私のスキルが、クエストってどういうこと?

地蔵

文字の大きさ
164 / 365

第164話

しおりを挟む
 むやみに森の中でシアクスを探すわけにはいかない。
 野盗たちに自分の居場所を知られて、襲撃に合う可能性が高いからだ。
 ダンテが流したであろう血の跡を追っていく。
 暫く行くと大きな戦闘があったのか、草が倒れて傷付いた樹などを発見する。
 地面には血の跡が残っている。
 そして、三人ほど倒れているが、既に絶命しているのは間違いないがアンジュが確認する。
 うつ伏せになっている死体は蹴って仰向けにする。
 装備からシアクスではないと分かっていての行動だろう。
 なにかに気付いたアンジュは、しゃがんで何かを確認していたが、すぐに立ち上がり周囲を見渡す。
 来た方向とは別の方向に血の跡があることに気付く。

「野盗が大人数だったら?」
「私の魔法で対応するわ」

 リゼの問いにアンジュは自信に満ちた力強い返事だった。
 だが、自分が不安な表情を少しでも見せてしまうと、リゼにも不安が伝わると考えて、敢えて力強く返事をしていた。

「多分、野盗の多くは荷物を積んである馬車に人数を割いているはずよ。追手を向けたとしても数人だと思うわ。なにより、ダンテの傷は剣などで切られた傷ばかりだったから、魔術師はいないと判断している」

 周囲を警戒しながら視線を合わせることなく、アンジュはリゼに説明をする。
 アンジュの説明を聞いて、ダンテの傷から情報を読み取ったことに驚き、実力の差を思い知らされた。

「冒険者として情報を見落とすことは、死に近付くことになるわ。だからこそ、些細なことでも見落とさないようにしなさい」
「はい」

 圧倒的な経験の差を見せつけられたリゼは、アンジュの言葉通りに周囲をより細かく見るようにした。

「あれっ!」

 草むらに人が倒れている。
 駆け寄ろうとするリゼをアンジュが止める。

「野盗かも知れないわ。それと極力、声を押さえて!」

 アンジュの目は真剣だった。
 リゼの失態で自分まで危険に巻き込まれるからだ。
 アンジュの言葉を受けて、自分がいかに愚かだったかを感じていた。
 突然、起き上がって攻撃しないかを注意しながら、距離を詰める。
 倒れているのは男性のようだが、体の下に大量の血溜まりが広がっていた。
 アンジュが警戒しながら近付くが、既に絶命していた。

「シアクスじゃないわ」

 倒れていたのが野盗かと思うと、アンジュは立ち上がり周囲を見渡す。
 リゼは目の前で血溜まりの中にある死体に、心臓の音が早く大きくなっているのが自分でも分かっていた。

「リゼ、大丈夫?」
「あっ、はい」

 アンジュは顔色の悪いリゼを心配する。
 そして、リゼを同行させたことを少し後悔していた。
 野盗に襲撃された際に、まともに戦えるのか? と死体を見て固まるリゼを見て考えていた。

「あっちね」

 アンジュは草を踏みしめた箇所を発見する。
 草に血の跡も発見する。
 血の量からシアクスが大きな怪我をしていないと、アンジュは推測した。
 しかし、止血しているだけかもしれないので一刻を争うことには間違いない。
 アンジュの後に付いていくしかないリゼ。
 いかに冒険者として未熟だったかを痛感していた。
 又、倒れている野盗を発見する。
 野盗と分かったのは、装備が先程まで殺されていた野盗と同じような物だったからだ。
 ここでの戦闘でシアクスも傷を負ったのか、血の跡が増していた。
 アンジュは血の量からも最悪のことを考えながら、慎重に進んでいく。
 シアクスの職業は盗賊だ。
 ダンテがシアクスに任せたのも納得出来る。
 ただしアンジュが知る限り、強い冒険者では無かった。
 アンジュは自分の勘を信じて、シアクスはまだ森の中にいると思っている。

 樹の影に気配を感じたアンジュがリゼに視線を送り知らせる。
 アンジュは左右から回り込むように、指でリゼに指示をする。
 物音を立てないように近付く。
 次の瞬間、樹の影からリゼに向かって襲い掛かって来る。

