レジェンドオーブ・ロード~物語に憧れて最強への道を歩み始めるオレは、魔王達の根源たる最魔の元凶を滅ぼし全ての異世界を平和へと導きます~

丹波 新

文字の大きさ
32 / 942
第一章 冒険の日々に憧れる青年の生活

第32話 赤くて綺麗な辛い蜜

しおりを挟む
「これがアメ?」
 
 初めて見るそれは食べ物には見えなかった。
 それでも、口にしたいと思わせる輝きがあった。
 
「あなた方はこちらの小さいものを……」
 
 ネズミたちがハチさんからアメを受け取った。
 
「ありがとチュウ」「食べるチー」「チャア! かったいチャア」
 
「違うぞ~~アメは口んの中んでぇ舐めこんろがすんだくま~~」
 
(口でな、舐め転がす?)
 
 実践してみると確かに味がした。
 
「そうしていると段々と小さくなっていくという食べ物で……長い時間をかけて味を楽しめるというものなんですブン」
 
(なるほど)
 
 時間がかかるという割に、気づいたら元の半分もないくらい小さくなっていた。
 
「変わってるチュウ」「チーズの味がするチー」「言われてみればチーズチャア」
 
「噛んでもいいよな……」
 
 ガリガリと音を立てる。
 
(いや、そういう食べものじゃないんだろ)
 
「いかがですブン。小さな国ではありますが、私どもの故郷の食べ物なのですが」
 
「いいんじゃないかチュウ」「チーチー」「やるチャアな店主」
 
「うん、女性使用人とか子供とかに受けが良さそう。話してみるよ」
 
「ありがとうございます。ありがとうございます」

「はちみつを使ってるんだな。だが、こっちの赤い方はなんなんだ?」
 
 屋台の中を覗いてたようで容器に入った赤い物が何かを聞いていた。
 
「そちらは辛蜜というものにございます。普通のハチミツとは違ってすこし辛い赤い蜜が元になっています」
 
「辛いアメなのか……」
 
「はい、健康にいいという話が合って、辛蜜のアメは大人が買い求めてきますブン。ただ、本来の用途は調味料ですので、私の国では辛蜜を原料で買いに来られる方もいましたブン。なので辛蜜の瓶も、うちでは取り扱うことにしていますブン」
 
「これか~~良さそうだな、たしかに料理に使えそう」
 
 辛いと言われる赤い蜜を見て、何となく呟いた。
 
「では、差し上げましょう」
 
「いいのか?」
 
「はい、今回はお試しということで……」
 
 ブクマさんから辛蜜の入った容器を受け取る。
 
「ありがとう。厨房の皆に渡してみるよ」
 
「真っ赤チュウ」「どれどれチー」「チャア」
 
 屋台の方にむき出しで置かれていた辛蜜をネズミたちが味見していた。
 
「「「チャアアアアアアアアアアア!!」」」
 
「ネズミの方は食べない方がいいかと……」
 
「おい、行儀が悪いからやめような」
 
 
 ▼ ▼ ▼
 
 
「竜ですか……?」
 
「そう……凄く危ない怪物だからここから離れた方がいいかもしれない」
「近くにミャーガン山っていう、安全っぽい山があるらしいか……そこに行くといい。ここに地図を描いておいたから」
 
 ルロウの言う通りに描いた地図を屋台の見やすい場所に貼っておく。
 
「ご親切にどうも……」「あんりがと~~」
 
「うん。本当に気を付けてくれ……」
 
「さぁ、戻ってメシにしするぞ。ミャーガン山は目と鼻の先だからな。すぐに着く……」
 
「「「チュー」」」
 
 用が済んだルロウたちがさっさと戻ってしまう。
 
「では、気が向いたらも宣伝のほうをよろしくお願いいたしますブン」

「ばいば~~いくま~~」
 
「ああ、きっとたくさん人が来るよ。このはちーーとくまーーの蜜アメ屋さん」
 
(たまにはいいこともあるんだな)
 
