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第255話
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――翌日。
リゼは寝ているカリスに声を掛けて、コジロウの所へと向かうことを告げる。
聞いているか分からないが、カリスから返事は帰って来たので、コジロウの屋敷へと向かう。
ハンゾウやサイゾウにも礼を言いたいと思っていたが、コジロウから取り次いでもらえたらと考えていた。
「明日、帰るそうですね」
歩いている途中でサイゾウが背後から声をかける。
完全に気配を消しているようで、心臓が止まりそうになる。
慣れないと感じながらも、いずれは自分も……と言う思いでサイゾウを見て「はい」と返事をして礼の言葉へと繋げる。
「いろいろと有難う御座います」
「いいえ、ハンゾウ様の命令もありますが、忍として仲間を育てるのも任務です」
突き放すような口調だったが、普段からこの口調なのだろう。
「鍛錬は怠っていないようですね」
リゼはとっさに左手を隠す。
やましいことではないが、なぜか恥ずかしい気持ちになった。
「まだ上手く投げられませんが……」
「そうですか。まぁ、そんな簡単に投げられるようなものではないですから」
表情は見えないので、サイゾウがどのような思いで言ったのかは分からない。
自分が忍術を軽んじた発言をしたのではないかと、リゼは不安な気持ちになる。
サイゾウなりに気を使ったつもりだったが、その思いはリゼに伝わっていなかった。
睡眠時間を削って、夜に投擲の練習をしていることをサイゾウは知っていた。
痛みを忘れる集中力には目を見張るものがあった。
しかし、それは目の前のこと以外に注意を向けていないということだ。
長所であり短所でもある。
自分で気づかなければ成長しないことを知っているサイゾウは、そのことをリゼに伝えるつもりはなかった。
会話が続かずに気まずいまま歩き続ける。
「決して力に溺れないで下さい」
「力に溺れる?」
「はい。生まれた時から闇と一緒に育った忍と違い、転職した忍は闇に……力に溺れて破滅しやすいと聞いています」
ヤマト大国に伝わる話らしく、昔は各国に素性を隠して忍が生活をしていた。
情報収集して、ヤマト大国への脅威を未然に防ぐことが目的だった。
当時、忍という職業はあまり知られていなかった。
誰もが実績のある職業を選択していたというのもあったが、現在同様に忍への転職自体が少なかった。
他に選択肢がない冒険者は上位職ということもあり渋々転職していた。
しかし、その冒険者たちが問題だった。
転職して暫くすると、犯罪行為に手を染めるようになる。
闇属性の魔法は犯罪に都合の良かったのか、次第に欲望のままに行動を始めた。
大きな犯罪に関係していることが分かると、ヤマト大国の忍たちは粛清をして、忍の悪評が広まる前に拉致して殺害する。
忍が持つ闇の力に溺れ自身を見失うということだと教えてくれた。
各国にいた忍たちもヤマト大国が襲撃を受けるまで秘密裏に任務を続いていた。
だが、サンダユウの裏切りにより全員が殺された。
忍頭だったサンダユウを疑うことなく、無抵抗のまま殺されたのだろうと仲間の無念を話すサイゾウ。
それは背中越しでも十分に伝わってくる。
「対極に位置する光という属性があると聞いています。その光を使う者は、神の使いと聞いたことがあり、とても重宝されるそうですね」
「たしかにそうですね……」
光属性には治癒魔法も含まれる。
アルカントラ法国では光属性魔法は女神ユキノから授かった神聖な魔法だと思われているくらいだ。
そのため、アルカントラ法国で闇属性魔法は汚らわしい魔法だと思われている。
レティオールやシャルルのように、闇属性魔法を受け入れるアルカントラ法国出身者は珍しい。
二人の場合は劣悪な環境で冒険者をしていたから、特別だったのとリゼに助けられたという思いがあり、闇属性を受け入れることが出来た稀な例だろう。
サイゾウの「力に溺れる」という言葉にリゼは違和感を感じていた。
力に溺れるのは闇属性に限ったことではないからだ。
他の属性でも犯罪を犯すものはいる。
魔法を使わない犯罪も多い。
どうして、そう思われているのかは犯罪を犯しやすい魔法属性ということだけだ。
絶対数が少ない闇属性の者が、大きな犯罪に加担していたりするだけで、噂が広まる。
それにアルカントラ法国が光属性魔法の価値を高めるために、闇属性魔法を陥れようと暗躍している。
噂は次第に事実だと、人々の記憶に植え付けられる。
それが何年も続けば疑う者もいなくなる。
「闇糸は出せるようになりましたか?」
闇糸とは以前にサイゾウが見せてくれたアラクネの糸を操る”操糸”に似た技で、影のような黒い糸を出す忍術だ。
闇糸を初歩の忍術だと聞いた。
もし、闇糸を出すことが出来れば戦術の幅が広がるが、クナイを正確に投げることに集中していたので、闇糸のことは後回しにしていた。
サイゾウがクナイを投げる時にクナイと指先が糸でつながっているイメージをすると習得しやすいと教えてくれた。
するとサブクエストが発生する。
『闇糸の習得。期限:二十日』『報酬(魔法力:二増加)』の表示を見て、久しぶりに自分のやりたいこととクエストが一致したと思えた。
忍刀の製作中に立ち会うというクエストのことを数日経った今でも思い出す。
酒を口にしなくても本当にクエスト達成できたのか? と考えていたからだ。
三日間昼夜関係なく作業を見るだけということに意味はあったのか?
