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第326話
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ヴェルべ村。
この世界で一番高いと言われているソラボンチ山の麓にあり、エルガレム王国ドクアエール領に属する村で、アルドゥルフロスト連邦パマフロストの国境付近にある。
小さなその村は、のどかな時間の流れがゆっくりと感じる。
森が近いため、魔物の出現率も高いのか、村は板で出来た防護壁で囲われていた。
防護壁の板には大きな傷がないので、魔物から襲われることは、あまりない。
村を襲わなくても困らない生態系が出来ているようだった。
村の出入り口に門番がいるわけでもなく、すんなりと入れた。
こんなに簡単でいいのかと、逆に戸惑ってしまう。
リゼ自身、こんな村でサブクエストが発生したことを、今でも不思議に感じている。
入村すると、すぐに村人に見つかる。
見慣れない人物に驚くが、リゼたちの格好から冒険者だと気付く。
村を襲ってきたのではないと一目瞭然だったので、気安く声を掛けてくれる。
「こんな、なにもない村に来客とは珍しい。って、あんたパセキ村出身かい?」
パセキ村に近いため、リゼの容姿を見たと同時に質問をしてきた。
「いいえ。私はパセキ村出身ではないです。母はパセキ村で生まれたと聞いています」
「あら、そうかい。それにあんたの目……氷水の眼だね。パセキ村にいなくて良かったよ」
他の町などでは聞くことのない情報だが、氷水の眼は不吉を呼ぶ目だということは知っている。
珍しいのか村人が次々と集まってくる。
「もしかして、近くでクエストでもあるのかい?」
「いいえ、旅の途中で寄っただけです」
「のどかで素敵な村ですね」
リゼの受け答えだけだと村人の印象が悪くなると感じたシャルルが、村のことを褒める。
「いや~、なんにもない村だよ。特産品も無いから」
「そうそう。若い奴らは、すぐに出て行ってしまうしの」
確かに年配しかいないのか、若者の姿が見当たらない。
「この村も、どんどんと人が居なくなっていくから、そのうち廃村になるだろうよ」
「子供たちも戻ってこないようだから、私らの代で終わりだ」
寂しそうに語る村人たちだった。
誰もが自分の子供は村に残ってくれると希望を持っていたのだろうが、村を出ての生活を知ると誰も戻って来ない。
それだけ外の世界には誘惑が多いのだと、目の前の老人たちも知っている。
かつての自分も、その思いを振り切って村に戻って来たのだ! と思っている老人たちも居るに違いない。
不定期に訪れる商人に日持ちのする乳製品を売り、代わりに生活必需品を購入している
「なにもない村ですが、見て行ってくださいな。それと、私たちの話し相手に付き合って下さると有難いの」
「はい、構いません」
シャルルが笑顔でお茶の誘いを承諾すると、老人たちは嬉しそうにリゼたちを案内した。
リゼは村人の願いを叶えたので、これでクエスト達成かと思った……が、目の前には何も表示されない。
もしかしたら、シャルルが返事をしたことで無効とされたのかもしれないと考える。
孫ほど年が離れたリゼたちに、村で採れたチーズなどの乳酸菌の食べ物を出して話をする。
いつもとは違う面子なので、村人たちも新鮮なのだろう。
その表情は本当に楽しそうだった。
良い感じでシャルルが相づちや、言葉を返すのは凄いと思いながらも、なにも言葉が出てこない自分が恥ずかしくなる。
老人たちはパセキ村のことを知っているのか、リゼの容姿やパセキ村のことは、もうなにも話さないでいた。
「村から少し離れた場所に、茶器などを製作している爺さんがいる。時間があれば寄ってみるのもよかろう」
「危険じゃないんですか?」
村から離れているということは魔物などに襲われる危険があるはずだ。
「なんでも、高名な魔術師さんが、工房の周囲に結界を施したようだ。ほら、そこに山肌が見えるじゃろう。あそこで土を採取して茶器などを製作しておる」
「お若い方なのですか?」
「いいや、わしらと同じような年じゃ。もっとも、常に土を掘ったり練ったりしているせいか、筋骨隆々じゃ。魔物も倒してしまうほど元気じゃないだろうか? わしらのような、しょぼくれた爺さんではないんじゃ」
「最近は、お弟子さん夫婦も一緒に生活しているようだ。やはり手に職を持っていると良いものだの」
筋骨隆々の老人……リゼたち三人の頭の中で勝手な人物像が浮かんでいた。
「もし、寄るのであれば、このチーズを届けてやってくれるかの」
「はい、分かりました」
リゼが答えると思っていた通り、『クエスト達成』が表示された。
「名はバンブーロという。村のジジババから持っていくように言われたと言えば通じるよ」
村人からチーズを受け取る。
あまりに簡単なクエストだった。このヴェルべ村に来ることの難易度が高いからなのか? だから、クエスト期間も長めに設定されていたのか? リゼは釈然としない気持ちだった。
そんな気持ちを嘲笑うかのように新しいクエストが表示される。
『魔物の討伐(最低:五十、最大数:百)。期限:三十日』『報酬:討伐数、魔物の種類に応じて変動』。
(魔物を倒せば倒すだけ能力が上がる?)
