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第一章 冒険の日々に憧れる青年の生活
第32話 赤くて綺麗な辛い蜜
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「これがアメ?」
初めて見るそれは食べ物には見えなかった。
それでも、口にしたいと思わせる輝きがあった。
「あなた方はこちらの小さいものを……」
ネズミたちがハチさんからアメを受け取った。
「ありがとチュウ」「食べるチー」「チャア! かったいチャア」
「違うぞ~~アメは口んの中んでぇ舐めこんろがすんだくま~~」
(口でな、舐め転がす?)
実践してみると確かに味がした。
「そうしていると段々と小さくなっていくという食べ物で……長い時間をかけて味を楽しめるというものなんですブン」
(なるほど)
時間がかかるという割に、気づいたら元の半分もないくらい小さくなっていた。
「変わってるチュウ」「チーズの味がするチー」「言われてみればチーズチャア」
「噛んでもいいよな……」
ガリガリと音を立てる。
(いや、そういう食べものじゃないんだろ)
「いかがですブン。小さな国ではありますが、私どもの故郷の食べ物なのですが」
「いいんじゃないかチュウ」「チーチー」「やるチャアな店主」
「うん、女性使用人とか子供とかに受けが良さそう。話してみるよ」
「ありがとうございます。ありがとうございます」
「はちみつを使ってるんだな。だが、こっちの赤い方はなんなんだ?」
屋台の中を覗いてたようで容器に入った赤い物が何かを聞いていた。
「そちらは辛蜜というものにございます。普通のハチミツとは違ってすこし辛い赤い蜜が元になっています」
「辛いアメなのか……」
「はい、健康にいいという話が合って、辛蜜のアメは大人が買い求めてきますブン。ただ、本来の用途は調味料ですので、私の国では辛蜜を原料で買いに来られる方もいましたブン。なので辛蜜の瓶も、うちでは取り扱うことにしていますブン」
「これか~~良さそうだな、たしかに料理に使えそう」
辛いと言われる赤い蜜を見て、何となく呟いた。
「では、差し上げましょう」
「いいのか?」
「はい、今回はお試しということで……」
ブクマさんから辛蜜の入った容器を受け取る。
「ありがとう。厨房の皆に渡してみるよ」
「真っ赤チュウ」「どれどれチー」「チャア」
屋台の方にむき出しで置かれていた辛蜜をネズミたちが味見していた。
「「「チャアアアアアアアアアアア!!」」」
「ネズミの方は食べない方がいいかと……」
「おい、行儀が悪いからやめような」
▼ ▼ ▼
「竜ですか……?」
「そう……凄く危ない怪物だからここから離れた方がいいかもしれない」
「近くにミャーガン山っていう、安全っぽい山があるらしいか……そこに行くといい。ここに地図を描いておいたから」
ルロウの言う通りに描いた地図を屋台の見やすい場所に貼っておく。
「ご親切にどうも……」「あんりがと~~」
「うん。本当に気を付けてくれ……」
「さぁ、戻ってメシにしするぞ。ミャーガン山は目と鼻の先だからな。すぐに着く……」
「「「チュー」」」
用が済んだルロウたちがさっさと戻ってしまう。
「では、気が向いたらも宣伝のほうをよろしくお願いいたしますブン」
「ばいば~~いくま~~」
「ああ、きっとたくさん人が来るよ。このはちーーとくまーーの蜜アメ屋さん」
(たまにはいいこともあるんだな)
いいことをくれた彼らに別れを告げ、食事をしに元の場所に戻く。
▼ ▼ ▼
戻って昼食を取り、またルロウに乗って森を駆け抜ける。
時刻が夕方6時過ぎになる頃。
とうとう目的地にたどり着いた。
▼ ▼ ▼
ミャーガン山・洞窟の入り口。
そこはレオリカン王国とストンヒュー王国の中間に位置する場所にある山。
一見何の変りもない山だが、内部は広い洞窟になっていていくつかの入り口があるらしい。
噂になっている悪い竜が近寄れない山がここ。
ルロウの案内もいよいよ大詰め、山の内部に入るための入口へ向かっている。
ひたすら先頭のルロウについていていく。
すると、前方に絶壁に挟まれた洞窟が見えてくる。
ついでに見張りについてるゴリラが2匹いるのが見える。
「ん? お前たちはなんだホ?」
「オレたちは旅のもんだ。ちょいと中に入れてくれねーか?」
「お前たちどこから来たホ」「ここは悪しき竜に怯える者たちが来るところホ。関係ないものは立ち去るホ」
