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第281話
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焚火の音に時折、動物の遠吠えが重なる。
リゼはサイミョウと二人で見張りをしていた。
「宵姫って、リゼ殿のことではないのかな?」
「……どうしてですか?」
「ん~、勘ですかね……ってのは嘘で、宵姫を知らないと言った時の違和感ですね。リゼ殿を見ていたレティオール殿とシャルル殿から、」
鋭い指摘にリゼは回答を考える。
否定することも出来るが……。
「はい。私が宵姫です」
嘘をつかずに答えることを選択すると、自分の推測が当たったのが嬉しかったのか笑う。
「他言はしないよ」
リゼにしか聞こえないような小さな声だった。
アヤシャたちは自分たちのことを“殿”と呼ぶ。
普通の冒険者であれば呼び捨てが基本だ。
近しい関係でなかった場合は“さん”などをつけることが多い。
ヤマト大国の話し方にも似ているが、なにか相手に対して敬意を払うような印象が強い。
以前に父親たちのような貴族などの話しぶりに近い感じがした
それから会話はなく、交代の時間が近付いていたのかアヤシャが起きた。
リゼとサイミョウを見て挨拶をしてから、レティオールを起こす。
寝ぼけ眼のレティオールだったが、自分の役割を瞬時に思い出し、表情を引き締めた。
その様子が可笑しかったのか、アヤシャとサイミョウは笑う。
反対にリゼの表情は強張っていた。
見たことのないクエスト『エマージェンシークエスト』という表示されていたからだ。
クエスト内容は『野盗の壊滅』『報酬(体力値:二増加)』
そして、消えない目の前のカウントダウン。
二時間以内に達成しろということなのだろう。
「サイミョウ……リゾラック殿は、何処に行ったんだ?」
アヤシャが叫ぶ。
その言葉でリゼたちは、リゾラックが居なくなっていることに気付く。
リゼもサイミョウもリゾラックが居なくなったことに気付かなかった。
見張りをしていたので、物音には敏感になっていたし二人が見逃すことなど有り得ない。
前の見張りだったマトラとシャルルの二人が見逃すことも絶対に無いはずだ。
起きていた四人が同じことを考えていた。
(誰にも気づかれないようにさらわれた⁈)
一気に緊張感が高まる。
その気配が伝わったのか、マトラが飛び起きた。
「何かあったのか?」
神妙な面持ちの四人を見て、すぐに察する。
リゾラックが居なくなっていることを、サイミョウが説明した。
「それはおかしいな……私たちが交代する時までは間違いなく、そこで寝ていたのを確認した」
サイミョウが何かを言おうとする前に、リゼとマトラが気配に気付く。
それはリゾラックでは無いことだけは確かだった。
何故なら、気配は複数感じていたからだ。
それが野盗の集団だと、リゼは確信する。
アヤシャとサイミョウも、一瞬遅れて気配に気付く。
レティオールはリゼたちの雰囲気から、ただ事では無いと思いシャルルとララァを起こす。
自然と非戦闘員のララァを守るような陣形になっていた。
「おいおい、どういうことだ? なんで全員起きているんだ? 夜更かしして楽しいことでもしていたのか?」
先頭を歩く男……風貌や言動からして、この男が野盗のリーダーなのだろう。
男の言葉を聞いた後ろにいる二十人近い仲間が一斉に笑いだす。
一目で野盗の集団だと分かった。
「リゾラック殿は無事か? それより、どうやってさらった」
マトラの問いに野盗たちは顔を見合わせる。
「さらった? 今、さらったといったのか?」
野盗たちは先程以上の声で大笑いする。
「面白れぇことを言うな……俺たちはお前をさらったのか?」
野盗のリーダーが視線を送ると、集団をかき分けるようにリゾラックが姿を現す。
「お前が自分から来たのに、変なことを言う奴等だよな」
「全くですよ。その剣士たちは厄介だったからね。簡単に抜け出させてくれなかったので、貴重なサイレントのスクロールを使うしか無かったのは誤算だったですよ」