変則的なクエストに考え込む。
「どうかしたのかい?」
「あっ! いえ、何でもありません」
受け取ったチーズを直視したまま固まっていたので、心配されたようだ。
「バンブーロさんに届けますね。他に渡す物や用事などはなかったですか?」
「うん。大丈夫じゃよ。久しぶりに楽しい時間を過ごさせてもらったの」
「こちらこそ、楽しい時間でした。有難う御座います」
シャルルが村人たちに礼を言う。
誰もが本当に嬉しそうな表情をしていた。
まるで、息子や孫が戻って来た……いいや、村にいた時のことを思い出していたのだろうと、リゼは村人たちを見ていた。
社交性が高いシャルルに感心するとともに、以前にレティオールが言っていた本来のシャルルに戻っているのだとも感じる。
再度、村人たちに礼を言って、バンブーロの工房へと向かう。
――――――――――――――――――――
■リゼの能力値
『体力:四十六』
『魔力:三十三』
『力:三十一』
『防御:二十』
『魔法力:二十六』
『魔力耐性:十三』
『敏捷:百三十五』
『回避:五十六』
『魅力:三十』
『運:五十八』
『万能能力値:五』(五増加)
■メインクエスト
・魔物の討伐(最低:五十、最大数:百)。期限:三十日
・報酬:討伐数、魔物の種類に応じて変動
■サブクエスト
・ミコトの捜索。期限:一年
・報酬:慧眼の強化
■シークレットクエスト
この世界で一番高いと言われているソラボンチ山の麓にあり、エルガレム王国ドクアエール領に属する村で、アルドゥルフロスト連邦パマフロストの国境付近にある。
小さなその村は、のどかな時間の流れがゆっくりと感じる。
森が近いため、魔物の出現率も高いのか、村は板で出来た防護壁で囲われていた。
防護壁の板には大きな傷がないので、魔物から襲われることは、あまりない。
村を襲わなくても困らない生態系が出来ているようだった。
村の出入り口に門番がいるわけでもなく、すんなりと入れた。
こんなに簡単でいいのかと、逆に戸惑ってしまう。
リゼ自身、こんな村でサブクエストが発生したことを、今でも不思議に感じている。
入村すると、すぐに村人に見つかる。
見慣れない人物に驚くが、リゼたちの格好から冒険者だと気付く。
村を襲ってきたのではないと一目瞭然だったので、気安く声を掛けてくれる。
「こんな、なにもない村に来客とは珍しい。って、あんたパセキ村出身かい?」
パセキ村に近いため、リゼの容姿を見たと同時に質問をしてきた。
「いいえ。私はパセキ村出身ではないです。母はパセキ村で生まれたと聞いています」
「あら、そうかい。それにあんたの目……氷水の眼だね。パセキ村にいなくて良かったよ」
他の町などでは聞くことのない情報だが、氷水の眼は不吉を呼ぶ目だということは知っている。
珍しいのか村人が次々と集まってくる。
「もしかして、近くでクエストでもあるのかい?」
「いいえ、旅の途中で寄っただけです」
「のどかで素敵な村ですね」
リゼの受け答えだけだと村人の印象が悪くなると感じたシャルルが、村のことを褒める。
「いや~、なんにもない村だよ。特産品も無いから」
「そうそう。若い奴らは、すぐに出て行ってしまうしの」
確かに年配しかいないのか、若者の姿が見当たらない。
「この村も、どんどんと人が居なくなっていくから、そのうち廃村になるだろうよ」
「子供たちも戻ってこないようだから、私らの代で終わりだ」
寂しそうに語る村人たちだった。
誰もが自分の子供は村に残ってくれると希望を持っていたのだろうが、村を出ての生活を知ると誰も戻って来ない。
それだけ外の世界には誘惑が多いのだと、目の前の老人たちも知っている。
かつての自分も、その思いを振り切って村に戻って来たのだ! と思っている老人たちも居るに違いない。
不定期に訪れる商人に日持ちのする乳製品を売り、代わりに生活必需品を購入している
「なにもない村ですが、見て行ってくださいな。それと、私たちの話し相手に付き合って下さると有難いの」