「オレはロード、ストンヒュー宮殿で使用人をしているんだ。怪しい者じゃない」
「ストンヒューの?」「使用人がこんなところまで何しに来たホ?」
「今ストンヒュー王国でも悪い竜が問題になってる。でもここは、悪い竜が近づけないって噂を耳にした。王国のためにその理由を知りたいんだ」
「んん~~どうするホ?」「まぁいいんじゃないホ、通しても」
「ありがとう」
許可が出たのでゴリラたちの間を縫って洞窟の中へと進んで行く。
「ただし、期待しない方がいいホ」「王は竜にやられて機嫌が悪いホ」
すれ違いざまにそう言われた。
「王?」
呟きが聞こえなかったのか、ゴリラたちの答えが返ってくる気配はなかった。
(聞き違いか……)
こっちもそれ以上追及はしなかった。
皆で篝火の洞窟を奥へ奥へと進んで行く。
▼ ▼ ▼
ミャーガン山・洞窟内。
洞窟の中は少しひんやりとして涼しく、水の流れる音が〔ぴちゃぴちゃ〕と耳をくすぐる。
洞窟をある程度進むと広い場所に出た。
(ここが悪い竜から隠れるための避難所か)
その広場は高さ20メートルの壁に囲まれ、開けた天井からは外の空気がわずかな夕陽の光が降り注ぐ。
綺麗な湧き水と心安らぐ草花が咲いている。
そこには悪い竜の暴挙から避難してきたと思われる人や様々な動物たちが大勢いた。
寝るための小屋がたくさん並び、壁にも上に上にと吊り橋や小屋がどんどん設置されたようで、その光景は一つの街を作り出していた。
いつか聞いた谷の国レオリカン王国とほとんど変わらない街だろう。
「山の中に作ったのかチュウ」「街チー」「すっごい光景チュウ」
「案内は終わった。ここからどうすんだ?」
「誰かに話を聞いてみよう」
▼ ▼ ▼
その辺を歩いてたシカに聞いてみることにした。
「あのーすみません。ちょっと聞きたいことがあるんですが……」
「何でシカ?」
「ここは竜が近寄れないって本当ですか?」
「そうシカ」
「その理由を知っていますか?」
「知らないシカ」
「そうですか……」
「ん? キミは余所の人シカ? それなら僕より王様に聞いた方がいいシカ」
中央に聳えた宮殿のようなところを角で示した。
「王様? この街の代表の方ですか?」
「違うシカ。れっきとしたレオリカン王国の現国王カリフさまシカ」
「えっ! カリフ王!?」
すでに悪い竜によって命を落としていたものだと思っていたレオリカンの王様の名前が出たことに皆で驚いた。
初めて見るそれは食べ物には見えなかった。
それでも、口にしたいと思わせる輝きがあった。
「あなた方はこちらの小さいものを……」
ネズミたちがハチさんからアメを受け取った。
「ありがとチュウ」「食べるチー」「チャア! かったいチャア」
「違うぞ~~アメは口んの中んでぇ舐めこんろがすんだくま~~」
(口でな、舐め転がす?)
実践してみると確かに味がした。
「そうしていると段々と小さくなっていくという食べ物で……長い時間をかけて味を楽しめるというものなんですブン」
(なるほど)
時間がかかるという割に、気づいたら元の半分もないくらい小さくなっていた。
「変わってるチュウ」「チーズの味がするチー」「言われてみればチーズチャア」
「噛んでもいいよな……」
ガリガリと音を立てる。
(いや、そういう食べものじゃないんだろ)
「いかがですブン。小さな国ではありますが、私どもの故郷の食べ物なのですが」
「いいんじゃないかチュウ」「チーチー」「やるチャアな店主」
「うん、女性使用人とか子供とかに受けが良さそう。話してみるよ」
「ありがとうございます。ありがとうございます」
「はちみつを使ってるんだな。だが、こっちの赤い方はなんなんだ?」
屋台の中を覗いてたようで容器に入った赤い物が何かを聞いていた。
「そちらは辛蜜というものにございます。普通のハチミツとは違ってすこし辛い赤い蜜が元になっています」
「辛いアメなのか……」
「はい、健康にいいという話が合って、辛蜜のアメは大人が買い求めてきますブン。ただ、本来の用途は調味料ですので、私の国では辛蜜を原料で買いに来られる方もいましたブン。なので辛蜜の瓶も、うちでは取り扱うことにしていますブン」
「これか~~良さそうだな、たしかに料理に使えそう」
辛いと言われる赤い蜜を見て、何となく呟いた。
「では、差し上げましょう」
「いいのか?」
「はい、今回はお試しということで……」
ブクマさんから辛蜜の入った容器を受け取る。
「ありがとう。厨房の皆に渡してみるよ」