リゾラックが野盗の仲間だったことに、リゼたちは衝撃だった。
そして、見張りに気付かれずに姿を消した理由も判明する。
サイレントは一定時間の間、物音も含めて存在自体を消す魔法だ。
「……ラバンとバビロニア間を移動する者たちが消息を絶っている噂は本当だったか」
「ふっ! 俺たちのことが噂になっているのか? と言っても、俺たちはバビロニアからの奴等しか狙わないけどな」
マトラの言葉を鼻で笑っていた。
「まぁ、お前たちは死ぬんだから、噂の真相は分からず仕舞いってことだな」
「リーダー。あの後ろにいる女たちは殺さずに俺たちに回してくださいよ」
「あぁ、構わないぜ。だが、そこの女は駄目だ。必ず生け捕りにしろ」
そこの女とはリゼのことだった。
「銀髪ってことは、もしかして……」
「あぁ、高く売れる可能性があるからな。銀髪であれば、例の村出身かも知れないしな。非合法になったとはいえ、人身売買はいい商売だ。まぁ、売れればの話だけどな」
不快な笑みでリゼを見る。
人身売買という言葉が、耳に嫌な感じで纏わりつく。
「お喋りの時間も終わりだ」
この言葉で野盗たちは戦闘態勢に入る。
それはリゼたちも同じだったが、捕まればシャルルが辱めること、レティオールを殺すという発言に、今まで感じたことのない苛立ちを覚える。
視線がリゼたちに集まっていると、上空に大きな光の玉が打ち上げられると、爆音とともに光が広がった。
アヤシャが使用したスクロールだった。
「お前、何をした‼」
明らかに外部に何かを伝える信号だと野盗のリーダーは時間がないと感づく。
「女は生け捕り、男は皆殺しだ。行け、お前ら!」
リーダーの男が叫ぶと、一斉に向かってきた。
「アヤシャ!」
「中域魔法を放ちます。少し時間を下さい」
「分かった!」
アヤシャの魔法攻撃で、数を減らすのだとリゼは理解する。
「私が先陣を切ります」
「頼めるか?」
「はい」
レティオールは冒険者でないララァ、それにシャルルとサイミョウ。
魔法詠唱をしているアヤシャを守る必要がある。
一人での負担は大きいが、全員が守備に回るのは得策ではない。
誰かが、野党に攻撃をしてかく乱する必要がある……それはマトラでなく自分の役割だと直感していた。
リゼは返事と同時に疾風のように走り出して、野盗の陣形を崩す。
「なんだ、こいつは!」
素早く動くリゼに反応出来ずに、味方同士で攻撃してしまうのか躊躇して手が止まっていた。
「何をしている! 俺はあの女たちを一刻も早く犯したいんだよ」
野盗の一人が叫んだ言葉を聞いた瞬間、リゼの心の中で何か壊れた。
頭の中でもう一人の自分が「殺せ!」と囁く。
この言葉に従うように、今まで殺人を躊躇っていたのが嘘のように人を殺すことへの躊躇いが無くなっていた。
ハンゾウが言っていた「転職した忍は闇に……力に溺れて破滅しやすい」の影響が出ていたことに、リゼは気付いていなかった――。
シャルルを慮辱した野盗の首元を斬る。
完全に命を絶つ攻撃だったが、リゼは斬り終えた後に無意識に人を殺したことに気付く。
目の前に『サブクエスト達成』『報酬:万能能力値(十増加)』が表示されたからだ。
以前のように手が震えることは無かった。
ここで日和れば仲間が危険に晒されるからこそ、気丈に振る舞う。
一人、また一人と心を閉ざすように野盗を殺していく。
完全にリゼが野盗を翻弄していた。
――――――――――――――――――――
■リゼの能力値
『体力:四十四』
『魔力:三十三』
『力:二十八』
『防御:二十』
『魔法力:二十六』
『魔力耐性:十三』
『敏捷:百八』
『回避:五十六』
『魅力:二十四』
『運:五十八』
『万能能力値:二十四』(十増加)
■メインクエスト
・七人でラパンに辿り着くこと。期限:ラバン到着まで
・報酬:魅力(一増加)、力(二増加)
■サブクエスト
■シークレットクエスト
・ヴェルべ村で村民誰かの願いを一つ叶える。期限:五年
・報酬:万能能力値(五増加)
■エマージェンシークエスト
