私のスキルが、クエストってどういうこと?

地蔵

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第293話

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「次は俺だな」

 チクマールが観覧席で立ち上がると、そのまま柵の中に向かって跳躍をする。
 普通では考えられない距離を、さも当たり前のように跳躍したチクマールに目を奪われた。

「おーい、始めるぞ」

 バショウの左腕に興味が集まり、自分の戦いに見向きもされていないので、不貞腐れるように叫ぶ。
 聞こえていないのか騒ぐ団員たちを横目に、ため息をつく。

「団長、始めてくれ」
「そうだな……では、リゼ殿もよいかな?」
「はい」
「うむ……では、始め!」

 リゼが様子見をしていると注目されない悲しさもあるのか、またもため息をつく。

「まぁ、見てな」

 自分の芸を披露するかのように、両手を広げるとチクマールは上空へと上っていく。
 まるで羽根でも生えたかのようだった。
 リゼの攻撃が届かない距離になると、どこに隠し持っていたか分からないが、両手の指の間からナイフが現れる。

「上手く避けてくれよ」

 両手を羽根のように羽ばたかせると、十本のナイフがリゼを襲う。
 直線的な攻撃なので、リゼが冷静に躱すと地面に突き刺さる。
 チクマールは続けて、十本のナイフでリゼを攻撃するが、リゼに見切られてしまい同じようにナイフが地面に突き刺さるだけだった。
 チクマールが曲芸団で披露する演目は竹馬だったことを思い出す。
 バランス能力に優れていることは分かるが……。

(まずは、どうして浮いているかを考えなくっちゃ)

 とりあえずは、攻撃を当てないと先に進まない。
 チクマールも分かっているのか、リゼに攻撃を指せないようにナイフで何度も攻撃する。
 単純な攻撃だと思いながら、刺さっているナイフの上を飛び越してナイフを避けようとした瞬間、足が何かに引っ掛かり体勢を崩す。
 体を回転させた際に、腕に痛みが走った。
 ナイフには触れていないのに、切り傷が出来ていた。

(どうして……)

 リゼは予期せぬ状況に混乱するが、すぐに頭を切り替えて足を取られたナイフを見る。

(そういうこと‼)

 リゼは立ち上がり、軽く体を叩いて土埃を落とす。

「アラクネの糸を使った操糸ですね」
「あれ? もうバレた……って、操糸を知っているのか⁈」

 チクマールに向かって叫んだ言葉に団員たちも、リゼに注目する。

「はい。サイゾウさんが一度だけ見せてくれました」
「……なるほど、サイゾウさんか。まぁ、分かったとしても上空にいる俺を攻撃するには投擲しかないよな。当然、俺には当たらないけど」

 リゼは地面に刺さったナイフとチクマールを結ぶ場所に移動して、ナイフの上に飛ぶ。
 見えないアラクネの糸を足場にして走り、チクマールとの距離を詰める。

「残念」

 突然、足場が無くなりリゼは地面に叩きつけられる。
 チクマールが張っていた糸を緩めたのだ。
 息つく間もなく、地面に刺さったナイフを操り、リゼを攻撃する。
 回転しながらナイフを回避するリゼ。
 だが、地面に刺さっているナイフを全て自由に操るチクマールに近付くことが出来ず、防戦一方だった。
 リゼは近くの樽に隠れる。
 だが、あらゆる角度から攻撃をすることが可能なナイフに死角はない。
 明暗の境目でもある樽近くの手押し台車へ素早く移動する影を見逃すチクマールではない。
 リゼに傷を負わせないように手加減しているが、素早いリゼを追うためにナイフの操作に集中していた。
 背後に物音を感じて振り向くがリゼの姿はない。
 再び、手押し台車の方へと視線を移す。

「おい、嘘だろ‼」

 目の前に突然、リゼが現れた。
 チクマールの反応が遅れる。

(今だ!)