「はい、構いません」
シャルルが笑顔でお茶の誘いを承諾すると、老人たちは嬉しそうにリゼたちを案内した。
リゼは村人の願いを叶えたので、これでクエスト達成かと思った……が、目の前には何も表示されない。
もしかしたら、シャルルが返事をしたことで無効とされたのかもしれないと考える。
孫ほど年が離れたリゼたちに、村で採れたチーズなどの乳酸菌の食べ物を出して話をする。
いつもとは違う面子なので、村人たちも新鮮なのだろう。
その表情は本当に楽しそうだった。
良い感じでシャルルが相づちや、言葉を返すのは凄いと思いながらも、なにも言葉が出てこない自分が恥ずかしくなる。
老人たちはパセキ村のことを知っているのか、リゼの容姿やパセキ村のことは、もうなにも話さないでいた。
「村から少し離れた場所に、茶器などを製作している爺さんがいる。時間があれば寄ってみるのもよかろう」
「危険じゃないんですか?」
村から離れているということは魔物などに襲われる危険があるはずだ。
「なんでも、高名な魔術師さんが、工房の周囲に結界を施したようだ。ほら、そこに山肌が見えるじゃろう。あそこで土を採取して茶器などを製作しておる」
「お若い方なのですか?」
「いいや、わしらと同じような年じゃ。もっとも、常に土を掘ったり練ったりしているせいか、筋骨隆々じゃ。魔物も倒してしまうほど元気じゃないだろうか? わしらのような、しょぼくれた爺さんではないんじゃ」
「最近は、お弟子さん夫婦も一緒に生活しているようだ。やはり手に職を持っていると良いものだの」
筋骨隆々の老人……リゼたち三人の頭の中で勝手な人物像が浮かんでいた。
「もし、寄るのであれば、このチーズを届けてやってくれるかの」
「はい、分かりました」
リゼが答えると思っていた通り、『クエスト達成』が表示された。
「名はバンブーロという。村のジジババから持っていくように言われたと言えば通じるよ」
村人からチーズを受け取る。
あまりに簡単なクエストだった。このヴェルべ村に来ることの難易度が高いからなのか? だから、クエスト期間も長めに設定されていたのか? リゼは釈然としない気持ちだった。
そんな気持ちを嘲笑うかのように新しいクエストが表示される。
『魔物の討伐(最低:五十、最大数:百)。期限:三十日』『報酬:討伐数、魔物の種類に応じて変動』。
(魔物を倒せば倒すだけ能力が上がる?)
変則的なクエストに考え込む。
「どうかしたのかい?」
「あっ! いえ、何でもありません」
受け取ったチーズを直視したまま固まっていたので、心配されたようだ。
「バンブーロさんに届けますね。他に渡す物や用事などはなかったですか?」
「うん。大丈夫じゃよ。久しぶりに楽しい時間を過ごさせてもらったの」
「こちらこそ、楽しい時間でした。有難う御座います」
シャルルが村人たちに礼を言う。
誰もが本当に嬉しそうな表情をしていた。
まるで、息子や孫が戻って来た……いいや、村にいた時のことを思い出していたのだろうと、リゼは村人たちを見ていた。
社交性が高いシャルルに感心するとともに、以前にレティオールが言っていた本来のシャルルに戻っているのだとも感じる。
再度、村人たちに礼を言って、バンブーロの工房へと向かう。
――――――――――――――――――――
■リゼの能力値
『体力:四十六』
『魔力:三十三』
『力:三十一』
『防御:二十』
『魔法力:二十六』
『魔力耐性:十三』
『敏捷:百三十五』
『回避:五十六』
『魅力:三十』
『運:五十八』
『万能能力値:五』(五増加)
■メインクエスト
・魔物の討伐(最低:五十、最大数:百)。期限:三十日
・報酬:討伐数、魔物の種類に応じて変動
■サブクエスト
・ミコトの捜索。期限:一年
・報酬:慧眼の強化
■シークレットクエスト
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