・野盗の壊滅。期限:二時間
・報酬:体力値(二増加)
リゼはサイミョウと二人で見張りをしていた。
「宵姫って、リゼ殿のことではないのかな?」
「……どうしてですか?」
「ん~、勘ですかね……ってのは嘘で、宵姫を知らないと言った時の違和感ですね。リゼ殿を見ていたレティオール殿とシャルル殿から、」
鋭い指摘にリゼは回答を考える。
否定することも出来るが……。
「はい。私が宵姫です」
嘘をつかずに答えることを選択すると、自分の推測が当たったのが嬉しかったのか笑う。
「他言はしないよ」
リゼにしか聞こえないような小さな声だった。
アヤシャたちは自分たちのことを“殿”と呼ぶ。
普通の冒険者であれば呼び捨てが基本だ。
近しい関係でなかった場合は“さん”などをつけることが多い。
ヤマト大国の話し方にも似ているが、なにか相手に対して敬意を払うような印象が強い。
以前に父親たちのような貴族などの話しぶりに近い感じがした
それから会話はなく、交代の時間が近付いていたのかアヤシャが起きた。
リゼとサイミョウを見て挨拶をしてから、レティオールを起こす。
寝ぼけ眼のレティオールだったが、自分の役割を瞬時に思い出し、表情を引き締めた。
その様子が可笑しかったのか、アヤシャとサイミョウは笑う。
反対にリゼの表情は強張っていた。
見たことのないクエスト『エマージェンシークエスト』という表示されていたからだ。
クエスト内容は『野盗の壊滅』『報酬(体力値:二増加)』
そして、消えない目の前のカウントダウン。
二時間以内に達成しろということなのだろう。
「サイミョウ……リゾラック殿は、何処に行ったんだ?」
アヤシャが叫ぶ。
その言葉でリゼたちは、リゾラックが居なくなっていることに気付く。
リゼもサイミョウもリゾラックが居なくなったことに気付かなかった。
見張りをしていたので、物音には敏感になっていたし二人が見逃すことなど有り得ない。
前の見張りだったマトラとシャルルの二人が見逃すことも絶対に無いはずだ。
起きていた四人が同じことを考えていた。
(誰にも気づかれないようにさらわれた⁈)
一気に緊張感が高まる。
その気配が伝わったのか、マトラが飛び起きた。
「何かあったのか?」
神妙な面持ちの四人を見て、すぐに察する。
リゾラックが居なくなっていることを、サイミョウが説明した。
「それはおかしいな……私たちが交代する時までは間違いなく、そこで寝ていたのを確認した」
サイミョウが何かを言おうとする前に、リゼとマトラが気配に気付く。
それはリゾラックでは無いことだけは確かだった。
何故なら、気配は複数感じていたからだ。
それが野盗の集団だと、リゼは確信する。
アヤシャとサイミョウも、一瞬遅れて気配に気付く。
レティオールはリゼたちの雰囲気から、ただ事では無いと思いシャルルとララァを起こす。
自然と非戦闘員のララァを守るような陣形になっていた。
「おいおい、どういうことだ? なんで全員起きているんだ? 夜更かしして楽しいことでもしていたのか?」
先頭を歩く男……風貌や言動からして、この男が野盗のリーダーなのだろう。
男の言葉を聞いた後ろにいる二十人近い仲間が一斉に笑いだす。
一目で野盗の集団だと分かった。
「リゾラック殿は無事か? それより、どうやってさらった」
マトラの問いに野盗たちは顔を見合わせる。
「さらった? 今、さらったといったのか?」
野盗たちは先程以上の声で大笑いする。
「面白れぇことを言うな……俺たちはお前をさらったのか?」
野盗のリーダーが視線を送ると、集団をかき分けるようにリゾラックが姿を現す。
「お前が自分から来たのに、変なことを言う奴等だよな」
「全くですよ。その剣士たちは厄介だったからね。簡単に抜け出させてくれなかったので、貴重なサイレントのスクロールを使うしか無かったのは誤算だったですよ」
リゾラックが野盗の仲間だったことに、リゼたちは衝撃だった。
そして、見張りに気付かれずに姿を消した理由も判明する。
サイレントは一定時間の間、物音も含めて存在自体を消す魔法だ。
