模擬戦をすることで、冒険者との実力差を実際に感じる。
 ただ、全生徒が模擬戦を行うことは無く、事前に希望者のみが参加する。
 冒険者で生きていこうと思う生徒や、腕試しをして自分の実力を確認したい生徒のみが、基本的に参加する。
 貴族などで戦う必要が無い生徒が敢えて、模擬戦に参加する意味が無いからだ。
 事前に実力は学習院側から情報を得ているので、冒険者側からも大きな事故にならないような冒険者を選ぶ。
 模擬戦に感化されて、その場で模擬戦を申し込む生徒も数人いるらしいが、ギルマスのニコラスや教師は、その際にはその場にいる冒険者をあてがうようだ。
 極稀に有名な冒険者に挑もうとする無茶な生徒もいるらしい。
 最終日の三日目は冒険者数人が同行して、簡単なクエストこなす。
 通年だとスライム討伐が選択される。
 危険度が少なく、多く生息している理由からだ。

 最悪、初日は講義中にギルド会館に出入りをすれば、顔を合わせることは無い。
 ここ数日、いろいろと考えていたが今も結論が出ていない。
 ただ、日を増すごとに悪いことをしていない自分が逃げるような行為をしていることに疑問も感じていた。
 堂々と胸を張って生きていくと、親に捨てられた時に誓ったことを思い出す。
 過去がどうあれ……気持ちで負けたら駄目だ。
 怯まずに堂々としていればいい。
 リゼは母親から譲り受けた髪飾りを見ながら、心に誓う。

「よしっ!」

 うじうじした気分を吹き飛ばすように、気合を入れて部屋を出た。
 

――――――――――――――――――――

リゼの能力値
『体力:三十四』
『魔力:十八』
『力:二十二』
『防御:二十』
『魔法力:十一』
『魔力耐性:十六』
『素早さ:七十六』
『回避:四十三』
『魅力:十七』
『運:四十三』
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

精霊に愛された錬金術師、チートすぎてもはや無敵!?

あーもんど
ファンタジー
精霊の愛し子で、帝国唯一の錬金術師である公爵令嬢プリシラ。 彼女は今日もマイペースに、精霊達と楽しくモノ作りに励む。 ときどき、悪人を断罪したり人々を救ったりしながら。 ◆小説家になろう様にて、先行公開中◆ ◆三人称視点で本格的に書くのは初めてなので、温かい目で見守っていただけますと幸いです◆

なんか修羅場が始まってるんだけどwww

一樹
ファンタジー
とある学校の卒業パーティでの1幕。

虐げられた令嬢、ペネロペの場合

キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。 幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。 父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。 まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。 可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。 1話完結のショートショートです。 虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい…… という願望から生まれたお話です。 ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。 R15は念のため。

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅

散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー 2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。 人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。 主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m

【完結】婚約者なんて眼中にありません

らんか
恋愛
 あー、気が抜ける。  婚約者とのお茶会なのにときめかない……  私は若いお子様には興味ないんだってば。  やだ、あの騎士団長様、素敵! 確か、お子さんはもう成人してるし、奥様が亡くなってからずっと、独り身だったような?    大人の哀愁が滲み出ているわぁ。  それに強くて守ってもらえそう。  男はやっぱり包容力よね!  私も守ってもらいたいわぁ!    これは、そんな事を考えているおじ様好きの婚約者と、その婚約者を何とか振り向かせたい王子が奮闘する物語…… 短めのお話です。 サクッと、読み終えてしまえます。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ

双葉 鳴
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。 彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。 そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。 洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。 さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。 持ち前のサバイバル能力で見敵必殺! 赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。 そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。 人々との出会い。 そして貴族や平民との格差社会。 ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。 牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。 うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい! そんな人のための物語。 5/6_18:00完結!

処理中です...