 いいことをくれた彼らに別れを告げ、食事をしに元の場所に戻く。
 

 ▼ ▼ ▼

 
 戻って昼食を取り、またルロウに乗って森を駆け抜ける。
 時刻が夕方6時過ぎになる頃。
 とうとう目的地にたどり着いた。
 

 ▼ ▼ ▼

 
 ミャーガン山・洞窟の入り口。
 そこはレオリカン王国とストンヒュー王国の中間に位置する場所にある山。
 一見何の変りもない山だが、内部は広い洞窟になっていていくつかの入り口があるらしい。
 噂になっている悪い竜が近寄れない山がここ。
 ルロウの案内もいよいよ大詰め、山の内部に入るための入口へ向かっている。
 
 ひたすら先頭のルロウについていていく。
 すると、前方に絶壁に挟まれた洞窟が見えてくる。
 ついでに見張りについてるゴリラが2匹いるのが見える。
 
「ん? お前たちはなんだホ?」
 
「オレたちは旅のもんだ。ちょいと中に入れてくれねーか?」
 
「お前たちどこから来たホ」「ここは悪しき竜に怯える者たちが来るところホ。関係ないものは立ち去るホ」
 
「オレはロード、ストンヒュー宮殿で使用人をしているんだ。怪しい者じゃない」
 
「ストンヒューの?」「使用人がこんなところまで何しに来たホ?」
 
「今ストンヒュー王国でも悪い竜が問題になってる。でもここは、悪い竜が近づけないって噂を耳にした。王国のためにその理由を知りたいんだ」
 
「んん~~どうするホ?」「まぁいいんじゃないホ、通しても」
 
「ありがとう」
 
 許可が出たのでゴリラたちの間を縫って洞窟の中へと進んで行く。
 
「ただし、期待しない方がいいホ」「王は竜にやられて機嫌が悪いホ」
 
 すれ違いざまにそう言われた。
 
「王?」
 
 呟きが聞こえなかったのか、ゴリラたちの答えが返ってくる気配はなかった。
 
(聞き違いか……)
 
 こっちもそれ以上追及はしなかった。
 皆で篝火の洞窟を奥へ奥へと進んで行く。
 
 
 ▼ ▼ ▼
 
 
 ミャーガン山・洞窟内。
 洞窟の中は少しひんやりとして涼しく、水の流れる音が〔ぴちゃぴちゃ〕と耳をくすぐる。
 洞窟をある程度進むと広い場所に出た。
 
(ここが悪い竜から隠れるための避難所か)
 
 その広場は高さ20メートルの壁に囲まれ、開けた天井からは外の空気がわずかな夕陽の光が降り注ぐ。
 綺麗な湧き水と心安らぐ草花が咲いている。
 そこには悪い竜の暴挙から避難してきたと思われる人や様々な動物たちが大勢いた。
 寝るための小屋がたくさん並び、壁にも上に上にと吊り橋や小屋がどんどん設置されたようで、その光景は一つの街を作り出していた。
 いつか聞いた谷の国レオリカン王国とほとんど変わらない街だろう。
 
「山の中に作ったのかチュウ」「街チー」「すっごい光景チュウ」
 
「案内は終わった。ここからどうすんだ?」
 
「誰かに話を聞いてみよう」

 
 ▼ ▼ ▼

 
 その辺を歩いてたシカに聞いてみることにした。
 
「あのーすみません。ちょっと聞きたいことがあるんですが……」
 
「何でシカ?」
 
「ここは竜が近寄れないって本当ですか?」
 
「そうシカ」
 
「その理由を知っていますか?」
 
「知らないシカ」
 
「そうですか……」
 
「ん? キミは余所の人シカ? それなら僕より王様に聞いた方がいいシカ」
 
 中央に聳えた宮殿のようなところを角で示した。
 
「王様? この街の代表の方ですか?」
 
「違うシカ。れっきとしたレオリカン王国の現国王カリフさまシカ」
 
「えっ! カリフ王!?」
 
 すでに悪い竜によって命を落としていたものだと思っていたレオリカンの王様の名前が出たことに皆で驚いた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

社畜の異世界再出発

U65
ファンタジー
社畜、気づけば異世界の赤ちゃんでした――!? ブラック企業に心身を削られ、人生リタイアした社畜が目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界。 前世では死ぬほど働いた。今度は、笑って生きたい。 けれどこの世界、穏やかに生きるには……ちょっと強くなる必要があるらしい。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...