「……ラバンとバビロニア間を移動する者たちが消息を絶っている噂は本当だったか」
「ふっ! 俺たちのことが噂になっているのか? と言っても、俺たちはバビロニアからの奴等しか狙わないけどな」
マトラの言葉を鼻で笑っていた。
「まぁ、お前たちは死ぬんだから、噂の真相は分からず仕舞いってことだな」
「リーダー。あの後ろにいる女たちは殺さずに俺たちに回してくださいよ」
「あぁ、構わないぜ。だが、そこの女は駄目だ。必ず生け捕りにしろ」
そこの女とはリゼのことだった。
「銀髪ってことは、もしかして……」
「あぁ、高く売れる可能性があるからな。銀髪であれば、例の村出身かも知れないしな。非合法になったとはいえ、人身売買はいい商売だ。まぁ、売れればの話だけどな」
不快な笑みでリゼを見る。
人身売買という言葉が、耳に嫌な感じで纏わりつく。
「お喋りの時間も終わりだ」
この言葉で野盗たちは戦闘態勢に入る。
それはリゼたちも同じだったが、捕まればシャルルが辱めること、レティオールを殺すという発言に、今まで感じたことのない苛立ちを覚える。
視線がリゼたちに集まっていると、上空に大きな光の玉が打ち上げられると、爆音とともに光が広がった。
アヤシャが使用したスクロールだった。
「お前、何をした‼」
明らかに外部に何かを伝える信号だと野盗のリーダーは時間がないと感づく。
「女は生け捕り、男は皆殺しだ。行け、お前ら!」
リーダーの男が叫ぶと、一斉に向かってきた。
「アヤシャ!」
「中域魔法を放ちます。少し時間を下さい」
「分かった!」
アヤシャの魔法攻撃で、数を減らすのだとリゼは理解する。
「私が先陣を切ります」
「頼めるか?」
「はい」
レティオールは冒険者でないララァ、それにシャルルとサイミョウ。
魔法詠唱をしているアヤシャを守る必要がある。
一人での負担は大きいが、全員が守備に回るのは得策ではない。
誰かが、野党に攻撃をしてかく乱する必要がある……それはマトラでなく自分の役割だと直感していた。
リゼは返事と同時に疾風のように走り出して、野盗の陣形を崩す。
「なんだ、こいつは!」
素早く動くリゼに反応出来ずに、味方同士で攻撃してしまうのか躊躇して手が止まっていた。
「何をしている! 俺はあの女たちを一刻も早く犯したいんだよ」
野盗の一人が叫んだ言葉を聞いた瞬間、リゼの心の中で何か壊れた。
頭の中でもう一人の自分が「殺せ!」と囁く。
この言葉に従うように、今まで殺人を躊躇っていたのが嘘のように人を殺すことへの躊躇いが無くなっていた。
ハンゾウが言っていた「転職した忍は闇に……力に溺れて破滅しやすい」の影響が出ていたことに、リゼは気付いていなかった――。
シャルルを慮辱した野盗の首元を斬る。
完全に命を絶つ攻撃だったが、リゼは斬り終えた後に無意識に人を殺したことに気付く。
目の前に『サブクエスト達成』『報酬:万能能力値(十増加)』が表示されたからだ。
以前のように手が震えることは無かった。
ここで日和れば仲間が危険に晒されるからこそ、気丈に振る舞う。
一人、また一人と心を閉ざすように野盗を殺していく。
完全にリゼが野盗を翻弄していた。
――――――――――――――――――――
■リゼの能力値
『体力:四十四』
『魔力:三十三』
『力:二十八』
『防御:二十』
『魔法力:二十六』
『魔力耐性:十三』
『敏捷:百八』
『回避:五十六』
『魅力:二十四』
『運:五十八』
『万能能力値:二十四』(十増加)
■メインクエスト
・七人でラパンに辿り着くこと。期限:ラバン到着まで
・報酬:魅力(一増加)、力(二増加)
■サブクエスト
■シークレットクエスト
・ヴェルべ村で村民誰かの願いを一つ叶える。期限:五年
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マユラは喜び勇んで家を出た。今日からはもう誰かのために働かなくていい。
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