意味はなく自分を意味を見い出さなければならなかったのだろうか?
いいや、もしかしたら達成できないクエストを自分に与えているのではないかと考え始める……。
自分のスキルであるクエストに一喜一憂する自分はいることに気付く。
所詮、スキルに踊らされている自分は滑稽だと。
――――――――――――――――――――
■リゼの能力値
『体力:四十一』
『魔力:三十』
『力:二十五』
『防御:十七』
『魔法力:二十一』
『魔力耐性:十』
『敏捷:百四』
『回避:五十三』
『魅力:二十一』
『運:五十五』
『万能能力値:零』
■メインクエスト
・ドヴォルク国王を満足させる。期限:七日
・報酬:万能能力値(三増加)
■サブクエスト
・瀕死の重傷を負う。期限:三年
・報酬:全ての能力値(一増加)
・闇糸の習得。期限:二十日
・報酬:魔法力(二増加)
■シークレットクエスト
・ヴェルべ村で村民誰かの願いを一つ叶える。期限:五年
・報酬:万能能力値(五増加)
リゼは寝ているカリスに声を掛けて、コジロウの所へと向かうことを告げる。
聞いているか分からないが、カリスから返事は帰って来たので、コジロウの屋敷へと向かう。
ハンゾウやサイゾウにも礼を言いたいと思っていたが、コジロウから取り次いでもらえたらと考えていた。
「明日、帰るそうですね」
歩いている途中でサイゾウが背後から声をかける。
完全に気配を消しているようで、心臓が止まりそうになる。
慣れないと感じながらも、いずれは自分も……と言う思いでサイゾウを見て「はい」と返事をして礼の言葉へと繋げる。
「いろいろと有難う御座います」
「いいえ、ハンゾウ様の命令もありますが、忍として仲間を育てるのも任務です」
突き放すような口調だったが、普段からこの口調なのだろう。
「鍛錬は怠っていないようですね」
リゼはとっさに左手を隠す。
やましいことではないが、なぜか恥ずかしい気持ちになった。
「まだ上手く投げられませんが……」
「そうですか。まぁ、そんな簡単に投げられるようなものではないですから」
表情は見えないので、サイゾウがどのような思いで言ったのかは分からない。
自分が忍術を軽んじた発言をしたのではないかと、リゼは不安な気持ちになる。
サイゾウなりに気を使ったつもりだったが、その思いはリゼに伝わっていなかった。
睡眠時間を削って、夜に投擲の練習をしていることをサイゾウは知っていた。
痛みを忘れる集中力には目を見張るものがあった。
しかし、それは目の前のこと以外に注意を向けていないということだ。
長所であり短所でもある。
自分で気づかなければ成長しないことを知っているサイゾウは、そのことをリゼに伝えるつもりはなかった。
会話が続かずに気まずいまま歩き続ける。
「決して力に溺れないで下さい」
「力に溺れる?」
「はい。生まれた時から闇と一緒に育った忍と違い、転職した忍は闇に……力に溺れて破滅しやすいと聞いています」
ヤマト大国に伝わる話らしく、昔は各国に素性を隠して忍が生活をしていた。
情報収集して、ヤマト大国への脅威を未然に防ぐことが目的だった。
当時、忍という職業はあまり知られていなかった。
誰もが実績のある職業を選択していたというのもあったが、現在同様に忍への転職自体が少なかった。
他に選択肢がない冒険者は上位職ということもあり渋々転職していた。
しかし、その冒険者たちが問題だった。
転職して暫くすると、犯罪行為に手を染めるようになる。
闇属性の魔法は犯罪に都合の良かったのか、次第に欲望のままに行動を始めた。
大きな犯罪に関係していることが分かると、ヤマト大国の忍たちは粛清をして、忍の悪評が広まる前に拉致して殺害する。