「真っ赤チュウ」「どれどれチー」「チャア」
屋台の方にむき出しで置かれていた辛蜜をネズミたちが味見していた。
「「「チャアアアアアアアアアアア!!」」」
「ネズミの方は食べない方がいいかと……」
「おい、行儀が悪いからやめような」
▼ ▼ ▼
「竜ですか……?」
「そう……凄く危ない怪物だからここから離れた方がいいかもしれない」
「近くにミャーガン山っていう、安全っぽい山があるらしいか……そこに行くといい。ここに地図を描いておいたから」
ルロウの言う通りに描いた地図を屋台の見やすい場所に貼っておく。
「ご親切にどうも……」「あんりがと~~」
「うん。本当に気を付けてくれ……」
「さぁ、戻ってメシにしするぞ。ミャーガン山は目と鼻の先だからな。すぐに着く……」
「「「チュー」」」
用が済んだルロウたちがさっさと戻ってしまう。
「では、気が向いたらも宣伝のほうをよろしくお願いいたしますブン」
「ばいば~~いくま~~」
「ああ、きっとたくさん人が来るよ。このはちーーとくまーーの蜜アメ屋さん」
(たまにはいいこともあるんだな)
いいことをくれた彼らに別れを告げ、食事をしに元の場所に戻く。
▼ ▼ ▼
戻って昼食を取り、またルロウに乗って森を駆け抜ける。
時刻が夕方6時過ぎになる頃。
とうとう目的地にたどり着いた。
▼ ▼ ▼
ミャーガン山・洞窟の入り口。
そこはレオリカン王国とストンヒュー王国の中間に位置する場所にある山。
一見何の変りもない山だが、内部は広い洞窟になっていていくつかの入り口があるらしい。
噂になっている悪い竜が近寄れない山がここ。
ルロウの案内もいよいよ大詰め、山の内部に入るための入口へ向かっている。
ひたすら先頭のルロウについていていく。
すると、前方に絶壁に挟まれた洞窟が見えてくる。
ついでに見張りについてるゴリラが2匹いるのが見える。
「ん? お前たちはなんだホ?」
「オレたちは旅のもんだ。ちょいと中に入れてくれねーか?」
「お前たちどこから来たホ」「ここは悪しき竜に怯える者たちが来るところホ。関係ないものは立ち去るホ」
「オレはロード、ストンヒュー宮殿で使用人をしているんだ。怪しい者じゃない」
「ストンヒューの?」「使用人がこんなところまで何しに来たホ?」
「今ストンヒュー王国でも悪い竜が問題になってる。でもここは、悪い竜が近づけないって噂を耳にした。王国のためにその理由を知りたいんだ」
「んん~~どうするホ?」「まぁいいんじゃないホ、通しても」
「ありがとう」
許可が出たのでゴリラたちの間を縫って洞窟の中へと進んで行く。
「ただし、期待しない方がいいホ」「王は竜にやられて機嫌が悪いホ」
すれ違いざまにそう言われた。
「王?」
呟きが聞こえなかったのか、ゴリラたちの答えが返ってくる気配はなかった。
(聞き違いか……)
こっちもそれ以上追及はしなかった。
皆で篝火の洞窟を奥へ奥へと進んで行く。
▼ ▼ ▼
ミャーガン山・洞窟内。
洞窟の中は少しひんやりとして涼しく、水の流れる音が〔ぴちゃぴちゃ〕と耳をくすぐる。
洞窟をある程度進むと広い場所に出た。
(ここが悪い竜から隠れるための避難所か)
その広場は高さ20メートルの壁に囲まれ、開けた天井からは外の空気がわずかな夕陽の光が降り注ぐ。
綺麗な湧き水と心安らぐ草花が咲いている。
そこには悪い竜の暴挙から避難してきたと思われる人や様々な動物たちが大勢いた。
寝るための小屋がたくさん並び、壁にも上に上にと吊り橋や小屋がどんどん設置されたようで、その光景は一つの街を作り出していた。
いつか聞いた谷の国レオリカン王国とほとんど変わらない街だろう。
「山の中に作ったのかチュウ」「街チー」「すっごい光景チュウ」
「案内は終わった。ここからどうすんだ?」
「誰かに話を聞いてみよう」
▼ ▼ ▼
その辺を歩いてたシカに聞いてみることにした。
「あのーすみません。ちょっと聞きたいことがあるんですが……」
「何でシカ?」
「ここは竜が近寄れないって本当ですか?」
「そうシカ」
「その理由を知っていますか?」
「知らないシカ」
「そうですか……」
「ん? キミは余所の人シカ? それなら僕より王様に聞いた方がいいシカ」
中央に聳えた宮殿のようなところを角で示した。
「王様? この街の代表の方ですか?」
「違うシカ。れっきとしたレオリカン王国の現国王カリフさまシカ」
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