 リゼは握っていたクナイをチクマールに投げる。
 だが、チクマールが上手く糸を使いクナイを弾き飛ばした。
 技術ではリゼよりもチクマールの糸捌きが上回っていた。
 リゼは落下しながら、二本の柱のうち一本に天地を繋ぐような縦の影を発見する。
 もう片方の柱の影だ。
 着地すると同時に柱に向かう。
 柱に取り付いている梯子を使用すると考えたチクマールは阻止しようと、ナイフを操る。
 裏に隠れている梯子に向かわないリゼは、垂直に出来ている影を利用して、影走りで柱を登り始めた。

「おいおい、冗談だろう‼」

 予想の斜め上をいくリゼの行動に、チクマールは焦りの色を見せる。
 観客たちはチクマールとは反対に大盛り上がりだった。
 リゼはクナイをチクマールに投げる動作をすると、チクマールも反応する。

「はい、時間です」

 バーナムが二人に終了を告げる。
 リゼとチクマールは、バーナムの声を無視することなく、戦闘態勢を解く。
 自然落下するリゼは、空中にいるチクマールを待つ。
 地上に降りてきたチクマールに団員たちが揶揄う。

「目の前に突然現れた種明かしを教えてくれるか?」
「はい、構いません」

 リゼは手押し台車へ移動する時、影分身を使い、自分は隠形かくしんで姿を消したと同時に、樽の裏で用意したクナイに闇糸あんしを結び、チクマール後ろの柱に飛ばした。
 その闇糸あんしを使い、一気にチクマールとの距離を詰めたのだ。
 隠形かくしんの効果がある間は、闇糸あんし隠形かくしんの効果があったことだ。
 影分身には隠形かくしんの影響が無かったので、新しい発見にリゼは満足する。
 この攻撃は、ボムゴーレムでの経験が役に立っていると成長を実感できた瞬間でもあった。
 それに忍かも? と疑っているチクマールが影走りや、隠形かくしんを知らないことにも驚きながら、忍が全て使える技ではないのかもと考える。

「なるほどね。俺が思っていた以上の忍ってことか」

 チクマールはリゼの肩を軽く叩いて、柵の外へと歩いて行った。
 団員たちから揶揄われるチクマールだったが、あの糸捌きは圧巻だったと尊敬の眼差しで見ていた。
 あの技術を教えてもらいたいと、後でチクマールに声を掛けようと考える。

「真打登場って感じかしら」
「やっぱり、最後は私たちよね」

 アリアーヌとティアーヌが颯爽と柵の中に現れる。
 二人はバショウとチクマールの戦いを見て興奮していた。

「全力を見せてあげるから、リゼも全力でね」
「そうそう。最初は手加減するつもりだったけど、その必要はなさそうですしね」

 二人の目つきが変わる。
 自分を一人前と認めてくれたことに感謝しながら、満足してもらえるよう力を出し惜しみしないと決める。
 リゼは心の中で、バーナム曲芸団の人たちは忍の自分を試したかったのだと思っていた。
 団員の人たちが自分たちのことを教えるということは、情報漏洩の可能性が高まり自分たちを危険に晒すことになる。
 それにリゼは「拷問攻めの末、秘密を漏らすかもしれないのに、自分は信頼に値する人間なのか?」と考えていた。
 もちろん、秘密を口外するつもりは毛頭ないが、自分が思っている以上に弱い人間かも知れないという疑惑を払拭できないでいた。


――――――――――――――――――――

■リゼの能力値
 『体力:四十六』
 『魔力:三十三』
 『力:三十』
 『防御:二十』
 『魔法力:二十六』
 『魔力耐性:十三』
 『敏捷:百八』
 『回避:五十六』
 『魅力:二十五』
 『運:五十八』
 『万能能力値:二十四』
 
■メインクエスト
 ・バーナム曲芸団員と時間内の戦闘。期限:一時間
 ・報酬:力(一増加)、魅力(二増加)

■サブクエスト


■シークレットクエスト
 ・ヴェルべ村で村民誰かの願いを一つ叶える。期限:五年
 ・報酬:万能能力値(五増加)
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