忍が持つ闇の力に溺れ自身を見失うということだと教えてくれた。
各国にいた忍たちもヤマト大国が襲撃を受けるまで秘密裏に任務を続いていた。
だが、サンダユウの裏切りにより全員が殺された。
忍頭だったサンダユウを疑うことなく、無抵抗のまま殺されたのだろうと仲間の無念を話すサイゾウ。
それは背中越しでも十分に伝わってくる。
「対極に位置する光という属性があると聞いています。その光を使う者は、神の使いと聞いたことがあり、とても重宝されるそうですね」
「たしかにそうですね……」
光属性には治癒魔法も含まれる。
アルカントラ法国では光属性魔法は女神ユキノから授かった神聖な魔法だと思われているくらいだ。
そのため、アルカントラ法国で闇属性魔法は汚らわしい魔法だと思われている。
レティオールやシャルルのように、闇属性魔法を受け入れるアルカントラ法国出身者は珍しい。
二人の場合は劣悪な環境で冒険者をしていたから、特別だったのとリゼに助けられたという思いがあり、闇属性を受け入れることが出来た稀な例だろう。
サイゾウの「力に溺れる」という言葉にリゼは違和感を感じていた。
力に溺れるのは闇属性に限ったことではないからだ。
他の属性でも犯罪を犯すものはいる。
魔法を使わない犯罪も多い。
どうして、そう思われているのかは犯罪を犯しやすい魔法属性ということだけだ。
絶対数が少ない闇属性の者が、大きな犯罪に加担していたりするだけで、噂が広まる。
それにアルカントラ法国が光属性魔法の価値を高めるために、闇属性魔法を陥れようと暗躍している。
噂は次第に事実だと、人々の記憶に植え付けられる。
それが何年も続けば疑う者もいなくなる。
「闇糸は出せるようになりましたか?」
闇糸とは以前にサイゾウが見せてくれたアラクネの糸を操る”操糸”に似た技で、影のような黒い糸を出す忍術だ。
闇糸を初歩の忍術だと聞いた。
もし、闇糸を出すことが出来れば戦術の幅が広がるが、クナイを正確に投げることに集中していたので、闇糸のことは後回しにしていた。
サイゾウがクナイを投げる時にクナイと指先が糸でつながっているイメージをすると習得しやすいと教えてくれた。
するとサブクエストが発生する。
『闇糸の習得。期限:二十日』『報酬(魔法力:二増加)』の表示を見て、久しぶりに自分のやりたいこととクエストが一致したと思えた。
忍刀の製作中に立ち会うというクエストのことを数日経った今でも思い出す。
酒を口にしなくても本当にクエスト達成できたのか? と考えていたからだ。
三日間昼夜関係なく作業を見るだけということに意味はあったのか?
意味はなく自分を意味を見い出さなければならなかったのだろうか?
いいや、もしかしたら達成できないクエストを自分に与えているのではないかと考え始める……。
自分のスキルであるクエストに一喜一憂する自分はいることに気付く。
所詮、スキルに踊らされている自分は滑稽だと。
――――――――――――――――――――
■リゼの能力値
『体力:四十一』
『魔力:三十』
『力:二十五』
『防御:十七』
『魔法力:二十一』
『魔力耐性:十』
『敏捷:百四』
『回避:五十三』
『魅力:二十一』
『運:五十五』
『万能能力値:零』
■メインクエスト
・ドヴォルク国王を満足させる。期限:七日
・報酬:万能能力値(三増加)
■サブクエスト
・瀕死の重傷を負う。期限:三年
・報酬:全ての能力値(一増加)
・闇糸の習得。期限:二十日
・報酬:魔法力(二増加)
■シークレットクエスト
・ヴェルべ村で村民誰かの願いを一つ叶える。期限:五年
・報酬:万能能力値(五増加)
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