「死ね!」

 装備から野盗だと分かったが、緊張していたリゼは一瞬、反応が遅れる。
 だが、十分に回避できる速度だったので、リゼは野盗の攻撃を躱す。
 しかし、攻撃を躊躇しているリゼは野盗の攻撃を躱すだけだった。
 アンジュも樹を利用して動き回る二人に、上手く照準を合わせられないのか、リゼを援護することが出来なかった。

(どうしたら……)

 自分の思惑と違う展開に表情には出していないが、アンジュも戸惑っていた。
 地形を上手く利用したリゼに、野盗も焦っていた。
 その時、アンジュと視線が重なる。
 アンジュの視線からリゼはジェイドのように、アンジュの考えを読み取れないかと思ったが、一瞬だけではアンジュの考えが分からなかった。
 実際、アンジュもリゼに伝えたいことが纏まっていなかったので、リゼが感じたことは間違いではなかった。
 リゼは少し切り開かれた場所まで、野盗を誘導する。
 炎系の魔法を使うアンジュが魔法を使用し辛いと、リゼは考えていたからだ。
 野盗もリゼの巧みな誘導に気付いていない。
 隠れる場所がない所に来たことで、野盗はリゼの判断ミスだと思い猛攻を仕掛ける。
 しかし、一対一での戦いでもリゼが負けることは無かった。
 オーリスで冒険者に鍛えて貰ったことや、銀翼での戦闘、金狼のアンバーに比べれば、余裕で躱せる。
 リゼは野盗の背後を取り、小太刀を脇腹に当てようとするが腕が動かなかった。

(どうして……)

 思い通りにならない体にもどかしさを感じる。
 攻撃を躊躇ったことが野盗に見抜かれる。
 自分が傷つけられないと確信した野盗の攻撃は、より過激になる。
 焦るリゼだったが、大振りな攻撃は予想しやすく、攻撃し終えた瞬間に体勢を崩して、体がふらつく。
 リゼは野盗の足に自分の足に掛け、野盗を転倒させる。
 すぐに小太刀を突き付けるが、リゼにはそれ以上できなかった。
 野盗はリゼを突き飛ばすと、そのままリゼに襲い掛かる。

「ぐぁ!」

 野盗が悲鳴をあげる。
 アンジュの”フレイムバースト”が野盗を襲う。
 焼け爛れた野盗は地面をのたうち回っていた。
 体の火が消える頃、野盗は息絶えていた。

「ありがとうございます」
「別に。こっちこそ、この場所に誘い込んでくれて助かったわ」

 消し炭と化した野盗を見ながらアンジュは答える。
 躊躇なく人を殺す相手にも、殺すことはおろか傷つけることさえ出来なかった。
 ジェイドに言われた言葉が頭の中で過ぎる。
 確固たる信念に基づいて行動をする自信があった。
 しかし実際は……。
 リゼは「自分に信念があるのか?」と自問自答する。
 躊躇うこと自体が信念に基づいていない。

「シアクスを探すわよ」

 アンジュはすぐに、シアクス捜索を再開する。
 リゼが考え込んでいるのは分かっていたが、今は一刻を争う時なので、リゼに構っている時間は無い。


――――――――――――――――――――

■リゼの能力値
 『体力:三十五』
 『魔力:十八』
 『力:二十二』
 『防御:二十』
 『魔法力:十一』
 『魔力耐性:十六』
 『敏捷:八十四』
 『回避:四十三』
 『魅力:十七』
 『運:四十三』
 『万能能力値:零』

■メインクエスト
 ・王都にある三星飲食店で十回食事をする。一店一回。期限:十二日
 ・報酬:魅力(二増加)、運(二増加)
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。 そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。 しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。 過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!

美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ

さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。 絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。 荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。 優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。 華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

1人生活なので自由な生き方を謳歌する

さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。 出来損ないと家族から追い出された。 唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。 これからはひとりで生きていかなくては。 そんな少女も実は、、、 1人の方が気楽に出来るしラッキー これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

処理中です...